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令和元年6月定例会(陳情第3号)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0180895 更新日:2019年8月3日更新

第3号  平成31年3月27日受理 総務文教委員会 付託

辺野古新基地建設の即時中止と、普天間基地の沖縄県外・国外移転について、国民的議論により、民主主義及び憲法に基づき公正に解決するべきとする意見書提出に関する陳情

陳情者  「新しい提案」実行委員会 代表 安里長従 外6名

(要旨)
1.沖縄の声
 2019年2月、沖縄県による辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で、投票総数の7割以上が反対の意思を示した。憲法改正の手続きにおける国民投票の場合には投票総数の5割以上で国民の民意にもとづく承認とみなすことが憲法及び国民投票法で規定されていることを鑑みれば、今回県民が直接民主主義によって示した民意は決定的である。これまで県知事選で重ねて示されてきた民意と合わせ、政府および日本国民は、民主主義にのっとり、沖縄県民の民意に沿った解決を緊急におこなう必要がある。
 名護市辺野古において新たな基地の建設工事が強行されていることは、日本国憲法が規定する民主主義、地方自治、基本的人権、法の下の平等の各理念に著しく反している。
 普天間基地所属の海兵隊について沖縄駐留を正当化する軍事的理由や地政学的理由が根拠薄弱であることは多数の識者から指摘されており、日米元政府高官も軍事的には沖縄ではなく、他の場所でも良いと明言している。安倍首相をはじめ元防衛大臣らも本土の理解が得られないという政治的な理由で沖縄に決定したと明かしている。
 政府は、普天間基地の速やかな危険性除去を名目として辺野古への新基地建設を強行しているが、普天間基地の返還は、もとより沖縄県民の永きにわたる一致した願いである。
 日米安保条約に基づき米軍に対する基地の提供が必要であるとしても、それは本土・日本国民が全体で負担すべきでものであり、歴史的・構造的に過剰な負担が強いられ続ける沖縄になお民意を無視し新基地を建設することは明白な差別である。国家の安全保障に関わる重要事項だというのであれば、なおのこと、民主主義及び憲法にのっとった公正な手続きを踏んだ解決をはかることを求める。
2.憲法41条、憲法92条、憲法95条違反
 名護市辺野古に新基地を建設する国内法的根拠としては、内閣による閣議決定(2006年5月30日及び2010年5月28日)があるのみである。
 憲法41条は、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定め、立法権を国会に独占させていることから、「国政の重要事項」については国会が法律で決めなければならない。次に、憲法92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と定めており、地方公共団体の自治権をどのように制限するかは法律で規定されなければならない。そして憲法95条は、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することはできない。」と規定する。
 安倍晋三首相は2015年4月8日参議院予算委員会で「辺野古問題は国政の重要事項にあたる」と述べ、2016年9月16日の福岡高裁那覇支部判決は、辺野古新基地建設が「自治権の制限」を伴うことを明確に認めている。そうすると、辺野古米軍基地建設は「国政の重要事項」であり、沖縄県の自治権を制限するものであるから、今回の県民投票は憲法95条の趣旨に沿うものとして、憲法上の拘束力がある。よって、政府は日本国憲法に基づき、普天間基地の沖縄県外への移設を民主主義のプロセスで追求し、また日米安保条約および日米地位協定の規定する日米合同委員会を通じて協議すべきである。
3.SACO(沖縄に関する特別行動委員会)の基本理念違反
 普天間基地の返還はSACO(沖縄に関する特別行動委員会)において日米間で決定した。SACO設置の経緯について防衛省は公式にこう説明している。「政府は、沖縄県民の方々の御負担を可能な限り軽減し、国民全体で分かち合うべきであるとの考えの下、沖縄県の将来発展のため、在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小に向けて一層の努力を払う」。しかしながら、1996年12月のSACO最終報告では、普天間基地の代替施設と称して同じ沖縄県内に新基地を建設するものとされ、SACO設置時の基本理念に違反している。
 日米両政府が普天間基地の代替施設が必要であるというのであれば、沖縄が歴史的に背負わされてきた過重な負担を軽減するため「国民全体で分かち合うべき」なのだから、「沖縄以外の全国全ての自治体をまずは潜在的な候補地」として、国民的議論を経て県外・国外かを決定し、解決すべきことは本来当然の帰結である。
4.民主主義の二つの大原則に反する
 民主主義は、多数者支配の政治を意味せず、その決定は、単なる多数決ではなく、少数者の権利の擁護も責務とされている。そして、最も尊重すべきは固定的少数者であるとされている。
 つまり、少数者にも、流動的少数者と固定的少数者があり、前者は、競争の自由が保障されれば、やがて自由競争を通じて多数者となる可能性をもつので一時的に多数決の支配を受けることを甘受することができる。しかし固定的少数者は、多数決によれば常に敗北する運命にあり、したがって多数決によって剥奪できない自由と自治が与えられる必要がある。
 各種世論調査では日米安保条約の解消を求める世論は数%にしか過ぎない圧倒的少数派であるが、選挙など次のラウンドで多数になる機会があるという意味では流動的少数者である。一方、47都道府県の1県であり、人口も1%に過ぎない沖縄県は、米軍基地に関する政治状況において固定的少数者である。
 つまり、民主主義とは「多数決の原理」と「少数者の権利の擁護」という二つの原則からなり、これは民主主義国家の基盤を支える一対の柱なのである。いうまでもなく、多数決の原理は公共の課題に関する決断を下すための手段であり、少数者の抑圧への道ではないからである。
 なお、国政選挙において日米安保破棄等を明確に争点として掲げ、多数の信任を得ることなしに「沖縄に要らない基地は全国のどこにも要らない」と頑なに主張することは、公共の課題である安全保障政策について多数決で決することを求めないという意味で多数決を尊重せず、かつ結果的に沖縄という少数者の権利を害することになる。とすれば、かかる主張もまた、先に述べた民主主義の二つの原則に反するものである。
 普天間基地の返還が20年以上もかけ「なぜ1ミリも進まないのか」という問いに対する回答は、政府・与党も、野党も、日本の政治がこの過程から逃げ、踏まなかったということに尽きる。
5.人権侵害及び法の下の平等違反
 沖縄は幸福追求権などの基本的権利から遠く、平和的生存権さえ脅かされ続けている。このことは、1945年の本土防衛と位置づけられた沖縄戦、1952年のサンフランシスコ講和条約での沖縄の施政権の切り離し、同時期における本土からの沖縄への米軍基地の移転、1972年の日本復帰後も変わらぬ過重な米軍基地負担という歴史的経緯、度重なる米軍及び米軍属による事件・事故などからも明らかである。
 国連の人権理事会及び人種差別撤廃委員会も沖縄の基地に関する問題を断続的に取り上げており、特に人種差別撤廃委員会は、2010年、「沖縄における軍事基地の不均衡な集中は、住民の経済的、社会的及び文化的権利の享受に否定的な影響があるという現代的形式の差別に関する特別報告者の分析を改めて表明する。」との見解を示している。
 少なくとも、1996年4月、当時の橋本総理大臣とモンデール駐日大使が「今後5年ないし7年以内に、十分な代替施設が完成し運用可能になった後、普天間飛行場を返還する」との発表をした際、代替施設が必要だというのなら、前記SACO設置時の基本理念に基づき、沖縄以外の全国の自治体が等しく候補地となり国民的議論において決定すべきであった。しかし、政府は、専ら「本土の理解が得られない」という不合理な区分により、「辺野古が唯一」と繰り返し、同じ沖縄の辺野古に新基地の建設を強行していることは、憲法13条の幸福追求権や平和的生存権を侵害し、憲法14条の定める「法の下の平等」に反する。
6.求められているのは、民主主義及び憲法に基づいた公正な解決
 沖縄の米軍基地の不均衡な集中、本土との圧倒的格差を是正するため、沖縄県内への新たな基地建設は許すべきではなく、工事はただちに中止すべきである。
 次に、安全保障の議論は日本全体の問題であり、普天間基地の代替施設が国内に必要か否かは、国民全体で議論するべき問題である。したがって、普天間基地の代替地について、沖縄県外・国外移転を、当事者意識を持った国民的な議論によって決定すべきである。
 そして、国民的議論において普天間基地の代替施設が国内に必要だという世論が多数を占めるのなら、民主主義及び憲法の規定に基づき、一地域への一方的な押付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定することを求めるものである。
 ついては、貴議会において、次の事項を求める意見書を国に提出されたい。
1 辺野古新基地建設工事を直ちに中止し、普天間基地を運用停止にすること。
2 全国の市民が、責任を持って、米軍基地が必要か否か、普天間基地の代替施設が日本国内に必要か否か当事者意識を持った国民的議論を行うこと。
3 国民的議論において普天間基地の代替施設が国内に必要だという結論になるのなら、沖縄の歴史及び米軍基地の偏在に鑑み、沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とし、民主主義及び憲法の規定に基づき、一地域への一方的な押付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより解決すること。


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