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着物の産地として全国的にも有名な十日町市には、それぞれ独自の信念を持って、県伝統工芸品の十日町友禅を今に伝える担い手さん達がいます。
経済産業大臣賞受賞の振袖と吉澤武彦さん
「昭和40年代初めから新たに産地で取り入れられた友禅技法はゼロからのスタートで、取引先からは『無謀な試み』と言われていました。ですが、こうして県伝統工芸品となったのはこれまで技術を培い伝統を繋いで来た先人達の努力があるからです。」
『吉澤織物』の社長 吉澤武彦さんは先人への感謝の気持ちを滲ませます。
工場の入口に掲げられた「吉澤の友禅」の文字
ここ『吉澤織物』は十日町の着物産地の中で最も規模が大きく、多くの職人が日々製品創りに励んでいます。
「社員70名の内、50名くらいは物創りの現場に携わっています。若手の職人も多く、技術を磨いていますよ。」
そう話す工場長 村山義人さんは、40年近く着物創りに従事されているエキスパートです。
型友禅の工程。1着の振袖を仕立てるのに必要な生地1反(約16メートル)を、型紙を使い染めていきます
製作のための型紙。1反に使われる型紙は約400~500枚です
柄を覆う伏せ糊(ふせのり)を洗い落とす「水洗・友禅流し」
県内の市町村の中でも豪雪地域の1つとされる十日町市では、1年間の気温や湿度等の環境の変化が大きく、どの季節においても均一な品質を持つ製品を創るにはこれまでの経験が鍵となります。
「先々のことを察知したり予測したりしながら品質に間違いがない物を創るのは大変な作業ですが、県内外で当社の着物を着たお客様の幸せそうな姿を見ると嬉しいですね。」(吉澤社長)
お客様の喜びは自社の喜びであると語る吉澤さんの言葉は、企業スローガンである『Joyful More きものでもっと喜びを』にも繋がります。
十日町友禅の振袖
「十日町友禅の着物は、人生の節目を彩るものです。お客様の一生の思い出に喜びを添えられるよう、今後も更に技術力と独創性を磨いて、良い物を創っていきたいですね。」
様々な技法を取り入れた振袖と青柳蔵人さん
「得意分野に特化するだけでなく、色々なことに挑戦する姿勢を大切にしています。」
そう話す青柳蔵人(くらんど)さんが社長を務める『青柳』では、友禅染をベースに、桶絞り(おけしぼり:染めたい部分のみ桶の外に出し、そのまま染料に浸すことで染める技法)や櫛引(くしびき:縦糸と横糸の合わせ方で布地に模様を作り出す独自の技法)など様々な技法を取り入れハイブリッドな製品を作り出しています。
刷毛を使った「引染」
作業に使われる刷毛
染めたい部分のみ桶から出して染める「桶絞り」
黒く色のついている部分が今回染まった部分です
青柳独自の技法である「櫛引」
県伝統工芸品に指定され技術や伝統が認められたことで励みになる一方、伝統を繋ぐ担い手の育成に苦労もされているそうです。
「着物作りの担い手は全体的に少ないですし、技術を育てるのも簡単ではありません。ですので、一度繋がった縁は大切にしています。」
ここでは、生活が変わり仕事を続けるのが難しくなった社員には、リモートでの在宅勤務や内職で仕事を続けてもらう選択肢を設けています。新型コロナウイルスの流行でリモートワークは今や当たり前の時代ですが、青柳さんはこの取り組みをコロナ禍の前から行ってきました。
また、多くの方々へ十日町の着物への理解を深めてもらうため、工場見学(事前予約制・有料)も随時受け入れを行っています。
「ありがたいことに国内だけでなく、海外からの参加者もありますよ。これからは、県伝統工芸品となった十日町友禅を更にお客様へPRしていきたいと思います。」
『関芳』は「金彩といえば関芳」と言われるほど金彩(きんさい:金や銀の箔を利用した装飾)の技法を得意としており、きめ細かい技術を活かした製品作りを行っています。また、世界的に有名なデザイナーとタイアップし、和装だけでなく洋装の分野にも展開しています。
金彩の技法の1つ「金線」は模様に立体感を生み出します
金彩技法をふんだんに取り入れたモダンな振袖と関口正堯さん
「商品開発は常にあれこれ悩みながら行いますが、その積み重ねの中で出来上がった商品に『綺麗』『かわいい』等、お客様の反応が返ってくることがやりがいです。」
『関芳』の営業部の関口正堯(まさたか)さんは、多くの方の興味が惹かれるような、魅力的な商品開発に力を入れています。
龍が描かれた振袖は珍しいのだとか
こちらは孔雀柄です
モダンな柄の型友禅
「昔は古典的な柄が一般的でしたが、ファッションが多様化しているのと同様に振袖等の着物でも、これまでには見られなかったような新しい柄を求める方もいます。お客様それぞれ好みのジャンルは異なるので、どの層に向けて商品作りをしていくのが良いか日々考えていますね。」
ここでは他に、より気軽に自社製品を使用してもらい認知度の向上に繋がるよう、振袖レンタルや写真撮影を行えるスタジオ『ふりそでchic』を十日町市と上越市の2か所で運営しています。
「県伝統工芸品の事業者の1つとしてプライドを持ち、技術も柄も常に最前線でいられるよう、付加価値を追求していきたいです。」
十日町には、これまでご紹介してきた担い手さんだけでなく、十日町友禅始め十日町の着物産業を支える『十日町織物工業協同組合』があります。
大学を卒業した後、現在に至るまで42年間組合に従事し、十日町の着物産業の発展にご尽力されている越村伸弥さんは、県伝統工芸品に指定されたことで『変革の歴史』を改めて感じたそうです。
棟方志功の作品と越村伸弥さん
「元々麻織物から始まった十日町の着物産業は、その後絹織物も扱うようになり、昭和には新たに友禅染を始めました。これまでのやり方にとらわれず、常に新しい取り組みを繰り返してきた産地と言えると思います。」
組合には竹久夢二直筆の作品もあります
新しい取り組みでも、継続することで伝統が作られていきます。
十日町友禅が県伝統工芸品となり、先人の努力が報われホッとすると同時に、次の『変革』を期待するという越村さん。
「着物産業は十日町の宝です。次の世代にしっかり残していかなくてはなりません。」
十日町では、事業者だけでなく組合も一丸となって、県伝統工芸品を担っています。
各担い手さんのこれからの取組が楽しみですね。
製品取扱い小売店等で購入可能。
新潟県十日町市本町1丁目下686(本社)
TEL 025-752-4131
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新潟県十日町市栄町26-6(本店)
TEL 025-757-2171
HP<外部リンク> Facebook<外部リンク> Instagram<外部リンク>
新潟県十日町市山本町5-873-1
TEL 025-752-3131
HP<外部リンク> Instagram<外部リンク>
ふりそでchic HP<外部リンク> Instagram<外部リンク>
新潟県十日町市本町6丁目71-26 クロス10 4F
TEL 025-757-9111
HP<外部リンク>
取材日:2022年7月6日