ページ番号を入力
本文
今や南魚沼市を代表するブランドの一つとなった八色しいたけ。全国各地へ出荷され、贈答品に好まれる「天恵こ※「こ」の字はくさかんむりに「姑」」の最高級品は半年以上待っても手に入らないこともあります。
昭和60年に立ち上がった八色しいたけ生産組合は、原木栽培から菌床栽培へ平成7年に切り替え、八色しいたけの生産量を伸ばし、南魚沼市を代表する農産品ブランドへと押し上げられていきました。
肉厚さが生む食感と風味が特徴
その裏側にあるのは生産組合の熱意と営農力。南魚沼市内の15軒の生産者をまとめる八色しいたけ事業協同組合の代表理事 駒形永幸さんは、「しいたけ栽培って奥が深くて、のめり込んでいきましたね。」と就農当時を振り返ります。
水無川が流れ、眼前には豊穣な水稲田。八海山と越後駒ケ岳を見上げると南魚沼の広い空が自然との近さを感じさせてくれるでしょう。
薫ってくる木香は楢(ナラ)の木。菌床に使われているのは富山県から運び出した伐採半年以内の楢のウッドチップ。手に取ると、ほんのり温かい。
伐採後6ヶ月以内の新鮮な木材を使用
「この菌床で品質の8割が決まってくる。妥協はできません。富山県産のウッドチップ、栄養体には魚沼産コシヒカリの米糠、ミネラル分として牡蠣の粉末をブレンドしています。」
しいたけ栽培の肝は菌床。撹拌器に近づくとジワリと湿度と温度が上がるのが分かります。仕込みが終わると、ずらりと並ぶ培養施設へと運ばれます。
数台の攪拌機で、栄養体と混ぜられる
「菌床をつくるために、春の気温・夏の気温を体験させます。低温の環境では菌糸が広がりにくいので、冬は暖かく、夏は涼しく温度を管理することで、1年中、菌床づくりが出来ます。」
原木栽培は天然木に菌を打ち込み、1年以上寝かせてから収穫しますが、菌床栽培では温度差のある環境で培養し、促成させます。
原木栽培では、雪国の環境では管理が難しく重労働でしたが、菌床栽培へ切り替えたことで飛躍的に生産効率は上昇しました。
ずらりと並ぶ菌床
「この菌床栽培によって、短いサイクルでの生産が出来るようになり、大量生産へ結びつきました。良い菌床の次は良い発生。良い品質の八色しいたけを出すために、それぞれの農家さんに頑張っていただいています。」
ハウスの中に差し込む屋根からの太陽光は「木漏れ日」を再現。18度に保たれたハウスの中で、じっくりと菌糸が張り巡り、白い菌床が完成したら、農家へと配られます。そうした妥協のない生産環境に組合員も応えるかのように「量は力、品質は信頼」の言葉を守ります。
菌糸が全体を覆うまで温度管理がされる
品質を高めていくための妥協なき研究と試行錯誤。それに応えてくれるのがしいたけづくりの魅力なのだそうです。
八色しいたけを発生させ、育てる環境は「秋の山」を意識して環境が調えられています。こちらも湿度や炭酸ガスの濃度、照度に至るまで考えられており、日中は20度前後、夜や朝方は15度に調整されているとのこと。
「光量・温度・CO2濃度まで細かく管理します」
「南魚沼でのしいたけ栽培は、自然の力の後押しがありますね。山々に囲まれているので、寒暖差が起きやすくきのこ栽培に適した気候。なにより、水が大事で、しいたけの90~91%は水分。他の産地と比べると地下浸透した伏流水のおかげで、水道水ではなく綺麗で安全な水を気兼ねなく使えます。」
八色しいたけが、南魚沼市を代表する産業の一つになっているのは、長年受け継がれてきた農家の心を言葉にし、共有していることも大きく関係しているようです。
このキャッチフレーズからも分かるように、八色しいたけの特徴は厚みと大きさ、そして食感でしょう。その厚さからアワビに例えられますが、香りや歯ごたえは「八色しいたけ」以外に形容する言葉がないほどにアイデンティティが確立されています。
天恵こ16枚。さらに上の9枚もある。
「パン粉で揚げた八色しいたけをカツ丼にしたり、丸ごと蒸し焼きにしたステーキにすることで食べごたえのある料理になります。大きな軸から出汁をとってスープにする人もいますね。」
駒形さんが特に勧めるのは「蒸し焼き」のレシピ。傘に格子上に切れ目をいれ、ニンニクとオリーブオイルで炒めた後、料理酒を使って蒸し焼きに。旨味を閉じ込め、八色しいたけのジューシーさを存分に味わうことができます。
「八色しいたけにも種類があって、天恵こは「なばし天415号」という品種。その品種を8年かけて品種改良してきたが、まだ全体の10%にも満たない。さらにそこから最高級の大きさ・厚さを育てられる農家は一握り。ここが課題でもあるけど、まだまだ引き出せていない可能性もある。」
最高級品の天恵こは、首都圏の高級フレンチや飲食店にも人気でオイル浸けにしてじっくりと煮る「八色しいたけのコンフィ」や「高級寿司」にも使われています。
生産者が気づいていない魅力や可能性は消費者である私達が見つけていくことも出来るかもしれません。
魚沼産コシヒカリの名産地として名を馳せる南魚沼市ですが、冬の農業を支えようとする努力が新しい特産品を育てました。
令和元年度の販売額は14億円を超え、生産量は新潟県内の52%を占めます。200人以上の地域雇用を生み出した「八色しいたけ」は次のステージへ進もうとしていました。
「品質を維持・向上させ、生産量をさらに増やしていきたい。ただ、今は人手が足りなかったり、新しい販路開拓が足りていない課題があります。新規参入や世代交代で、幸いにも後継者問題は大丈夫そうですが農家だけでは大きくしていけない。」
食の安全規格である第三者認証GAP取得を目指している八色しいたけは、これからどんどんと広がっていくでしょう。その動きに、農家ではない私達が出来ることも考えていきたいですね。
地域に開けた生産拠点にしたい
「八色しいたけ事業協動組合では、実は直売もやっています。外から見たら訪ねづらいかもしれないですが、良ければ直接、採りたてを買いにきてください。」
私達が南魚沼の特産品のこと、八色しいたけのことを知ることが、その第一歩になるかもしれません。
取材日:2020年3月12日
八色しいたけ 八色しいたけの特長は、なんと言っても大型で肉厚!歯ごたえがあり独特の風味とともに、高い品質の「八色しいたけ」は市場からも高い評価をいただいております。 通年 |
ボリューム満点!美味しくてヘルシー! |
肉厚でジューシー、旨みが口いっぱいに広がる |
|
あぐりぱーく八色 住所:新潟県南魚沼市浦佐5147-1 あぐりぱーく八色ホームページ<外部リンク> |
※八色しいたけは、市内直売所やスーパーでも購入できます。
関連サイト : 「魚沼きのこ」公式HP<外部リンク>