本文
令和7年4月臨時会(直接請求に係る条例審査特別委員長報告)
令和7年4月臨時会 直接請求に係る条例審査特別委員長報告(4月18日)
委員長 尾身 孝昭
直接請求に係る条例審査特別委員会に付託されました第89号議案「直接請求に係る東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する新潟県民投票条例の制定について」の審査経過並びに結果について、御報告申し上げます。
まず、条例制定請求代表者による意見陳述を行い、次いで、本条例案に付された知事の意見について防災局長から説明を受け、次いで、住民投票制度と議会の役割などについて参考人から意見聴取を行った後、審査を行い、本条例案の制定をめぐって活発な論議が交わされたところであります。
以下、論議となった主な点について申し上げます。
1 原子力発電所の再稼働を県民投票で問うことの是非について
2 14万3,196人の署名による直接請求に対する知事の受け止めについて
3 住民投票制度に対する知事の認識について
4 県民が再稼働への賛否を判断するための情報提供について
5 知事が考える県民の多様な意見を把握する方法について
6 市町村に事務執行を求めるうえでの課題について
7 投票結果の尊重を求める基準について
8 県民投票に要する費用について
以上が、論議となった主な点であります。
次に、議案採決に先立ち、各党の党議結果並びに無所属委員の検討結果の報告を求めたところ、
自由民主党からは、再稼働の是非については、賛成又は反対の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できないこと、原子力発電の再稼働問題は、高度な専門知識を有する極めて複雑なテーマであり、電力供給の安定性やエネルギー安全保障といった国家規模の課題と直結していることから、県民投票の対象としてふさわしくないこと、県民投票に法的拘束力が付与されないといえども、その投票結果が議会における自由闊達な議論を束縛する可能性が否定できず、加えて知事の合理的な判断にも大きな影響を及ぼすおそれがあること、我が国においては、福島第一原発事故の記憶が深く刻まれており、県民投票において、SNS等による科学的根拠や専門的な知識に基づかない情報が錯綜するなど、冷静で合理的な判断ができなくなる可能性が高いこと、住民投票による決定とは、住民が責任を持つということでもあるが、住民がその責任に耐えなければならないことは不合理であり、加えて、住民投票結果で政策決定して、そのことにより、将来、事故や損失が生じた場合の責任の所在が不明確であること、過去の事例で県民投票が実施されなかったこと自体が、県民投票の実施は有効性を持たないという何よりの証左であることや、代表民主制を採る二元代表制の現行制度から考察すれば、県民投票を実施する合理性は低いことから、原案反対。
未来にいがたからは、福島原発事故以来、同じ事業者が再稼働させる意志を示し、国が本県に対して地元の理解要請を求めるという、本県にとってかつてない状況にある。このような状況において、原発の再稼働に対して県民の関心の高まりは至極当然のことである。自らはもちろん、家族や地域の生活や将来に思いを致し、自分事として考え意思表示をしたいという人の思いが今回14万3,196人の署名となって直接請求されたその意義を大変重く受け止める。また、住民投票は間接民主主義を補完するものとして意義あるものと考える。知事はこれまで柏崎刈羽原発の再稼働プロセスについては、判断する状況が整ったらリーダーとして自ら判断し結論を示した後、県民の意思を確認する、またその手法については信を問う方法が最も重いものとして言及してきた。今回の直接請求による県民投票条例案は知事が判断を示す前に行うことを求めていて、異なる点はあるものの、広く県民の意思を確認することについては共通しており、重要なポイントである。しかし、今臨時会を通じても県民の意思を確認する、信を問うとした方法について知事は明らかにしていない。今回、県民投票の直接請求が行われた大きな要因の一つは、知事が県民の意思を確認する、信を問う方法を明らかにしないことにあるといえる。知事が考えを明らかにしない以上、直接請求により県民投票の実施を求める声はもっともであり妥当であるため、原案賛成。
リベラル新潟からは、再稼働の是非は、主権者たる県民が主体的に考え、意思表示すべきである。再稼働の是非は、専門的知見が必要な複雑な問題であるため県民投票になじまないという意見もあるが、十分な周知期間と正確な情報を開示すれば、県民は正しい判断をする。県民の判断力を信じるべきである。まして、署名をした14万3,196人は、有権者の8パーセント、12人に1人に相当する。民意を無視する行為は県政を危うくする。二者択一では、多様な意見を把握できないという指摘もあるが、知事が県民の意見を集約している段階での指摘であり、知事が結論を出し、県民の意思を確認する方法は二者択一しかない。そのため、二者択一は、県民投票を否定する理由にはならない。間接民主主義の否定という意見もあるが、県民投票の結果に法的拘束力もなく、間接民主主義を補完する意義があるため、原発再稼働問題は、県民投票も行って結論を出すべきである。署名を重く受け止め、県民が主権者として権利を行使できるようにすべきであると考えるため、原案賛成。
真政にいがたからは、基本的に県民の声を大切に受け止めることは大変重要なことであるが、条例案第10条投票の方式について、二者択一の選択肢では、県民の幅広い意思について的確に把握できるのか疑問である。高度に専門性が高く、公共政策特有の相反性をはじめとする複雑性を要する事案において、賛成・反対の二者択一の選択肢では県民の多様な意思を把握できないものと考える。また、二者択一の選択による結果では民主主義は深まらず、賛成・反対による対立と分断につながることも危惧される。第2条県民による投票を実施することについては、自治体の規模が広域化し、社会の複雑性が増して、地域における利害が異なることや当事者性の濃淡がある中で、とりわけ立地地域と周辺地域の間には、柏崎刈羽原発の再稼働議論について、少なからず温度差があるものと考えられ、県下一律の条例制定の対象事案とするのは適切ではないため、原案反対。
公明党からは、まず、前提として、住民投票制度を否定するものではないが、福島第一原発事故や地震・複合災害の不安などから、県民の直接投票で声を上げたいとの請求者の心情は大変重いものと理解する。原発再稼働問題は、県民の間でも多様な考えがあり、二者択一の選択を求める県民投票では、県民世論が正しく反映されるか懸念されること、また、地域や自治体などでも様々な意見が存在し、県民の分断や立地地域と他の自治体など、県民や市町村間等の分断を招くおそれがあることから、原案反対。
無所属馬場秀幸委員からは、今回の条例案は、国から原発再稼働の同意要請を求められた地方自治体の住民が賛否を直接に表明することのできる投票制度を実現するものであり、憲法95条の住民投票にも沿うものであり、極めて重い意義があることから、原案賛成というものであります。
次いで、採決を行い、否決すべきものと決した次第であります。
以上をもって、報告といたします。
令和7年4月臨時会(委員長報告)
令和7年4月臨時会・議会情報項目一覧へ
新潟県議会インターネット中継のページへ<外部リンク>
新潟県議会のトップページへ