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新潟市中央区の住宅街の中に、一本一本手作りで和蝋燭を生産する担い手さんがいます。
ここ岡田蝋燭店は、本家の岡田ローソク製造所から分家した後、親子3代で和蝋燭を作り続けてきました。
岡田和也さん(右)と父・昭雄さん(左)
現在3代目の岡田和也さんは、家業に就く前は県外のホテルに勤務していたそうです。
「大学時代にバイトしていて、そのままホテル業界に就職したんです。今の仕事とは全く違いますよね。勤務していた企業の事業再編をきっかけに、家を継ごうと思って新潟へ帰ってきました。」
冷まし中のたくさんの蝋燭
家が作業場を兼ねていたこともあり、幼少期から蝋燭作りを見て育ったものの、実際に製造を行うのは新潟に戻ってきてからが初めてでした。今も現役で蝋燭作りを行う父・昭雄さんから、いろはを学んだそうです。
昭雄さんは現在78歳。作業中の動きは年齢を感じさせません
「こういう手仕事は、師匠から教えてもらったことを体や感覚で身につけていくのが普通かと思います。ですが、新潟県伝統工芸品に指定を受けたことで、これからはこの伝統を途切れさせないように、感覚だけに頼らない技能継承に力を入れていきたいと改めて思いました。」
今後は代々受け継いできた技術を可能な限り図や文章に残し、後継者の育成に役立てていきたいと話します。
年季を感じさせる道具
時には床を使いながら、束になった串を小気味よくクルクル回していく岡田さん。新潟手掛け和蝋燭の作業風景です。
紙芯を熱した蝋に繰り返しつけることで、蝋燭は徐々に太くなっていきます。
まずは溶けた蝋に芯をつけます
トントンと床で串の位置を整えます
手の中で回すことで蝋を均一に行き渡らせます
上がより多く蝋がついた蝋燭。太さの違いが分かりますか?
最後は天秤でサイズに間違いがないことを確認します
「作業中は蝋を溶かすために常にコンロをつけているので、夏場は暑くて大変です。逆に寒いと蝋が固まるのも早くなってしまうので、冬場の作業もまた大変ですね。」
蝋を溶かすコンロ
溶かす前の蝋はタブレット状になっています
蝋をつける作業は中腰になる時間も多く、腰痛に悩まされる時もあるそうです。
「体に負担がないようにやり方を変えるのもひとつかもしれませんが、変えてしまうと製品の出来上がりも変わってしまいます。出来るところまで今のやり方を続けていきたいと思っています。」
表面にムラがなく、形のバランスが良い蝋燭を作り出すために日々励む、岡田さんの熱い思いを感じることが出来ました。
手掛け和蝋燭は、キャンドルなどで使われている一般的な糸芯ではなく、紙を巻いて作った紙芯を使っています。
紙芯の束
「手作業で作る紙芯は、巻き具合が場所によって違うので、糸芯の蝋燭よりも火のまたたきを感じることができるんです。」
実用的な用途だけでなく、リラックスするためにも日常に取り入れられる蝋燭ですが、和蝋燭にはキャンドルとまた違った味わいがあるのですね。
和蝋燭を使う際、切り口に注目して見て欲しいと岡田さんは話します。
「木の年輪やバームクーヘンのように何層にも重なって出来ているものは、手作りの証です。手作りだと知って灯した蝋燭の火は、普段とまた違って見えるかもしれません。」
層が重なっているのが分かります
綺麗で元気に灯るものを作り続けたいと言う、岡田さんの気持ちがこもった新潟手掛け和蝋燭は、人々の生活を優しく照らします。
事業者の工房併設のショップやECサイト<外部リンク>で購入可能。
岡田蝋燭店
新潟県新潟市中央区上近江1-6-40
TEL 025-256-8356
HP<外部リンク> YouTube<外部リンク>
取材日:2023年1月19日