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平成21年12月定例会(陳情第11号)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0001351 更新日:2019年1月17日更新

第11号 平成21年9月8日受理 厚生環境委員会 付託

改正貸金業法の早期完全施行等を求める意見書提出に関する陳情

陳情者 新潟県弁護士会 会長 和田光弘

(要旨)

 我が国では、消費者金融の利用者は1,000万人を超え、クレジットカードの発行枚数はおよそ3億枚、消費者信用残高は70兆円を超え、家計の最終支出に占める消費者信用の割合は4分の1に上る。
 このような中、多重債務問題が深刻化している。3社以上の消費者金融から借り入れがある利用者は300万人、200万人以上が3か月以上にわたって返済が滞り、個人の自己破産申立件数は、ピーク時の2003年には約24万件、最近でも14万件に及ぶ。過酷な取り立て、多重債務を苦にした夜逃げ、自殺が後を絶たない。
 これら深刻な多重債務問題の大きな要因となってきたのがクレジット、サラ金、商工ローンなどの貸金業者の高金利、過剰与信、過酷な取り立て及び大量宣伝などである。
 日本弁護士連合会及び当会は、上記被害を救済すべく、諸団体と連携し、幅広い国民的な運動を繰り広げてきた。世論、政府を動かし、最終的に、2006年12月、貸金業界等の抵抗にもかかわらず、貸金業法の画期的な改正という大きな成果を上げた。
 政府も多重債務問題の深刻さを認識し、多重債務者対策本部を設置し、同本部は、多重債務相談窓口の拡充、セーフティネット貸し付けの充実、ヤミ金融の撲滅、金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。そして、現在では多くの自治体も多重債務問題に取り組み、官民が連携して多重債務対策を実施した結果、多重債務者が大幅に減少し、3008年の自己破産者数も13万人を切るなど多重債務対策は確実に成果を上げつつある。
 そして、いわゆる出資法の上限金利の引き下げ、収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを含む改正貸金業法が完全に施行されれば、貸金業者の高金利、過剰与信等が是正され、政府、自治体の多重債務対策も相まって、多重債務問題はさらに改善されることになる。
 他方、一部には、消費者金融の成約率が低下しており、借りたい人が借りられなくなっている、特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより、資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加しているなどと殊さら強調して、改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調がある。
 しかしながら、1990年代における山一証券株式会社、株式会社北海道拓殖銀行の破綻(はたん)などに象徴されるいわゆるバブル崩壊後の経済危機の際は、貸金業者に対する不十分な規制のもとに商工ローンや消費者金融が大幅に貸し付けを伸ばし、その結果、1998年には自殺者が3万人を超え、自己破産者も10万人を突破するなど多重債務問題が深刻化した。
 改正貸金業法の完全施行の先延ばし、金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は、再び自殺者や自己破産者、多重債務者の急増を招きかねず許されるべきではない。今、多重債務者のために必要とされる施策は、相談体制の拡充、セーフティネット貸し付けの充実及びヤミ金融の撲滅などである。
 ついては、貴議会において、今般設置される消費者庁の所管ないし共管となる地方消費者行政の充実及び多重債務問題が喫緊の課題であることも踏まえ、多重債務問題解決のため、次の事項を内容とした意見書を国に提出されたい。

  1. 自治体での多重債務相談体制の整備のため、相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
  2. 個人向けのセーフティネット貸し付けをさらに充実させること。

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