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良寛さんの生誕地である出雲崎町の海岸沿いには、昔懐かしい紙風船を国内で唯一製造する担い手さんがいます。
磯野紙風船製造所の作業場では貼り子さんと呼ばれる方が慣れた手つきで糊付けをしており、あっという間に紙風船の形が完成していきます。
県内に13人ほどの貼り子さんがいて、内職で紙風船の製造工程の一部を担っているそうです。
ふのりを使用
一枚一枚貼り付けていきます
かごに入れられた紙風船
昔はこの海岸沿いの町中で紙風船作りを行っており、昭和初期には国内のみならず、クリスマス時期のクラッカー代わりにアメリカへ大量に輸出されていました。
型抜き前の紙
ひとつひとつ丁寧にパッケージしていきます
磯野紙風船製造所 磯野成子さん
「実家は紙風船とは関係ない仕事をしていましたが、小さい頃から紙風船は身近でした。紙風船作りを仕事にするにあたって、『懐かしいもの』というこれまでのイメージだけでなく『新しさ』を取り入れたいと思ってこれまで商品開発に取り組んできました。」
そう話すのは、磯野紙風船製造所の4代目 磯野成子(しげこ)さんです。
磯野さんはこの地で生まれ育ち、嫁いで来られました。
当初、製品のデザインは2種類ほどでしたが、磯野さんの手により現在では50~60種まで展開しています。
倉庫で風に揺れる朱鷺
「紙風船は球体なのでどのようなデザインも可能ですが、お客様の手に最初に渡る時や保管時はたたんだ状態が基本なので、その状態でも例えば猫であれば猫と分かるようにしないといけないと考えています。デザインに関してはそこが大変な部分でもありますが、『どんな風にしようか』とわくわくもしますね。」
金魚
てんとう虫
たこ焼き
定番の形を季節の花模様にした物だけでなく、朱鷺・金魚・てんとう虫など可愛らしい動物型に加えて、中にはハロウィンかぼちゃやスイカ、たこ焼きなどの見ると思わず笑顔になってしまうようなデザインも。
「アイディアは寝ている時も突然ふっと浮かんでくるので、そんな時は『こうしちゃいられない!』と急いで起き上がることもありますよ。」
そう笑う磯野さんには、製品作りにおいて他にも大切にしていることがあります。
それは、捨てる部分を出来るだけ少なくするということです。
「販売している製品の台紙の多くは、そのまま紙風船を入れて送れる封筒とメッセージカードにしています。若い頃に絵本を作るのが夢だったのですが、ずっとお客様に大切にしてもらえるような、台紙代わりになる絵本と紙風船の組み合わせを考案していたことからヒントにしました。」
台紙代わりの封筒とメッセージカード
また、現在各所で行っている紙風船作りの人気のワークショップは、製品作りで必ず生まれる紙の切れ端を活用出来ないかという思いから始まったのだそうです。
磯野紙風船製造所では、SDGsの考え方が当たり前になるずっと前から、サスティナブルな取組を行ってきたのですね。
内職で働く貼り子さん達に支えられる紙風船の新たな担い手の仲間を増やすために、今後定期的に講習会やワークショップを行っていきたいと磯野さんは考えています。
「何にでも変化する紙風船、こんなに夢のあるものはありません。今も毎日楽しみながら製品作りに取り組んでいます。」
磯野さんが紙風船をぽんぽんと下から叩くと、どこか安心する紙の匂いが漂ってきました。夢膨らむ紙風船を、磯野さんは今日も考案し作り続けています。
事業者への直接連絡や、朱鷺メッセやふるさと村、道の駅などの売店で購入可能。
磯野紙風船製造所
新潟県三島郡出雲崎町羽黒町423
TEL 0258-78-2045
HP<外部リンク>
匠の手を巡る旅<外部リンク>(『新潟のつかいかた』インタビューページ)
取材日:2022年7月20日