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平成28年9月定例会(陳情第10号)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0004353 更新日:2019年1月17日更新

第10号 平成28年8月22日受理 建設公安委員会 付託

新潟国際海運に対する県の指導・監督に関する陳情

陳情者

(要旨)

1 はじめに

 陳情者は、SEODONG MARITIME Co.,Ltd(以下、「セオドン社」)から受けた報告に基づき、以下のとおり陳情する。
 セオドン社は、平成27年8月26日、NAFJ Panama Inc.(以下、「NAFJ」)との間でオハマナ号の売買契約を締結した(資料1)。しかし、その後、NAFJは、オハマナ号の引取りを不当に拒絶し、代金の一部の支払いを拒んだ。セオドン社は、やむを得ず、社団法人日本海運集会所(以下、「日本海運集会所」)に仲裁を申立て、その結果、平成28年7月5日、NAFJに対して、金1,511,734米ドル及び法定利息並びに仲裁費用1,928,000円を支払え、という仲裁判断(以下、「本件仲裁判断」)が出された(資料2)。
 しかしながら、NAFJの親会社である新潟国際海運株式会社(以下、「新潟国際海運」)は、仲裁判断が出されると直ぐに、仲裁判断を無視した上で、NAFJを破産させることを決定し、県もこの決定を追認した。
 その結果、セオドン社は、仲裁で正当に認められた金銭の支払いを受けることができていない。その一方で、NAFJ、新潟国際海運及び県が、真実と異なることを対外的に説明しており、セオドン社は、現在の状況を非常に憂慮している。
 セオドン社は、正しい情報が県民を含む関係者に公にされ、NAFJ、新潟国際海運及び県が、法の抜け穴に逃げるのではなく、正義に叶った判断をし、互いに将来に向けて歩んでいくために本陳情を行う。

 

2 セオドン社及びオハマナ号について

 セオドン社は、韓国・釜山に所在する船舶の売買等を行う会社である。従業員は、社長を含めて7名の小規模な会社であり、他社から投融資を受けて事業を営んでいる。
 オハマナ号は、平成元年に三菱重工業下関造船所で建造されたフェリーであり、船齢26年の古い船である。しばらく日本で運航された後、韓国の清海鎮海運に売却され、同社が仁川と済州島を結ぶフェリーとして使用していた。ところが、平成26年4月、清海鎮海運が所有・運航していたセウォル号の沈没事故が起き、同社が営業を停止したことから、それ以降、韓国仁川港に係留されていた。
 セオドン社は、平成27年3月、韓国の裁判所が主宰する競売手続によりオハマナ号を取得した。セオドン社は、オハマナ号を取得した後も韓国仁川港に本船を係留しており、平成27年10月に日本に回航するまで、同船を航行したことはなかった。つまり、オハマナ号は、平成26年4月以降、長期間に亘り、航行することもなく、岸壁に付けられたままの状態にあった。

 

3 経緯

 (1) 平成27年6月~7月:検船及び候補船選び

  1. 県は、交通政策局港湾振興課が主体となって中古フェリー探しを進めた。遅くとも平成27年6月上旬までには、候補となる船が絞り込まれ、6月8日及び11日には、副知事へのレクも行われた(資料3-1、資料3-2)。
  2. 平成27年6月3日、セオドン社のブローカー(仲介人)が、新潟国際海運(NIS)の取締役であるA氏に、オハマナ号が売りに出ていることを紹介した(資料4-1-1)。当時、NIS・A氏には、「無理しても船舶を調達せよ」という命が下されていた(資料4-1-2)。
  3. 6月8日、NIS・A氏は、ブローカーにオハマナ号の検船を申し込み(資料4-1-3)、セオドン社はこれに応じた。
    買主及び県側は、セオドン社が「メインエンジンはよくメンテナンスされており、良好な状態にある」という内容のメールを送ったと強調するが(資料6-3・5頁)、このメールは、このときにセオドン社がブローカーに送ったメールをブローカーが引用したものに過ぎない(資料4-1-4)。当然ながら、買主及び県側は、その後、自ら検船してオハマナ号の状態を確認した上で同船を購入する意思決定をした。
  4. 買主側は、「NAFJ」ではなく「新潟国際海運」(Niigata International Shipping,Co.,Ltd.)の名義で検船を申し込んだ(資料4-1-5)。その後、NIS・A氏とブローカーが検船作業の詳細についてメールで調整をしたが、買主側は、オハマナ号の船級を取得して試験運航するように売主に依頼したことはなかった。なお、これらのメールについては、県港湾振興課の野呂大祐政策企画員(以下、「野呂政策企画員」)や古川剛史主任(以下、「古川主任」)にも写しが送付されていた(資料4-1-5、資料4-1-6、資料4-1-7、資料4-1-8)。
  5. 6月17日午後1時30分から午後3時30分まで、約2時間に亘り、買主側は、韓国仁川港でオハマナ号の検船を行った。買主側の参加者は、以下のとおりである(資料3-3)。
    • 新潟国際海運:五十嵐純夫氏(以下、「五十嵐氏」)、A氏、B氏
    • 県港湾振興課:山岸智課長(以下、「山岸課長」)、古川主任
    • 県ソウル事務所長:鶴巻勝所長、文チーム長
    • 佐渡汽船株式会社:C氏
    • 佐渡汽船シップメンテナンス株式会社:D氏
  6. 検船時、五十嵐氏は、乗船して検船するために必要となる補償状(“Letter of Indemnity”)をセオドン社に提出したが、そこには「NAFJ」ではなく「新潟国際海運」(Niigata International Shipping,Co.,Ltd.)の社長として署名していた(資料4-2)。また、県が保有・管理する書類にも、新潟国際海運が検船したことは記録されているが、NAFJが検船同行したことは記されていない(資料3-4・3頁)。
    したがって、NAFJが6月17日の検船に参加したという県の説明(資料6-2)は、上記事実に矛盾する。
  7. 後の仲裁において、五十嵐氏、A氏及びD氏は、6月17日の検船の状況について、宣誓供述書若しくは供述書を提出した(資料5-1、資料5-2、資料5-3)。
    • (ア)五十嵐氏は、インターネット上の広告を見てオハマナ号のスピードを18-21ノットだと信じたと述べる(資料5-1・1頁)。五十嵐氏が言及するインターネット上の広告とは、「Nauti SNP」というフィンランドの会社のウェブサイトである(資料5-4)。なぜ五十嵐氏がこのウェブサイトの情報を信用したのか不明だが、当然ながら、そこに掲載された情報については何も保証されていない(資料4-3)。また、五十嵐氏は、仲裁判断が出された後になって「船級がないことは、事前に把握した上で、試運転するように強く求めましたが、売主が拒否した」と述べるようになったが(資料6-4)、そのような事実はないし、五十嵐氏自身も宣誓供述書の中で、そのようなことについて一切言及していない。
    • (イ)NIS・A氏は、オハマナ号の取引について買主側で中心的に交渉を進めてきた担当者だが、新潟国際海運の取締役ではあるものの、NAFJの役員ではない。同氏は、おそらく(NAFJではなく)新潟国際海運が取引を主導していた事実を隠そうと企て、自らがブローカーと連絡をとりながら検船を進めてきたにも関わらず、宣誓供述書の中で「NAFJ PANAMA INC.(“NAFJ”)から依頼され オハマナ号の検船を手伝ったのです。」(資料5-2・1頁)、「NAFJ側は、検船前に、売り主側に対して、検船時においては、主機関を運転させてほしい、また、各機器を作動させてほしいと伝えたそうです。」(同1頁)、「これらのやりとりは、すべてブローカーを通じてなされたと聞いています。」(同2頁)といった不自然かつ、明らかに自らの言動に反する供述をしている。
      なお、A氏も五十嵐氏と同様、「船級がないことは、事前に把握した上で、試運転するように強く求めましたが、売主が拒否した」(資料6-4)という事実があったなどとは、宣誓供述書の中で述べていない。
    • (ウ)D氏は、オハマナ号の速度を検船の終了間際に機関案内人から聞いたと述べる。セオドン社はそのような事実について否定するが、仮にD氏の話を信じるとしても、同氏は、機関案内人の名前も確認しておらず、何時その話を聞いたのかも記憶が定かでなく、その根拠すら確認していなかったようであり(資料5-3・3頁)、検船の専門家ならば杜撰と言わざるを得ない。
  8. 6月24日、新潟国際海運及び県(出席者は、山岸課長、野呂政策企画員、古川主任)等は、「検船結果意見交換会」を開催した。県は、韓国で検船を行った、ニューブルーオーシャン号、オハマナ号、韓一カーフェリー1号の3船の性能を詳細に比較した「フェリー検船結果比較(港湾振興課所見)」を作成していた(資料5-5)。
    この会議の結果、新潟国際海運、県及び佐渡汽船らが検船を行った複数の船舶の中から候補船をオハマナ号に絞り込むこと、7月3日までに船舶検査の専門家であるサーベイヤーに本船の追加検船を行わせること、具体的な時期を入れた作業スケジュールを作成し直し、県を含む関係者で共有すること等を決定した(資料3-5)。県が実質的に船舶の選定を行い、調達作業を主導していたことが分かる。
    また、同日、NIS・A氏がブローカーにオハマナ号の2回目の検船を申し込み(資料4-1-9)、正昌海運株式会社のサーベイヤーを手配した(資料4-1-10)。NIS・A氏は、ブローカーに対して、この取引が「公金を出す」ものであることを告げていた(資料4-1-9)。なお、古川主任は、自ら韓国船級協会のスタッフと面会することを予定していたようである(資料4-1-9)。
  9. 6月25日、県交通政策局が知事に対して、中古フェリー船調達の状況についてレクを行い、候補船が2船に絞られている旨を報告した(資料3-6)。
  10. 6月26日、新潟市が港湾課・小柳昌史主査(以下、「小柳主査」)を2回目の検船に立ち会わせることを決定した(資料4-1-11)。
  11. 6月30日午後1時45分頃から午後6時15分頃まで、B氏(新潟国際海運)、サーベイヤー(正昌海運)、古川主任(県)及び小柳主査(新潟市)が、韓国仁川港で、オハマナ号の2回目の検船を行った。少なくとも、小柳主査は、セオドン社が買主側に誠実に対応しているという感想を持っていた(資料7-1)。また、検船の結果、新潟国際海運及び県は、船級の問題を解消し、改装・改造に相応のお金をかければ、安全面での問題を解消して運航できるようになると認識した(資料3-7)。
  12. 買主が依頼したサーベイヤーのレポート(資料5-6)には、「メインエンジンのクランクケース、ターボチャージャー、RPM meter、Fuel Oil、Pressure等が不正常であり、発電機のガバナーも動かず、油漏れもある、スタビライザーは長期間整備されていない、よって、動くかどうか分からない」などと記載されていた(この部分は、資料2・12頁でも引用されている)。
    また、新潟国際海運は、当該レポートで「メインエンジンは特に問題なく、ある程度の費用を掛ければ日本海横断航路に使用することは可能である、と報告されている」と説明するが(資料6-3・7-8頁)、サーベイヤーのレポート(資料5-6)には、そのような記述はない。
  13. 7月13日、新潟国際海運及び県(山岸課長、野呂政策企画員及び古川主任)らは、「日本海横断航路関係者会議」を開催した(資料3-8)。

 

 (2) 平成27年7月~8月:契約締結過程

  1. 契約交渉の過程で、オハマナ号をイタリア船級協会(RINA)の船級に入れた状態で売買するという案が検討されたため、7月15日・16日、RINAがオハマナ号の検船を行い、その結果をレポートにまとめた。当該レポートには、「機関室や発電室に異常な油汚染がある、右舷側の主機の燃料供給パイプは漏れがある」などの記載があり、「結論として、あらゆるシステムの作動状態は不明である、機関室や発電室には異常な油汚染があり、オイルポンプの殆どは油漏れを起こしており、オイルストレッジタンクやパイプ類もすべて油漏れを起こしている、エンジンルームの状態は規則違反である、エンジンルームやその機器類は、十分に整備しなければならない」などと記載されていた(資料4-4、この部分は、資料2・12頁でも引用されている)。
     なお、セオドン社は、当該RINAのレポートを任意に新潟国際海運に送付した。県は、売主が「NAFJ」にレポートを送ったと説明するが(資料6-2)、セオドン社が「NAFJ」という会社の存在を知らされたのは、後述のとおり8月18日であり、セオドン社は、あくまで新潟国際海運にレポートを送付したに過ぎない(当然、セオドン社はパナマに郵送したわけでもない)。
  2. 7月21日、新潟国際海運は、県に対して3億円の出資を依頼した(資料3-9)。同日、古川主任は、支出負担行為決議書を起案した(資料3-10)。
     県は、8月下旬に新潟国際海運から出資の要請があったと説明するが(資料6-1)、出資の要請は7月21日である。8月下旬は、知事が支出負担行為決議書の決裁をした時期に過ぎない。
  3. 7月24日、セオドン社は、オハマナ号をRINAの船級に入れて売買する場合の価格が550万米ドルになることを買主に提示した(資料4-1-12)。NIS・A氏は、これに対して「スクラップの船がべらぼうな高値になりました」と応じた(資料4-1-13、このメールは資料2・12頁でも引用されている)。
  4. 8月11日午前、五十嵐氏、A氏、森邦雄副知事(以下、「森副知事」)、笠鳥公一総括政策監(以下、「笠鳥総括政策監」)、山岸課長及び野呂政策企画員が、新潟市内のホテルラングウッドでブローカーと面会した。NIS・A氏からブローカーのメールにも記載のあるとおり(資料7-2)、ブローカーは「新潟国際海運」の五十嵐氏及びA氏と面会したのであり、面談中、「NAFJ」の名前には一切言及がなかった。五十嵐氏も、新潟国際海運社長としての名刺をブローカーに手渡した(資料7-3)。
     県は、「NAFJ」の五十嵐氏が面談を設定したというが(資料6-5)、この面談時、NAFJという会社は、売主に明かされておらず、事実に反する。また、この面談に立ち会っていた笠鳥総括政策監も、後述のとおり、平成28年3月9日の県議会2月定例会・総務文教委員会において、船の調達を行い、契約の当事者だったのは「新潟国際海運」であると答弁しており、上記県の説明は、これと矛盾する。
     なお、森副知事は、この面談時に「日本海横断航路 フェリー運航までの作業・スケジュール」という資料をブローカーに手交し、日本海横断航路計画の説明を行った(資料4-5)。県は「当時は、まだ購入する船舶を決定する段階にはなかったものと承知しています」と説明するが(資料6-5)、8月11日に手渡されたこの資料の中には、8月中に「購入船舶決定」「売買契約締結」「手付金支払い」を行う予定であることが明記されていた。
  5. 同日午後、NIS・A氏からブローカーへの「以下の船価でオフャー(「オファー」の誤記)致します。なお、支払い方法は米US$でお願いします」という指示に基づき(資料4-1-14)、新潟国際海運、新潟県及び新潟市は、セオドン社に対して、「新潟国際海運、新潟市、新潟県若しくはそれらが指名する者」を買主として、本船を金425万米ドルで購入したいという申し込みの意思表示を行った(資料4-1-15)。当該申込みについては、野呂政策企画員及び古川主任にも写しが送付されていた(資料4-1-14)。
     なお、県及び五十嵐氏は、これについて優先交渉権を決める入札を行ったと説明している(資料6-5)。しかし、当該メール(資料4-1-14)には、「優先交渉権」なる文言はなく、むしろ「SUBMIT FIRM BUYING OFFER ON M/V OHAMANA」(機船オハマナ号の確定的な購入の申込みを提示する)と記されており、県及び五十嵐氏の説明は、これと矛盾する。また、「THE BUYER」(購入者)は、「NIIGATA INTERNATIONAL SHIPPING CO.,LTD.,NIIGATA CITY,NIIGATA PREFECTURE,JAPAN OR THEIR NOMINEE」(新潟国際海運、新潟市、新潟県若しくはそれらが指名する者)とされており、「NAFJ」には一切、言及されていなかった。
  6. その後、NIS・A氏は、ブローカーを介してセオドン社との間で、契約交渉の詰めを行った。
     新潟国際海運及びNAFJは、交渉過程や契約内容は、守秘義務のため報告できなかったと説明する(資料6-3・2-3頁)。しかし、実際には、契約交渉を行っていたのは、上述のとおり、NAFJのメンバーではなく、新潟国際海運の取締役であるA氏であった。しかも、A氏は、ブローカーに対して、契約交渉に係るメールを新潟国際海運の職員全員が閲覧できる共用アドレス「nis@j-nis.co.jp」に送信するように指示していた(資料4-1-21、資料4-1-22)。
     さらに、交渉過程の多くのメールは、県の担当職員である、野呂政策企画員や古川主任にも写しが送付されていた。
     NAFJ、新潟国際海運及び県が、守秘義務について意識して行動していなかったことが分かる。
     なお、新潟国際海運は、契約書に「契約に係る当事者間において厳秘扱いする」と規定されていたと説明する(資料6-3・3頁)。しかし、契約書第22条には、“kept private and confidential among the parties concerned”(関係者間で厳秘扱いする)と規定されていた(なお、新潟国際海運の説明どおりならば、下線部は“between the parties”となるはずである)。つまり、契約書上は、契約交渉に関係していた新潟国際海運や県に対して情報を開示することは、何ら禁じられていなかった。
  7. 売主と買主間で契約交渉の詰めとしてやりとりがあったのは、以下のような事項である。
    • (ア)売買代金の支払方法、共同口座開設の可否(資料4-1-18、資料4-1-20)
    • (イ)オハマナ号の前船主が改造していた部分の撤去費用の負担(資料4-1-19、資料4-1-21)
    • (ウ)売主から買主への取締役会決議等の送付(資料4-1-19)
    • (エ)買主から売主への取締役会決議等の送付(資料4-1-21、資料4-1-24)
    • (オ)売買代金について85,000米ドルの減額要請(資料4-1-22)。なお、この減額要請は、「新潟国際海運」のA氏がセオドン社に対して行ったものである。
    • (カ)売買契約締結後5日以内の信用状(L/C)の開設(代金決済のため)(資料4-1-23)
  8. 県は、8月24日時点でNAFJが資金を必要としていたことを疑問だと言うが(資料6-1)、手付金決済に関するやりとりは、少なくとも、県の担当者である古川主任には伝えられていた(資料4-1-23)。
     また、県は、契約締結が事後報告だったと説明し、県が提示していた懸念事項が十分に解明されないまま、8月26日に契約をしたことも疑問だとする(資料6-1)。しかし、NIS・A氏がブローカーに対して「(買主の)取締役決議と会社概要を早急に後日送ります」と送ったメールも、県の担当者に写しが送付されていたし(資料4-1-21)、野呂政策企画員や古川主任が、8月下旬に取り交わされていた、NIS・A氏らの上記やりとりについて意見を述べた形跡もない。むしろ、実態は、県担当者がNIS・A氏らが行っていた交渉を黙認していたものと見受けられる。
  9. 8月18日、NIS・A氏は、ブローカーにNAFJの定款を送り、NISの登記を後日、送ることを伝えた(資料4-1-16)。なお、A氏のメールにある“good Stondengue”とは、“Good Standing”(登記)の誤記である。
     これを受けて、同日、ブローカーは、セオドン社に対して、NAFJが、新潟国際海運の指名する者として契約書に買主として表示されることを伝えた(資料4-1-17)。セオドン社は、このとき(契約締結の約1週間前)、初めて、買主が形式的にNAFJとなることを知った。ただし、NAFJが「新潟国際海運が指名する者」とされており、しかも、一連の交渉に新潟県が深く関与してきたことから、不正が行われることはないと信じて、異議を述べなかった。
  10. 8月20日午前9時30分から正午まで、約2時間半に亘り、新潟国際海運、県(森副知事、桐生裕子交通政策局長、笠鳥総括政策監)、新潟市(池田博俊技監)及び佐渡汽船が、日本海横断航路関係者会議を行った(資料3-11)。
     県は、殊更にNAFJと新潟国際海運を区別して、この会議は「NAFJ、新潟国際海運(株)、佐渡汽船(株)、県、新潟市」の5者で行われたと説明する(資料6-2)。しかし、A氏からブローカーに送られたメール(野呂政策企画員及び古川主任にも写しが送付されていた)では、この会議は「4者会議」と表現されており(資料4-1-18)、県の説明はこれと矛盾する。
  11. 8月24日、NIS・五十嵐氏は、ブローカーから売買契約書の案を受領した。五十嵐氏は、(NAFJではなく)新潟国際海運(株)全員で内容を協議し、結果について連絡するとブローカーに回答した(資料4-1-25)。
  12. 同日、知事の決裁により(資料3-10)、県は、「日本海横断航路の船舶調達に係る出資を行うため」、新潟国際海運に対して3億円を出資することを決定した(資料3-12)。
  13. 8月25日、NIS・A氏は、ブローカーに対して売買契約書(MOA)の加除修正を申し入れた。その内容は、引渡時期及び予備のプロペラの有無等に関するものだった(資料4-1-26)。
     なお、NIS・A氏は、契約書の文言に関連して「若干県の意向があるかもしれません」とブローカーに伝えており(資料4-1-26)、県が売買契約書案を確認していたことが窺われる。
  14. 8月26日、セオドン社を売主、NAFJを買主として、オハマナ号の売買契約が締結された(資料1、資料2・3頁)。この売買契約の主な内容は、以下のとおりである。
    • (ア)売買代金は、金4,165,000米ドルとする(第1条)。
    • (イ)買主は、本件売買契約締結後5日以内に売買代金の15%、すなわち624,750米ドルの金員を売主に支払う(第16条(a)項)。なお、同金員は支払い済みである。
    • (ウ)本船の引渡準備が整い次第、売主は、買主に対し、引渡準備整頓通知を発する(第7条)。
    • (エ)買主は、引渡準備整頓通知を受領した後、売主及び買主双方が署名した引渡受領プロトコール提示次第、売主に残代金85%、すなわち3,540,250米ドルを支払う(第16条第6段落)。
    • (オ)本船は、平成27年6月17日、韓国仁川港にて行われた買主による検査に基づき、売買契約の目的物として受領されることが認められた。買主は、韓国船級記録(KR Class Records)を検査する権利を放棄し、従って、本件売買契約第19条その他関連条項に定めるダイバーによる検査を除き、買主による更なる検査をすることなく、本件取引は完了した(第17条)。
    • (カ)本船は、買主が平成27年6月17日、韓国仁川港にて行った検査時と、実質的に同じ状態で引き渡されるものとする。本船の状態が、買主の検査の時と引渡を受ける時とで実質的に異なることに関する立証責任は、買主にある(第18条)。
    • (キ)売主は、買主が指定する瀬戸内海の錨地若しくはドックヤードの岸壁において、本船を引き渡す(第2付属合意書)。
    • (ク)スピードについて何ら合意がなかったことについては、後の仲裁判断で認定されている(資料2・11頁)。
  15. 新潟国際海運及びNAFJは、県に対して、「今後、回航する際に必要な確認はする。その際に不具合があれば船舶を引き受けないことも可能」と説明していたようである(資料6-6)。しかし、契約書第17条は、ダイバーによる検査以外、買主は更なる検査をすることなく、船を引き取ることを約束したのであり、新潟国際海運及びNAFJの県に対する説明は、契約内容と全く異なる。
     なお、日本海運集会所の標準書式による条項は、第15条までであり、第16条以降は、同標準書式によらず、売主と買主が合意により独自に設けた規定である。

 

 (3) 平成27年8月~10月:契約締結後

  1. (1) 8月28日、新潟国際海運、県(笠鳥総括政策監、遠山隆政策監、山岸課長、野呂政策企画員及び古川主任)及び新潟市(高野港湾課長及び村山港湾課長補佐)らは、県庁で日本海横断航路関係者会議を行った(資料3-13)。
  2. (2) 9月3日にも新潟県及び新潟市らは、日本海横断航路関係者会議を開催した(資料3-14)。なお、この会議については、県の資料には記載がない(資料6-2)。
  3. (3) 9月10日、山岸課長及び古川主任は、改造費の見積額を精査するため、オハマナ号の引渡予定地であった広島県呉市の株式会社神田造船所で打合せを行った(資料3-15)。
  4. (4) 9月11日、古川主任らは、韓国仁川港で、オハマナ号の現況調査を行った(資料3-15)。
  5. (5) 9月14日、県庁において、新潟国際海運及び県(森副知事、笠鳥総括政策監、水口幸司交通政策局副局長(以下、「水口副局長」)及び山岸課長)らが日本海横断航路関係者会議を開いた(資料3-16)。
     この会議については、県の資料にも、新潟国際海運の資料にも記載がない(資料6-2、資料6-3・8頁)。
     なお、その頃、新潟国際海運、神田造船所及び県庁当局は、オハマナ号の引渡日について調整を行っていた(資料4-1-27)。これらのメールも古川主任に写しが送付されていた。
  6. (6) 9月28日、A氏は、ブローカーに対して「明日から県議会が開催されますが、船舶購入後の改造費の大幅な費用が問題になりそうです。参考までに神田造船所が売買契約書締結直後の見積もりで検査費用を除いた金額が約9億円です。その後客室関係を9月10日の現状維持とした見積もりが7.8億円で有り加えて定期検査費用が1.5億円ほどかかるとのことっで有り非常に厳しい状況です。」(ママ)と記したメールを送った。
     新潟国際海運及び県は、契約を締結した後になって、改造費が予算を大きくオーバーすることを認識したようである。
     また、新潟国際海運はオハマナ号を船級が失効した状態で購入した後、一般財団法人日本海事協会(ClassNK)による船級登録を検討していた。しかし、就航時にオハマナ号をフェリー(旅客船)として登録することができず、RORO船、すなわち貨物船として船級登録せざるを得ないこと、さらには県が旅客船として船級登録できないことに強く抵抗しており、船舶の引取直前になって関係者間で議論が紛糾していたことが明らかになった(資料4-1-28)。
  7. (7) 10月8日、県議会9月定例会・建設公安委員会で、山岸課長は以下のとおり答弁した(資料7-4)。
    「運営主体となります新潟国際海運では、現在、船舶の調達、収益等を記載した事業計画の策定、組織体制の強化、集客・集荷に向けた準備などを行っているところであります。フェリーの調達につきましては、中古船市場から適船を調達できるよう船舶のブローカーを通じまして情報収集し、候補船の選定を進めてまいりましたが、現在は候補船を絞り込みまして、取得に向けた調整を進めているところでございます。」
    「候補船の詳細を含めまして、交渉に関する具体的な情報につきましては、これは新潟国際海運がやっている」
    「候補船を絞って、最終的な諸条件を調整しているというような段階でございます」
     県は、フェリーの調達はNAFJの役割だと説明し(資料6-2)、船舶購入に責任を持っていたのはNAFJだったと説明しているが(資料6-5)、それが真実であれば、殊更、NAFJの存在を隠し、新潟国際海運が調達を行っていたかのように説明した、山岸課長の上記答弁は虚偽の誹りを免れない。
     また、改造費増額が発覚し、「県としても日本海横断航路事業の円滑な実施に向けての支援の検討を開始して」いたという状況でありながら(資料6-7)、山岸課長が「最終的な諸条件を調整しているというような段階」と答弁したのは、やはり不正確かつ不誠実と言わざるを得ない。
  8. 10月14日、新潟国際海運及び県(港湾振興課・小嶋満雄課長補佐(以下、「小嶋課長補佐」)及び古川主任)らは、東京都内でオハマナ号のパナマ船籍取得に関して意見交換を行った(資料3-17)。
  9. 10月20日、オハマナ号は引渡回航のため、韓国仁川港を出港し、同月23日、広島県呉市の神田造船所の岸壁に到着した(資料2・4頁)。なお、セオドン社は、船級は取得せず、パナマ当局が発行する片道航行許可に基づいて回航されたのであり(資料4-6)、NAFJは「臨時的な片道のみの船級を取得」したと言うが(資料6-4)、それは誤りである。
  10. 10月23日、神田造船所で、セオドン社代表者、NIS・A氏及び小嶋課長補佐の立ち会いの下、ダイバーによる検査が実施され、オハマナ号の船底に大量の牡蠣が付着していたことが確認された。(資料4-7、資料5-7)。
  11. 10月24日、神田造船所会議室で、セオドン社代表者らは、新潟国際海運の取締役とNAFJの役員を兼ねるE氏、新潟国際海運のA氏及びB氏、県の小嶋課長補佐及び古川主任、弁護士とオハマナ号の引渡しについて会議を行った(資料3-18)。しかし、E氏らは、速度が遅いなどと言って、正当な理由なく本船の引取りを拒み、さらに残代金等の支払いを拒んだ。
     なお、この会議中、E氏は「新潟の我々のトップのほうにあげていきたいと思います。」(資料5-8・17頁)と発言し、小嶋課長補佐は「県が出資したお金で買いますので、税金を使って買うということなんです。」(同7頁)と発言していた。
     また、録音記録には、休憩中の買主側の内輪話も記録されており、E氏及び弁護士は、「こっちは県のほうに連絡せにゃいかんと。」「せにゃいかんという話で。」と発言していたことが記録されている(同16頁)。
     買主側がオハマナ号の引取拒否について、県の指示を仰いでいたことが分かる。
  12. 県は、「売主自ら「何で12ノットしか出ないかびっくりした。」との発言があったと言う(資料6-7)。これは正確には、県側が用意した通訳が「それで、今回も12とか出たら、彼らも、なんでそこまでしか出ないか、彼らもびっくりした」と発言したことを指しているものと考えられる(資料5-8・5頁)。
     しかし、その発言の直前で、「これ(=船のスピード)は我々も知るすべがありません。3月に(競売で)引き受けてから、ずっとそのままそこ(韓国仁川港)で、ずっとどこも、どこかに航海に出たり、それもやってないし、何もしてないからスピードがどれくらいでるか自分たちも想像してない」と説明している(同5頁)。すなわち、セオドン社は、オハマナ号を取得した後、自ら運航したことがないのだから、その速度を知る由がなかったということを明確に説明していた。
     しかも、セオドン社は、オハマナ号のスピードが出にくい理由として、貝殻が付着していたこと、約18か月運航していなかったこと、消耗品のノズルの交換が必要なこと等が考えられることを丁寧に説明していた(同3頁)。
     県による恣意的な議事録の部分抜粋は、誤解や混乱を惹起する不適切なものと言わざるを得ない。

 

 (4)平成27年10月以降:仲裁付託後

  1. 買主は、セオドン社の再三の要求にも関わらず、オハマナ号の引取り及び残代金等の支払いを拒んだため、セオドン社は、11月16日、日本海運集会所に仲裁を申し立て、NAFJによる売買契約の債務履行拒絶が不当であると主張し、残代金の支払い及び船の引き取り等を求めた(資料2・4-5頁)。他方、NAFJは、手付金相当額の損害賠償等を反対請求として申し立てた(同2-3頁)。
  2. 11月20日、小嶋課長補佐は、東京都港区六本木一丁目付近へ出張した(資料3-19)。なお、NAFJの代理人弁護士の事務所の最寄り駅は、六本木一丁目である。
  3. 11月27日、水口副局長、山岸課長及び古川主任は、新潟国際海運の株主総会に出席し、会社提案を承認し、その後、株主懇親会に出席した(資料3-20)。
  4. 12月7日、古川主任は、東京都港区六本木一丁目付近へ出張した(資料3-21)。
  5. 平成28年3月3日、仲裁の口頭審理が開かれ、五十嵐氏、E氏及びNIS・A氏が出席した。
  6. 3月9日、県議会2月定例会・総務文教委員会において、笠鳥総括政策監が、「船の調達と運航につきましては、新潟国際海運がやろうということで事業を進めているわけでございます」、「いわゆる船の購入に関する契約そのものは、売主側と買主側、買主側は新潟国際海運ということでございますけれども、そこの間で契約を結んでいるということであります」と答弁した(資料7-5)。
     平成26年8月11日のブローカーとの面談について、笠鳥総括政策監が船舶購入交渉はNAFJが行っていたと認識していたにも関わらず(資料6-5)、県議会において買主を「新潟国際海運」と答弁したならば虚偽答弁と言わざるを得ない。
  7. 3月28日、仲裁の和解期日が開かれ、E氏及びNIS・A氏が出席した。
  8. 4月4日、NAFJは、和解交渉の中で、新潟国際海運がNAFJに対して、最大で100万米ドル(当時のレートで約1億1,100万円)の資金援助ができることを前提に「(1)NAFJが本船を引き取らないならば手付金を放棄し、さらに100万米ドル支払う、(2)NAFJが本船を引き取る場合には、70万米ドルを支払う。」という和解提案を行った(資料5-9)。
     さらに、4月12日、NAFJは、新潟国際海運がNAFJに資金援助できる金額は最大で110万米ドル(同時のレートで約1億1,900万円)だとして、「(1)NAFJが本船を引き取らないならば手付金を放棄し、さらに110万米ドル支払う、(2)NAFJが本船を引き取る場合には80万米ドルを支払う。」という和解案を再提示したが(資料5-10)、和解は成立しなかった。
     NAFJが仲裁について県に報告していなかったというのが事実であれば(資料6-3・3頁)、新潟国際海運は、筆頭株主である県に伺いを立てることもなく、100万米ドル若しくは110万米ドルの支出を自由に決定する権限があったことになる。すなわち、新潟国際海運は、公金から出資を受けていた認識が欠如していたと言えよう。

 

 (5)平成28年7月5日:仲裁判断

  平成28年7月5日、仲裁判断が出された(資料2)。その主な内容は、以下のとおりである。

  1.  主文(1-2頁)
    • ア 被申立人(NAFJ)は申立人(セオドン社)に対し、金1,511,734米ドル及びこれに対する2015年11月11日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
    • イ 申立人のその余の請求を棄却する。
    • ウ 被申立人の申立人に対する反対請求を棄却する。
    • エ 仲裁費用は、金4,820,000円とし、これを10分し、10分の1を申立人の、10分の9を被申立人の負担とする。被申立人は、申立人が仲裁事務局に予納した金2,410,000円のうち、申立人が負担すべき金482,000円を差し引いた、金1,928,000円を申立人に支払え。
  2.  本船の速度について(11頁)
    「本件売買契約書には、本船の速力に関する条項は、一切、ない。」
    「買主の側で特に船舶の速力について保証や担保が必要であれば、これは契約書に明示する必要がある。契約書に規定がない、ということは、当事者の動機は別として、契約上、船舶の速力が契約の重要な要素ではなかった、と解釈すベきである。」
    「申立人代表者が、速力について口頭で保証した、とすることも、これを立証する証拠は、ないと言わざるを得ない。」
    「本船の速力が18ノット以上出る旨、申立人が保証若しくは担保した、とする被申立人の主張は、採用することができない。」
  3.  本船の状態について(11-13頁)
    「引渡時と検船時の本船の状態の食い違いについての立証責任は、被申立人にある(18条)。」「しかるに、被申立人は、上記検船時の本船の状態について、十分な証拠を提出していない。」
    「被申立人は、1年以上仁川港に係留されていた船齢26年の古い船を、その事情を承知しながら買い受けたものである。」
    「被申立人は、当然のことながら、買い受けた後、本船をDrydockに揚げ、船底などの牡蠣落としをし、エンジンをオーバーホールし、機器類も全て整備し、外板の塗装も塗り替えた上で使用する予定であったことは明らかである。」「本船については、上架して整備をすれば、フェリーボートとして使用できる状態にあった可能性は否定できない。」
    「被申立人は、引渡時の本船の状況が、検船時の状況と実質的に異なっていたことについて、立証責任を尽くしたとは思われない。」
    「本船船底部の牡蠣の付着は、上架すれば容易にこれを取り除き、船底塗装をやり直すことができるのは業界の常識といえよう。」「本船が、整備しても船舶として最早使用できる状況になかった、とは考えられない。」
    「本件契約書、前文及び17条に規定されているとおり、本船は2015年6月17日に仁川港で被申立人により行われた検船により、売買の目的物として受領されることが認められた。」「これは、所謂『現状有姿』の取引を規定しているものであり、被申立人は同日の状態の本船をそのまま受領する義務がある。」
    「よって、被申立人の本船引取拒絶は不当である。」
  4.  結論(14-16頁)
    「船舶の引渡しにおいて、買主が引取を拒絶した場合には、引取拒否の理由の如何を問わず、売主の引渡義務は消滅し、買主は引渡請求権を失う」
    「申立人の請求は、本件売買残代金の金額3,540,250米ドルから、本船の評価額2,200,000米ドルを差し引いた、1,340,250米ドル、及び、これに本船の維持管理等に関する費用等71,484米ドルを加算した1,411,734米ドル、並びに、これに対する2015年11月11日から支払済まで、商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の限度で理由がある」

 

4 NAFJについて

 新潟国際海運及び県は、仲裁判断が出された後になって、殊更に新潟国際海運とNAFJの法人格の差を強調し、あたかも、NAFJが実体のある会社であるかのように説明するが、以下のとおり、NAFJはペーパー会社に過ぎないと考えざるを得ない。

 (1) 所有関係及び人員構成

 NAFJは、新潟国際海運の完全子会社であり、新潟国際海運は、NAFJの意思決定権を完全に支配することができる。
 そして、NAFJの役員として登記されているのは、五十嵐氏、E氏及びF氏の3名だけであり(資料7-6)、同社に他の従業員はいない。そして、五十嵐氏、E氏及びF氏は、新潟国際海運の取締役である(資料7-7)。なお、E氏は、セオドン社との会議や仲裁の口頭審理にも出席していたとおり、今回の取引に密接に関与していた。一方、F氏については、セオドン社の知る限り、関与の程度は明らかではない。
 県は、「速度(18ノット)などの重要事項に関しても問題なしと取締役会に報告したのは何を根拠にしているのか」という、大げさな疑問を提起している(資料6-2)。しかし、NAFJの実態を踏まえれば「五十嵐氏とE氏が、契約についてF氏に何と説明したのか」ということに過ぎない。しかも、五十嵐氏とE氏だけで、NAFJの役員の過半数を占めている。
 また、NAFJは、守秘義務が解除されたので「(7月)15日に新潟国際海運に対し、仲裁判断書、検船レポート及びRINA(リナ)からのレポートについては、個人情報等に配慮し、全文を送付しました」と言う(資料6-2・4頁)。しかし、NAFJのメンバーは3人とも新潟国際海運の役員であり、上記説明は、一体、誰が誰に書類を送付したという意味なのか、不明である。

 

 (2)所在地及び連絡先

 NAFJの登記によれば、パナマのMORGAN & MORGAN法律事務所が同社の代理人とされており、NAFJの登記上の住所(53rd E Street, Urabanizacion Marbella,MMG Tower,16th Floor,Panama)は、同法律事務所のかつての所在地である(資料7-6)。MORGAN & MORGAN法律事務所は、平成26年1月6日、移転し、現在は他所に所在するが(資料7-8)、NAFJ Panamaの登記上の住所地は変更されていない。現在、NAFJ Panama宛に登記上の住所地に郵便を送っても届かない。
 しかし、NAFJは、実際にはパナマ国内の上記住所地を連絡先として公表することはなく、新潟市内で新潟国際海運が契約する電話番号をNAFJの電話番号だと指定し、さらにNAFJのファックス番号は、新潟国際海運と同一の番号を指定している。

 

 (3)財産管理

 NAFJは、資本金1,000米ドルの会社である(資料7-6)。新潟国際海運も、「子会社株式」として89,820円しか計上していなかった(資料7-9)。
 当然、セオドン社に支払った624,750米ドルの手付金も自らの資金ではなく、新潟国際海運が貸付け、若しくは立て替えたものに過ぎない(資料6-8)。
 しかも、NAFJは、「仲裁の守秘義務により、新潟国際海運に対しては、11月16日に売主側が仲裁を申し立てたことや仲裁の経緯については、報告できませんでした」と言いながら(資料6-3・3頁)、仲裁関係費用1,580万円は、新潟国際海運が貸付け、若しくは立て替えていた(資料6-8)。

 

 (4)事業活動及び納税

 NAFJが今回の売買契約前に、パナマ国内若しくは同国外で、何らかの事業活動を行っていたということは確認されていない。
 また、おそらくNAFJは、県に対するものも含め、納税も行っていない。

 

 (5)契約交渉過程

 上記のとおり、五十嵐氏は、平成27年6月17日のオハマナ号の検船に、NAFJ代表者としてではなく、新潟国際海運社長として立会い、8月11日には、新潟国際海運社長として、森副知事らとともにブローカーと面会した。また、契約締結2日前の8月24日には、売買契約書案について、新潟国際海運社長として協議することをブローカーに伝えていた。つまり、NAFJの社長を兼務する五十嵐氏すら、あくまで新潟国際海運の社長として振る舞っていたのである。
 さらに、売買契約の交渉及び締結後の連絡を買主側で、実質的に担当していたのは、NAFJの役員ではなく、新潟国際海運の取締役であるA氏である。A氏が、検船の申込み、検船の立会い、サーベイヤーの手配、購入の申込みの承認、売買契約の交渉、契約締結後の売主側との調整等を行っていた。

 

 (6)県議会答弁・県による説明

 笠鳥統括政策監及び山岸課長は、船舶の購入の責任はNAFJにあると理解し、それを前提にブローカーと面談までした上で(資料6-5)、県議会において、船舶の交渉、調達及び契約をしたのは、新潟国際海運であると答弁している。
 両氏が虚偽答弁をしていたのでもない限り、両氏は、新潟国際海運とNAFJを同一視していたはずである。
 また、県は、本件仲裁判断が出された直後に「新潟国際海運(株)が、求めていた試験運航を行わずに条件も付けずに売買契約したことは、…」と説明しており(資料6-9)、売買契約の当事者は、「新潟国際海運」だと認識していたはずである。

 

 (7)同一の弁護士の受任

 新潟国際海運の説明によれば、同社は、NAFJに、少なくとも手付金624,750米ドル及び仲裁関係費用1,580万円を貸し付けており(資料6-8)、しかもこの貸付金は、既に焦げ付いている。したがって、新潟国際海運とNAFJは利益相反の関係にあるはずである。
 一般に、弁護士は利益が相反する複数の当事者から事件を受任することができない(弁護士職務基本規程第28条)。しかし、それにも関わらず、仲裁においてNAFJの代理人を務めた弁護士らは、現在、新潟国際海運をも代理している。
 このことから、新潟国際海運とNAFJとの間に利益相反が存在しないこと、すなわち、両者の財産が事実上、同ーのものとして扱われていることが分かる。

 

5 県による監査要求について

 平成28年8月12日、県は、新潟国際海運の事務の執行に関して監査要求をした(資料6-10)。しかし、セオドン社は、一連の経緯に関する情報が、新潟国際海運及び県から十分に開示されないならば、適切な監査は期待できず、真相解明につながらないと憂慮する。主な懸念点は、以下のとおりである。

  1.  県は、新潟国際海運とNAFJが別の存在であることを前提とするようである。しかし、NAFJの実体を調査・把握し、新潟国際海運との関係を明確にしなければ、そもそも監査の前提が覆りかねない。
     現に、県は、NAFJが契約締結に至った過程を監査の対象としながら、実際には、「新潟国際海運株式会社の認識、判断及び関与」の監査を要求している。この点について、NAFJ及び新潟国際海運は守秘義務があったので契約交渉過程や契約内容は、新潟国際海運に対してすら平成28年7月15日まで報告していなかったと説明している(資料6-3・3-4頁)。県がこの説明を信じるならば「新潟国際海運の認識、判断及び関与」を監査しても、「NAFJから報告がなかった」以上の回答は期待できないはずである。(ただし、NAFJのメンバー3人が、いずれも新潟国際海運の取締役であったことは、上述のとおりである。)
  2.  県は、「NAFJ PANAMA INC.が、オハマナ号の検船に関して、試験運航を行わせるべきところ、それを行えない状況のまま、取締役会で契約締結に関する決議を行ったのは何故か。」と問う。しかし、県は、平成27年6月24日の「検船結果意見交換会」で、「韓一カーフェリー1号」という運航中の船舶が候補にあったにも関わらず(資料5-5)、会議の結果、候補船をオハマナ号に絞り込むことにした(資料3-5)。県にとって試験運航が重要であったならば、そもそも同会議での意思決定について検討する必要があるのではないか。
  3.  県は、「速度(18ノット)などの重要事項に関しても問題なしと取締役会に報告したのは何を根拠にしているのか。」と問う。この文章の主語がないので、意味を理解しかねるが、まずは、契約交渉に関係していた個人を特定した上で、誰が誰に何を報告したのかを明らかにすべきではないか。なお、この文章がNAFJのことを指すならば、そのメンバーは、五十嵐氏、E氏及びF氏の3人しかいない。
  4.  県は、「契約に関して、検船時等に確認できなかった速度(18ノット)などの重要事項や、想定されるリスクを回避するための規定を契約書に盛り込むべきであったが、それをしなかったのは何故か。」と問う。しかし、県は、新潟国際海運らと契約締結前及び締結後も、時には数時間に及ぶ会議を重ねてきた。また、NIS・A氏らは、売買契約締結に関する売主及び買主の取締役会決議の送付に関するメールを含め、契約の詳細に関するメールを多数、野呂政策企画員及び古川主任に送信していた。まずは、これらの会議やメールを受け、県の担当者が、いつの時点で、どのような情報を保有していたのかを把握し、それを踏まえて、新潟国際海運にいかなる指導若しくは助言をしていたのか明らかにすべきではないか。
     県は「契約の事実は、締結後に報告があった」と言うが(資料6-11)、セオドン社の手元にある記録からだけでも、契約締結直前までに県の担当者の元に、契約に関する多数の連絡があったことが分かる。また、一連のNIS・A氏のメールを見る限り、県に対して情報を秘匿しようとしていた様子は見受けられない。まずは、県がどのような情報を把握していたか精査した方がよいのではないか。
  5.  県も新潟国際海運も、オハマナ号が18ノット以上の速度を出せないことを当然の前提にしている。しかし、同船は、平成26年4月以降、約1年半に亘り、運航されることもなく、係留されたままの状態であり、船体には牡蠣が付着し、機器類にも錆が見られた。したがって、そのままの状態では、最大出力は実現できない状態だった。しかしながら、ドックに上架して牡蠣を落とし、エンジンの解放点検(オーバーホール)さえすれば、十分な速度を期待できた。
     現に、本件仲裁判断(資料2)でも「被申立人は、当然のことながら、買い受けた後、本船をDrydockに揚げ、船底などの牡蠣落としをし、エンジンをオーバーホールし、機器類も全て整備し、外板の塗装も塗り替えた上で使用する予定であったことは明らかである。」(同13頁)、「本船については、上架して整備をすれば、フェリーボートとして使用できる状態にあった可能性は否定できない。」(同13頁)、「本船船底部の牡蠣の付着は、上架すれば容易にこれを取り除き、船底塗装をやり直すことができるのは業界の常識といえよう。」(同13頁)、「本船が、整備しても船舶として最早使用できる状況になかった、とは考えられない。」(同13頁)と述べている。
     県としても「契約トラブルになった最大の原因は、対象船舶が横断航路運航に必要な速度が出ないことでした」と早合点せず(資料6-1)、まずは、仲裁判断の指摘を真摯に受け止め、同仲裁判断が言及する「業界の常識」に照らし、そもそも新潟国際海運及びNAFJが「必要な速度が出ない」と判断したことが正しかったかを検証すべきではないか。
     なお、セオドン社も、平成27年10月24日、買主がオハマナ号の引取を不当に拒絶したときに、買主に対して専門家等の意見を聞くようにアドバイスしていた(資料5-8・10頁)。

 監査の方法については、監査委員が決定することとは思うが、真相解明のためには、監査の対象を新潟国際海運に限定せず、県(交通政策局及び知事政策局)も対象にする必要があろう。また、県港湾振興課の関係者(特に、山岸課長、小嶋課長補佐、野呂政策企画員及び古川主任)や新潟国際海運の関係者(特に、A氏)のメールの履歴の確認や事情聴取は必須だと思われる。監査委員には、地方自治法第199条第1項及び第6項の権限も行使し、能動的かつ有効な監査を実施することをお願いしたい。

 

6 セオドン社の経済状況

 中古船の取引は、通常、いわゆる「現状有姿」でなされ、取引の対象となる船舶がある場所で引渡しが行われる。しかし、今回の取引については、新潟県という日本の地方自治体が密接に関与していたことから、セオドン社は、例外的に韓国仁川港で係留されていたオハマナ号を広島県呉市の神田造船所まで回航し、そこで引き渡すこととしていた。日本への回航のために、多大な費用をかけて、船舶の修理・整備を施し、行政当局等の許可を取得し、船員を確保しなければならなかった。また、オハマナ号を日本に回航した後も、燃料・物資を補給し、監視の船員を確保し、行政庁の認可を維持し、保険を付けるために、連日、多額の維持費を支出している。
 さらに、セオドン社は、平成27年3月にオハマナ号を28億4千万ウォン(約259万米ドル)で競売で取得した際に、他社から多額の融資を受けており、その返済に苦しんでいる。また、オハマナ号が仁川港を取得した際に、韓国税務当局から多額の課税を受けた。
 このようにして、セオドン社がオハマナ号を取得した後、競落代金以外に支出した費用は100万米ドルを優に上回る。
 平成28年7月5日に出された本件仲裁判断は、買主が船舶の引取りを拒否する意思表示をした段階で、売主は、売買契約を解除しなければならなかったと判断した(なお、このような考え方は、少なくとも我が国の法律上、決して一般的な考え方ではない)。その後、セオドン社は、オハマナ号の新たな買主を探しているが、中古フェリー市場の需要は弱く、買主探しは難航を極めている。しかも、本件仲裁判断は、オハマナ号の価値を220万米ドルと見積もったが、市場が低調な現在、そのような高値で売れる保証はどこにもない。
 しかも、新潟国際海運及びNAFJの要請に従って、オハマナ号を船級がない状態のまま、外国(パナマ)船籍にしたため、諸規制の関係で、セオドン社は同船を韓国へ引き戻すことが事実上できない。そのため、セオドン社は、広島県呉市の神田造船所沖で停泊した状態のまま、オハマナ号を売却するという不利な条件で取引せざるを得ない。
 セオドン社は、零細企業である。本来、入ってくるべき現金収入が閉ざされ、会社の経営は危機的状況である。会社名義で融資を受けることができず、運転資金を確保するために、現在、社長及び従業員が個人的に借金をして、現金をかき集めているが、この状況がいつまで続くか分からない。会社設立以来、誠実に租税公課を支払ってきたが、最近になりその支払いすら滞ってしまっている。
 仲裁で命じられた金銭を早急に支払ってもらうことは、セオドン社にとって死活問題である。セオドン社は、オハマナ号を売却できるまでの間、同船が衝突や沈没、漏油等の海難事故が起きないように、船員を配置して監視体制を敷いている。しかし、このまま仲裁で命じられた金銭が支払われなければ、もはや必要な監視すら困難になりかねない。

 

7 訴訟の可能性

 以上のように本件仲裁判断が命じた金銭は、セオドン社にとって生命線である。しかしながら、仲裁で真実が明らかになったにも関わらず、新潟国際海運及びNAFJは、自らに不利な仲裁判断が出されるや否や、それを殊更に無視し、NAFJを破産させることで債務を逃れようとしている。便宜的に介在させたに過ぎない外国のペーパー子会社を破産させて責任逃れを図ることは、法律以前の問題として、倫理に反し、正義にもとるとも批判されている。しかしながら、新潟国際海運及びNAFJがこのまま債務の支払を拒み、県も筆頭株主としてこの対応について傍観するのならば、セオドン社としては、やむを得ず、新潟国際海運及びその他関係者に対して、更に訴訟を提起せざるを得ない。
 新潟国際海運については、いわゆる「法人格否認の法理」により、NAFJと同等の責任を負うと考えられる(資料7-9)。NAFJの代理人は、明確な根拠を示すこともなく、その適用を否定するようだが、判例は、便宜置籍国の会社の責任について法人格否認の法理の適用を認めており(東京地判平成13年9月28日判例タイムズ1140号227頁)、海商法研究の第一人者である箱井崇史・早稲田大学教授は、判例に照らして、その適用が十分考えられるケースだと意見する(資料7-10)。また、箱井教授は、新潟国際海運が、賠償金額をはるかに超える船舶購入資金を出そうとしていたにも関わらず、同社が「購入資金は出しても、賠償資金は出さない」というのは正義にもとり、法的にも通用しないとも言う(資料7-10)。そして、「パナマ会社を破産させて実質的債務を逃れようとする実質的取引当事者(三セクとこれを支配する県)の対応はきわめて不正義であり、またこのような不当な結果を法律も最終的に認めることはないであろう(あってはならない)」と主張する(資料7-10)。
 仮に、セオドン社が訴訟を提起し、新潟国際海運が争うことになれば、新潟国際海運らは、NAFJというペーパー会社が実体のある会社だということを主張していくことになろう。「パナマの(ペーパー)会社は実体のあるものだ」と強弁するのは、まさにパナマ文書が明らかになったときに、脱税が疑われた企業・個人が取っていたのと同じ便法である。
 また、訴訟の対象は、新潟国際海運だけではない。セオドン社は、NAFJに十分な資金がないにも関わらず、そのことを秘して、欺罔的手法を用いてNAFJとで契約を結ばせるように画策した新潟国際海運や県の関係者に対しても、不法行為による損害賠償請求を検討せざるを得ないと考えている。

 

8 結び

 セオドン社は、買主候補として中東の企業がいたにも関わらず、公益体である新潟県が契約過程に深く関係していることを信用し、こちらの方が安心して取引ができると信じて、今回、オハマナ号の売買契約を締結した。セオドン社は、契約をきちんと遵守したにも関わらず、買主側が不当に引取を拒絶し、紛争が生じたことについて遺憾に思っている。しかしながら、その後、仲裁判断が出されて、真実が明らかになったにも関わらず、新潟国際海運がパナマのペーパー会社を破産させて、債務を逃れようとし、さらには筆頭株主である県がその状況を追認している現実に直面して、驚くとともに、苦境に立たされている。
 上述のとおり、セオドン社にとって、早急に仲裁判断が命じた金銭の支払いを受けることは、会社の存続にとっても、従業員の生活を確保するためにも、死活問題である。
 一方で、五十嵐氏は、自らが杜撰な契約を結んだことを認めており、それが、債務不履行の原因となっていることは明らかである。
 セオドン社は、過ちを犯した者が笑い、正直に行動した者が泣かなければならないという不正義がまかり通る現状を非常に辛く感じている。
 このまま新潟国際海運及びNAFJが仲裁判断を履行しなければ、セオドン社は、新潟国際海運らに対して訴訟を提起せざるを得ない。訴訟となれば、紛争はますます泥沼化し、長期化するだろう。訴訟が長期化すれば、セオドン社は、資金繰りがつかなくなり、破産を申し立てざるを得ない可能性も高い。しかし、その場合も、セオドン社の破産管財人が訴訟を継続するだろうから、紛争は終結しない。
 本件仲裁判断を誠実に履行することこそが、新潟県の負担を最小化する方策である(資料7-9、資料7-10)。箱井崇史教授も指摘するように、最終的に新潟国際海運及び新潟県が訴訟に勝つ可能性は、決して高くない。しかも、訴訟が継続すれば、利息はますます膨らみ(年間約900万円)、負担すべき弁護士費用も増える。しかも、損害は決して金銭面にとどまるものではない。新潟国際海運、さらには同社を実質的に支配する新潟県自身が、形式的な法律論を盾に国際契約や紛争解決手段としての仲裁を誠実に遵守しない者として、国際的信用がますます毀損されることになりかねない。
 残念ながら、NAFJの代理人弁護士は、関係者に対して、本件について訴訟化することを示唆するような助言しているように見受けられる(資料6-3・20-21頁)。しかし、これら弁護士が仲裁の着手金だけで約1,300万円以上の報酬を、NAFJからではなく新潟国際海運から受領したと見込まれること(資料6-8、仲裁関係費用1,580万円のうち日本海運集会所に納付した金額は241万円だけである。)や、ペーパー会社に過ぎないNAFJの破産手続きをパナマで進めるために、パナマの弁護士やそれを仲介する日本の弁護士に、新潟国際海運が多額の報酬を支払わざるを得ないことも勘案していただきたい。
 セオドン社は、自らが、また新潟国際海運や新潟県がこれ以上、傷つくことを決して望んでいない。セオドン社としては、仲裁判断で認められた金銭を早急に支払っていただき、両当事者に実りのない、この紛争を一刻も早く終結させてほしいと願う。セオドン社は、両者が未来に向けて歩み出せる日が一日も早く来ることを期待している。
 ついては、貴議会において、次の事項に配慮されたい。

  1. 新潟県及び新潟国際海運が、日本海横断航路計画に係るフェリー調達トラブルに関する一切の情報を開示すること。
  2. 新潟県が、新潟国際海運に対して、本件仲裁判断が命じた金銭をセオドン社に直ちに支払うように、筆頭株主としての権限を行使すること。
  3. 新潟県が、日本海横断航路計画が早期に実現されるように、早急に事態の正常化を実現すること。

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