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島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:”育む(はぐくむ)”)vlo.36
島内で頑張っている人を紹介する「島民クローズアップ・インタビュー」をお届けしています。
佐渡地域振興局の各所属や事務所が「育む(はぐくむ)」というテーマをもとにふさわしい方を訪ね、インタビューを実施します。
第36回目となる今回は、高柳一巳(たかやなぎかずみ)さんを訪問しました。高柳さんは「アフタースクール」と呼ばれる場を主催しており、ここでは小・中・高校生と、不登校・ひきこもりの状態にある子ども達にとっての「居場所」を提供しています。ここでの活動は、学校での勉強をする子がいることはもちろん、最近では、竹を使って玩具を作り、地域の小学校と交流の場を設けたり、竹の加工からお金を稼いでいく方法を考えたり(「起業」のトレーニングの一環)と、様々です。みんなでたこ焼きを作って楽しむことや、流しそうめんをしたこともありました。いわゆる机上での“勉強”だけではなく、外へ外へと広がっていくような”学び”を得られる場となることを、大切にしています。
※ アフタースクールの中には、佐渡で初めての通信制高校として誕生した「ヒューマンアカデミー高等学校」(佐渡学習センター)が併設されており、高柳さんは、そのセンター長も務めています。
高柳様ご本人
Q1 今の活動をすることになったきっかけは何ですか。
アフタースクール(外観)
実は、このような活動に至った「ターニングポイント」はないんです。強いて言えば、なかば楽しみの一環として「自分の子どもの自主(自宅)学習を手伝っていたこと」でしょうか。そこへ近所の子どもが加わるようになり、徐々に人数が増えていくようになりました。そして、そのような口コミが地域・学校へ広まり、不登校・ひきこもりの状態にある子ども達を対象に、勉強を教えていくようになったのです。こうしたことを続ける中で、子ども達にとっての「居場所」がないことに疑問・課題を感じるようになり、現在の活動に至りました。かれこれもう14年目になるでしょうか。
Q2 今のやりがいは何ですか。
子ども達が教え合っています
ここで育った子ども達の成長を見ることができたときですね。あとは、子ども同士で勉強を教えあっている姿をみると嬉しくなります。我々大人が教えるよりも、子ども同士のほうが理解し合えることもたくさんあるんです。
Q3 日ごろ、大変だなと感じることは何ですか。
活動する上で資金的に厳しいことですね。今は行政などから補助を受けていないので、どうしても収入が限られてしまいます。でも、そのことで枠にとらわれずに自由にやれるんです。それと、引きこもりなどで大変な子どもはもちろんいますが、「大変」と感じたことはありません。むしろ、そのことでやりがいが生まれますから。問題があることは当たり前なんです。そのことを悲観するよりも、前向きに楽しんで取り組むことが大事かなと思います。
Q4 今後の活動で何か考えていることはありますか。
ワンルームスクール
今年は、活動の一部(ワンルームスクール)を一般社団法人化できたら…と考えていますが、結局は「いかに学校と地域の繋がりを上手く築いていくのか」そして「いかに地域に入っていくのか」が課題であり、これらを考えながら、今後も活動していきたいと思っています。そのためには、様々なノウハウを持った地域の人材と繋がっていけるようなことも、やっていかないといけないと感じています。
※ワンルームスクールとは、アメリカの初期の学校をイメージしたもので、その名のとおり、異なる学年を1つの教室で教えるというものです。
Q5 高柳さんの楽しみは何ですか。
みんなで流しそうめん
趣味は釣りですが、最近は少し忙しく、なかなか行けずにいます。ただ、それはそれで悪い気はしていないです。やはりここに通ってくる子ども達と話していることが、とても楽しく感じられます。また、このスクールとは関係がない通学途中の小学生達と、表でジャンケンをするなんてこともありますね。その他には、一般の生活をしている人たちが幸せに生活できるヒントがあればと、心理学などに関する本を読み日々学んでいます。
Q6 テーマが「育む」ですが、活動をする中で信念にしているものを漢字1文字で表すと何ですか。
直筆です
自分の行動が曲がらないようにするために、心に思ったことを「そうなる!」と疑わなければ、その通りになる、と信じて活動しています。自分が信じるものさえしっかりしていれば、失敗を恐れずに、何でもやってみるべきだと考えています。
最後に、何かメッセージがあればどうぞ。
地元の「竹」を使って作りました
(子どもたちへ)
通信制高等学校から通信制の大学へ行き、全日制の大学へ進むことだってできます。
たとえ、中学校に通えず勉強ができなかったり、高校を中退してしまったとしても、「道は絶対にあること」、「やりなおしが利くということ」を、忘れないでほしいです。
私達も一緒になって、そういった目標達成に向け、取り組んでいきたいと思っています。
(皆さまへ)
佐渡でも「シニア起業家」と言われる人が増えればいいなと思っています。定年まで働いたということは、社会のいろいろな課題が見えているはずですから、それを活かして、ぜひ起業してほしいです。それまで組織に属して働いていた時とは違い、起業すれば制約されずに自由に働けます。ただ、そのためには定年を迎えるまでに何らかの活動をしていなければ、退職後すぐに起業することはできません。ですから、今働いている人には、ぜひ自分の退職後の姿を考えながら、仕事をしてほしいと思います。
インタビュアーから
高柳さんの話を聞いていると、本当に『楽しみながらやっている』という印象を受けました。そして、いつも何か新しい事に挑戦しているということに感心するとともに、私も日々なにかに挑戦していかなければいけないな、という気になりました。常に課題が頭にあるから挑戦できるし、ひらめきが生まれるんだなと思いました。まずは自分の中で、課題を見つけることから始めていきたいです。
佐渡地域振興局健康福祉環境部
地域保健課 高橋
企画福祉課 熊倉