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毎年6月初旬に三条市で行われている三条凧(いか)合戦。そこで揚げられる凧すべてを作る担い手さんがいます。
「骨組みの組み立てから凧の絵付けまですべて一人で行います。凧合戦前の2月から5月は特に忙しくて、70枚から多くて120枚の凧の注文がきますね。」
大きなサイズの凧を1日3枚のペースで作るという須藤凧屋の須藤謙一さんは、慣れた手つきで凧に色を塗っていきます。
六角巻凧の絵付けには、布用の染料を使います。これにより和紙の繊維の穴を塞がず、通気性の良さをそのままに、軽くて揚がりやすい凧が出来上がります。
水の割合によって、濃さも変化させます
仕事道具の筆
代々受け継がれてきた見本帳と寸分違わぬ武者絵は、凧の大きさが変わってもバランスを崩すことなく須藤さんにより描かれ、思わず見入ってしまうほど。
「小さい頃に水彩画教室には通わされていましたが、結局慣れですよね。でもいまだに繊細さの表現が重要な女性の絵を描くのは緊張します。」
色も分かるよう、先代のお父様が写真として記録し直した見本帳
華を添える絵付けはもちろん大切ですが、やはりしっかり揚がることが凧の本質です。
「骨組みが凧の中で一番重要です。材料の竹を火で炙り、節の曲がりを整形、削ったりと1つ1つの作業を大切にします。そこが大変な部分なんだけど、最後にちゃんと大空を飛ぶ凧を見るとその苦労が報われた気持ちになりますね。」
須藤さんのこだわりや昔から変わらぬ製法によって出来上がった凧は、風が弱くても揚げることが出来て、回転させるなどの芸当も出来るそうです。使用しない時は、中骨(芯棒)を外して横骨を中心にくるくると巻くことでコンパクトになり、携帯性に優れます。
作業場の壁にはたくさんの凧が飾られていました
現在のように家業に専念される前は、民間企業でのお仕事と二足のわらじを履いていたという須藤さん。忙しい仕事の両立に驚きです。
「日中は外で仕事をして、夕方帰ってきてから夜までずっと凧作りをしていました。忙しい時は家族にも手伝ってもらったりしてね。先代(父)が同じような働き方をずっとしていたのを見ていたし、そこまで苦じゃなかったな。」
県伝統工芸品制度が創設されるまでは、三条凧合戦は県指定の無形民俗文化財であったのに対し、そこで用いられる六角巻凧には何の指定もありませんでした。
「新聞で県伝統工芸品の制度が作られるというのを見て、すぐに市役所に相談しました。凧合戦と同様に凧にも伝統や歴史的価値があるので、今回指定を受けられてそれがちゃんと認められたように思えて嬉しかったです。」
工芸品の価値や認知度がこれをきっかけに向上していくことを期待する須藤さん。
国内だけではなく、最近は海外でも三条六角巻凧に注目が集まっています。今年7月にはカスピ海に面する国 アゼルバイジャンの在日本大使館より『外交関係樹立30周年』に招聘され、三条凧合戦をランカランとバクーの2都市で披露しました。伺った時はちょうど、そこで揚げるための凧を製作中で、見せてもらうことが出来ました。
アゼルバイジャンで揚げた凧
これから更に、須藤さんの三条六角巻凧が世界中の空で気持ちよく揚がる様子を見ることが出来そうです。
直接注文のほか、燕三条地場産業振興センターなどでも購入可能。
須藤凧屋
新潟県三条市東裏館2-2-16
TEL 090-3223-3243
E-mail sudoikaya194028@gmail.com
HP<外部リンク> Facebook<外部リンク>
取材日:2022年6月28日