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平成18年請願第5号

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0002411 更新日:2019年1月17日更新

第5号 平成18年6月23日受理 産業経済委員会 付託

出資法の上限金利の引き下げ等、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正を求める意見書提出に関する請願

請願者 新潟県労働者福祉協議会 会長 江花 和郎

紹介議員  木村一男君 帆苅謙治君 斎藤喜和君 塚野 弘君 長部 登君 桝口敏行君 米山 昇君 小山芳元君
                大渕 健君 竹山昭二君 杉田弘美君 佐藤信幸君 市川政広君 近藤貞夫君 佐藤浩雄君 松川キヌヨ君
               青木太一郎君 宮原典子君 志田邦男君 五十嵐完二君 内山五郎君

(要旨)

 近年の自己破産申立件数は、平成14年に20万件を突破して以来、平成15年24万件、平成16年21万件と依然として20万件台という高水準にある。その多くは、消費者金融・キャッシング・商工ローンなどで多額の債務を負い返済困難に陥った多重債務者や中小零細事業者で、リストラ・倒産による失業や収入減、生活苦、低所得などを理由とする「不況型」、「生活苦型」自己破産が大半を占めている。
 また、警察庁の統計によれば、平成16年度の経済的理由による自殺者は7,947人にも上り、さらにこの多重債務問題が、ホームレス、一家離散、配偶者間暴力、児童虐待、校内暴力、強盗や殺人等、様々な事件を引き起こす要因になることが多く、もはや社会問題と言わざるを得ない。
 多重債務者を生み出す大きな要因の一つに高金利が挙げられる。現在、消費者金融・キャッシング・商工ローン等の貸金業者に認められている出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)の上限金利は年29.2パーセントであるが、平成15年7月、貸金業の規制等に関する法律(貸金業規制法)及び出資法の一部改正法制定の際、同法施行後3年をめどに見直すこととされ、その時期は平成19年1月とされている。すなわち、平成18年の国会でこの問題が取り上げられることとなり、法改正に向けて本年は極めて重要な時期に当たる。
 現在、我が国の公定歩合は年0.10パーセント、銀行の貸出約定平均金利は年2パーセント以下という超低金利の状況下であるにもかかわらず、年29.2パーセントという出資法の上限金利は異常なまでに高金利である。
 金融広報中央委員会が実施した世論調査によれば、平成17年における貯蓄のない世帯の比率は23.8パーセントを占めるなど、いまだ一般市民には生活の豊かさが感じ取れない。年収が200万円、100万円台であったり、多くの人がパート労働・契約社員等で収入の安定が確保できない環境にさらされているのが実情である。突発的な資金需要、病気・けが等により働き手に何かあれば借金をせざるを得ず、出資法上の異常なまでの高金利で借入れをすれば、だれでも家計を圧迫し返済困難に陥るのは目に見えている。
 多重債務問題の抜本的解決のためには、リストラ・倒産による失業や収入減等、厳しい経済情勢の中であえぐ一般市民が安心して生活できる消費者信用市場の構築と、家計の破綻(はたん)が容易に想像できる今の高金利を是正させ、出資法の上限金利を少なくとも利息制限法の制限金利まで早急に引き下げることが必要である。
 一方、貸金業規制法第43条は、債務者が利息制限法の制限を超える利息を任意に支払った場合に、貸金業者が法定の契約書面及び受取書面を適切に交付していた場合に限り、これを有効な利息の支払とみなすと規定している。いわゆる「みなし弁済」と呼ばれる規定である。
 しかし、厳格な条件を満たした場合に認められるとはいえ、この利息制限法の例外を認める「みなし弁済」規定の存在こそ貸金業者の利息制限法違反金利での貸付けを助長し、多くの多重債務者を生み出しているのである。すなわち、強行法規である利息制限法の制限金利が年15パーセントから20パーセントとされ、これを超えた利息は民事上は無効であり、返済義務がないとされているにもかかわらず、出資法の上限を超えない限り罰則の対象とならないことから、大手を含むほとんどすべての貸金業者は年25パーセントから29.2パーセントの約定金利で貸付けを行っている。
 そもそも民事上無効であるはずの高金利による営業が許されていること自体が問題であり、このことが多重債務問題の最大の要因であると言っても過言ではない。現実には同条の「みなし弁済」を認める条件を満たした営業を行っている貸金業者は皆無に等しく、債務整理や訴訟においては利息制限法に基づいて債務額を確定し、過払金があれば債務者に返還することが実務の常識でさえある。
 また、利息制限法は経済的に弱い立場に置かれた人々を暴利取得から保護することをその立法趣旨とする強行法規であり、その例外として暴利取得を認めるような貸金業規制法第43条は、その立法趣旨に反し、また、資金需要者の利益の保護を図るという貸金業規制法自体の目的規定とも相入れないものと言える。
 司法の場においては、昨年12月15日、最高裁判所は本来無効であるいわゆるグレーゾーン金利が有効と認められる例外について厳格に解釈すべきとの判断を示し、本年1月13日には、明らかな強制だけではなく、事実上の強制があった場合も、上限を超えた分の利息の支払いは無効とする画期的な判断を示した。両判決の意味するところは、あらゆる貸金業者の貸付けに「みなし弁済」が成立しないということであり、もはや、貸金業規制法第43条の存続意義は認められないと言える。したがって、「みなし弁済」が成立しない以上、貸金業規制法第43条は出資法の上限金利の引下げに伴い撤廃すべきであると考える。
 同様に、出資法附則に定める日賦貸金業者については、その返済手段が多様化している今日において、集金による毎日の返済という形態の必要性が失われていること、また、厳格に要件を守らず違反行為が横行し悪質取立ての温床にもなっていること等から、その存在意義自体を認める必要はなく、1月24日、最高裁判所でも利息制限法を超える超過利息分は無効とする判断を示したことも考慮すれば、日賦貸金業者に認められている年54.75パーセントという特例金利は直ちに廃止すべきである。
 また、電話加入権が財産的価値を無くしつつある今日、電話担保金融の特例金利を認める社会的・経済的需要は極めて低く、この年54.75パーセントという特例金利も直ちに廃止すべきであると考える。
 ついては、貴議会において、次の事項を内容とした意見書を国に提出されたい。

  1. 出資法第5条の上限金利を、利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること。
  2. 貸金業規制法第43条のいわゆる「みなし弁済」規定を撤廃すること。
  3. 出資法における、日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること。

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