ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

平成24年2月定例会(陳情第2号)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0001713 更新日:2019年1月17日更新

第2号 平成24年2月14日受理 建設公安委員会 付託

暴力団排除条例の無効決議を求めること等に関する陳情

陳情者 暴力団排除条例問題研究会 大日本天命塾 塾長 青木和男

(要旨)

 平成23年10月1日、東京都で「東京都暴力団排除条例」が施行され、我が国のすべての都道府県で暴力団排除条例が施行されたことになった。
 我が国は、日本国憲法のもと、法治国家であるが、今、警察官僚は暴力団規制及び排除の世論を画策かつ悪用して、社会及び国民への警察権力及び権益等のますますの拡大を目指すため、立法府の法律制定ではなく、安直な手段で一般国民を利用し、かつ、罰則の対象とし、憲法が国民に保障する権利及び義務条項を侵害する重大な条例を主導的立場で都道府県議会、議員を意のままに操り、非民主的な警察国家権益を完成しつつある。
 暴力団排除条例は、平成4年3月に施行された暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)が基本であり、暴力団対策法の補完的要素を持つ条例である。
 警察官僚は、暴力団排除の世論を必要以上に誘導し、国民の権利の制限及び義務の強要のもと、暴力団及び同構成員らの人権無視、あるいは人権侵害を意に介さず隔離政策を進める。この条例は21世紀の村八分化、否、村十分化であり、差別廃止の世界の常識に抗する21世紀の差別化社会の構築をたくらむものである。
 この警察官僚の独善主義的施策による差別化、若しくは阻害することにより、暴力団及び同構成員らに代わり、権力及び権益の確保ができる。当暴力団排除条例問題研究会は、警察官僚の条例制定の意図を憂い、公正な運用が可能であるかを危惧(きぐ)する。
 暴力団は法律的に結社を否定された非合法団体ではなく、法律的に認知された団体であり、法律に違反する行為を除き、構成員らの基本的人権を規制又は侵害することは、人権擁護の上からも看過できない。近代社会の理念は非差別化、差別撤廃を人類の重要な施策とするが、今、我が国は世界の常識、世界の良識に逆行する差別化を推進する条例を国家権力で制定した。
 当暴力団排除条例問題研究会は、次の問題点を列記し、この条例施行後に公安委員会及び警察職員の恣意(しい)的判断による弊害執行による人権侵害等を阻止するため、各都道府県議会に対し、暴力団排除条例を廃止する条例の制定を求める。
 また、かりに暴力団排除条例に代わる法律が必要であれば、立法府での「暴力団排除に関する法律」の可否を含め、慎重な条項審議を経た法律の制定を求める。

(1)暴力団排除条例の制定権と暴力団対策法の問題について

 暴力団排除条例は平成4年3月に施行された暴力団対策法が基本法であり、暴力団対策法の補完的要素を持つが、憲法の保障する国民の権利及び義務を都道府県条例で制限若しくは強要する法令であり、当暴力団排除条例問題研究会は、許容し看過することはできない。
 都道府県の暴力団排除条例の制定権については、憲法第35条(住居侵入、捜索、押収に対する保障)の国民への保障に対する暴力団排除条例の違反条項があり、条例制定権の存否のみならず、同条例自体の無効にかかわる重大な問題である。
 すなわち、公安委員会及び警察職員の恣意的判断に基づく、違反者の施設への立ち入り、帳簿等の捜索である。
 さらに、都道府県の条例の制定は、憲法第94条の権能として、及び地方自治法第14条の条例制定権に基づき地方自治法第2条第2項の規定を適用する。
 暴力団排除条例の制定趣旨は、公共の秩序及び住民の安全の保持規定を適用の根拠とするが、地方自治法第14条の権原となる同法第2条第2項の事務規定の権限逸脱の危惧を抱かざるをえない。同条例の制定は憲法及び地方自治法に抵触しかねない条例ではないか、との疑念を抱く。
 よって、当暴力団排除条例問題研究会は、暴力団排除条例を廃止し、立法府での法律化を目指すべきであると提言する。

(2)暴力団排除条例の安直な制定経緯について

 暴力団排除条例の安直な警察官僚主導の制定過程を東京都の例で見ると、下記のとおりである。
 本来、条例は地域的特殊性のある事象の場合に制定するべきであり、暴力団排除に関しては立法府で法制化の可否を含め慎重審議の上、必要であれば法律化すべき案件である。
 平成22年11月15日の東京都議会警察消防委員会で、警視庁種谷総務部長が事務事業の説明の中で、東京都暴力団排除条例の制定に向けた取組に言及したことが初めである。
 同年12月7日東京都議会定例会で、池田警視総監が1名の議員の質問に答弁する。
 同月30日石原慎太郎東京都知事が所信表明の中で、暴力団排除条例の制定の準備に触れ、速やかに議会に提案すると約束した。
 その後、平成23年2月4日の東京都議会警察消防委員会で、警視庁種谷総務部長が暴力団排除条例案を提示し、8分ほど概略説明があり、同月8日池田警視総監が2分ほど言及した。
 同年2月15日及び17日の第1回定例会で民主党、自由民主党及び公明党らの4名の議員と池田警視総監との質疑が行われたが、議員の暴力団排除条例の本質に対する認識が希薄で、委員会及び定例会を含め延べ質疑時間は60分ないし90分程度の迫力に欠ける内容であり、まして修正提案すらない寂しい状況である。
 東京都議会ですら、この程度の質疑でお茶を濁す粗雑さであり、他の道府県の制定過程も十分推測できる。

(3)暴力団排除条例の恣意的判断と運用の危惧について

 暴力団排除条例に限らず、法令も制定時の趣旨は立派であるが、運用する機関、あるいは執行者の恣意的判断で運用の限度を拡大し、濫用する例が多い。暴力団排除条例の運用の問題を集約すれば、公安委員会の執行権限は刑事訴訟法第218条(令状による差し押さえ、捜索、検証)、同法第199条(逮捕状による逮捕)等を準用規定とすべきで、国家公安委員会等の違反者に対する措置権限を抑制すべきである。
 現状の公安委員会の実態では、刑事訴訟法を排除した捜査権を警察職員に付与し、家屋施設の立ち入り、帳簿書類外の検査権、強制的事情聴取が行われることは絶対にあってはならない。もちろん、警察職員の検査、尋問等は犯罪捜査ではないと明文化するが、違反者の任意性を確保する保証がない。
 公安委員会は、違反者に対し、勧告又は命令を行わず逮捕・勾留(こうりゅう)することはなく、まず、報告若しくは資料の提供を求め、又は、勧告若しくは命令を行い、なお違反行為が連続する場合には、逮捕・勾留もあると解釈できるが、刑事訴訟法を準拠すべきである。

(4)公安委員会の独立機構の確立と透明性の確保について

 国家公安委員会の法的根拠は、警察法第4条ないし第14条に規定するごとく、その任務及び所掌事務は広範多岐にわたり、5名程度で組織する委員会での処理は、完全に不可能である。しかも、委員会事務所は警察庁であり、同委員会の庶務は警察庁にて処理する。
 都道府県公安委員会は同法第38条ないし同法第46条の2に規定があり、国家公安委員会と全く同様である。
 例えば、東京都公安委員会は、同委員会の事務の警視総監等への委任に関する規則を制定(法令化)し、同会の機能を丸投げにし、警視庁の一機関、一部局に成り下がったと認識せざるをえない。
 暴力団排除条例の違反者に対する措置等は、警察御用たし委員若しくは「おんぶにだっこ」の公安委員会では、公正な運用を保持する保障はなく、執行の透明性も担保されない。まして、この公安委員会が警察職員に執行権限を付与する危険を回避できない。
 少なくとも、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の第27条ないし第44条で規定する公正取引委員会のごとく、独立性と透明性ある機構にすべきである。
 各都道府県の暴力団排除条例制定の議会質問、あるいは審議等で、当暴力団排除条例問題研究会が抱く危惧に気づく議員がいないことは、いかに粗雑な安直な法令であるかが認識できる。

(5)警察官僚の天下り、再就職の規制について

 暴力団排除条例の施行に伴い、今後、警察機構と一般企業の癒着がますます進み、条例の対象企業等への警察官僚の天下り、警察職員の退職後の再就職の道を開くものである。
 この権益確保のため、警察官僚が暴力団排除を画策する理由がある。企業が警察定年退職者を雇用することで、暴力団排除条例の履行義務の免除、あるいは責務免責を得ることになる。
 国家公務員法第106条の2は、同公務員らの再就職を間接的に規制するが、地方公務員には規制が無い。そのため、多くの企業へ警察職員たちが再就職している。
 警察官僚の意図は、まさに国民の犠牲の上に、暴力団等の勢力に替わり社会全般に浸透する警察王国の構築が目的であり、現に具体的に進行しているのが現状である。
 ついては、貴議会において、地方自治法第2条第16項「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。」、第17項「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする。」の規定により、憲法違反の「暴力団排除条例」の無効決議を求めるとともに、「暴力団排除条例」の必要性が存在しているのであれば、法律としての制定に向けた意見書を国に提出されたい。

平成24年2月定例会(請願・陳情)へ
新潟県議会のトップページへ