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「今回新潟県伝統工芸品に指定されて、代々受け継がれてきたこの手仕事の歴史や技術を認められたようでありがたく感じました。」
そう話すのは、長岡市寺泊山田の足立茂久商店11代目の足立照久さん。大学卒業後22歳で家業に入り、以来約25年間、昔からの製法で篩(ふるい)・裏漉し(うらごし)・蒸籠(せいろ)などの曲物(まげもの)を作ってきました。
機械を使わず足立さんの手で1つ1つ丁寧に作るため、月に30個程の少量生産となりますが、数年前にテレビで製品が紹介され全国的にも有名になったことで受注も増加し、現在も購入するのに約1年待ちの状況が続いているそうです。
曲物は料理や製菓だけでなく、舗装工事の作業など私たちの生活の幅広い場面で利用されています。丁寧で緻密な手仕事で作られた曲物は手になじみ、木の温かみを感じることができます。
寺泊山田の風景。海の向こうには佐渡が見えます
元々この地域は篩(ふるい)作りが盛んで、事業者が十数件あったものの、機械化による需要の低下や地域の人口減少・高齢化で、現在は足立茂久商店が店を構えるのみとなっています。
昔ながらの製法を大切にしている足立さんですが、生産する上で苦慮している部分もあるそうです。
使い込まれた道具たち
「昔から変わらない材料や製法を出来る限り守っていきたいと思いますが、材料に関しては今はどんどん生産者が減っていて。例えば篩(ふるい)に張る絹網を作るところは今ほとんどないんですよ。」
また、裏漉し(うらごし)に使う馬の毛網は、長岡造形大学の協力を受けて技術の継承に取り組んでいます。足立さんの奥様も織り手となれるよう現在修行中のほか、取組に賛同して力になってくれる方もいるそうです。
「1人だったら伝統を守っていくのは難しかったと思います。こうやって一緒に協力してくれる方々がいるから、今も自分は昔と変わらない製品作りができている。人との縁や繋がりは本当に貴重で、かけがえのないものですよね。」
足立さんの作業場風景
今回指定された伝統工芸品の中には、足立さんが作った曲物を作業に無くてはならない道具として使っている先がいくつもあります。足立さんが伝統を守った製品作りを続けているからこそ、他の伝統工芸品の伝統も守られているのですね。
また、伝統を守りつつも新しいジャンルの製品作りにも積極的に取り組まれ、曲物(まげもの)を利用したスツール「曲輪(まげわ)スツール」や、同じ県伝統工芸品の小国和紙とコラボした商品「ゆきほのか」、曲物の新しい形「曲輪の球体(まげわ の きゅうたい)」に花びんを合わせた「花結び」なども販売しています。
使うほど味が出る「曲輪スツール」
優しい明りの「ゆきほのか」
新しい形「曲輪の球体」
足立さんは製品を作るだけではなく修理も行っており、県外からも依頼がきます。中には文化財レベルの歴史ある道具の修理をお願いされることも。
自分の作った製品を喜んで使ってくれるお客様の姿を見るのはもちろんのこと、修理した道具を見て喜ぶ姿もまた、足立さんにとってのやりがいに繋がっています。
「以前、嫁入り道具で大切に使ってきた蒸籠(せいろ)を孫娘に使って欲しいからと修理を依頼されたことがあります。直った蒸籠を見たお客様は非常に喜んでくれて、それを見て私もとても温かい気持ちになりました。」
道具は修理して大切に使うことで、その人の想いも引き継いでいくことができます。使い捨ての製品があふれる現代で、「直したい」という気持ちに応えてくれる足立さんがいることは、お客様にとっても嬉しいことですよね。
兼業農家でもある足立さん。とっても広い田んぼでおいしいお米を育てています
各取扱い店の他、直接連絡にて購入可能。
新潟県クラフトマンクラブのイベント等でもお買い求めできます。
足立茂久商店
新潟県長岡市寺泊山田1289
TEL・FAX 0258(75)3190
匠の手を巡る旅<外部リンク>(『新潟のつかいかた』インタビューページ)
展示室もあり、希望者には展示品の解説もできます。
取材日:2022年6月14日