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平成17年陳情第19号

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0003807 更新日:2019年1月17日更新

第19号 平成17年12月2日受理 厚生環境委員会 付託

県立看護大学長の職務命令の不当等に関する陳情

陳情者

(要旨)

 平成17年7月19日付けで学長より陳情者に対して職務命令が出された。その内容は、(1)平成17年7月19日から平成18年3月31日までの間、本学において母性看護学教授として担当しているすべての教科目に関し授業を行わないこと(2)平成17年7月19日から平成18年3月31日までの間、A、B及びC3名の助手に対し、新潟県立看護大学の学長又は学生部長が承知した場合を除き、理由及び手法のいかんを問わず、母性看護学教授として命令、指示又は指導等の権力的行為を行わないことである。
 職務命令が発令された経緯は、平成17年5月9日、大学の母性看護学教室に所属しているA助手、B助手及びC助手は、同大学セクシャルハラスメント委員会所属のN助教授に対して、陳情者が上記ABCの助手3名に対して「助手は教授を敬い従え」などと言うために、上記ABCの助手3名が精神的なストレスを受けた。また、上記ABCの助手3名が平成16年9月には陳情者の能力不足を感じて侮べつ的態度を取らざるを得なかった、これ以上「無能な教授についていけない」などと訴えた(以下、上記ABCの助手3名の訴えを本件という)。
 N助教授は、本件を学長に報告した。これを受けて学長は、同年5月16日教授会に県立看護大学教員に関わる特異な事案の防止等に関する取扱要綱の議案を提出し、議案は可決成立した。
 学長は、この要綱に基づいて本件に関する調査を進めた。同要綱に基づいて設置された調査委員会は、同6月13日及び21日上記ABCの助手3名から事情を聴取した。
 学長は、上記調査委員会の報告を受けて7月19日に上記の職務命令を発令した。
 本職務命令の内容は、陳情者から助手や学生に対する教育指導を長期間にわたって奪うものであり、懲戒処分の一つである停職と異なることがない。本職務命令にはその必要性、相当性がまったく認められない。したがって、本職務命令は実質的には懲戒処分である。ところが、本職務命令は学長の独断で実施されており、陳情者は全く何の弁明をする機会も与えられなかった。以上からすれば、本処分は教育公務員特例法第9条、日本国憲法第31条に違反するものである。
 さらに、入学時のオリエンテーションで、陳情者の担当科目が提示され、実質的に学生との契約が成立していた。その契約を遵守せずK学生部長から学生に一方的に陳情者を担当科目から外すという話だけであった。
 陳情者には教育をする義務があり、教授としての責務を剥奪(はくだつ)された。
 本職務命令は裁量権の逸脱若しくは濫用に該当し違法である。
 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用能力を展開させることを目的とするものである(学校教育法第52条)。そのため陳情者の大学教員には、学問の自由が憲法上の基本的人権として保障されている(日本国憲法第23条)。そして、大学教授として学生及び助手に対する教育指導は、研究活動と並んで学問としての中核をなすものである。したがって、その教育指導についても当然に学問の自由の保障が及ぶものである。仮に学長が、陳情者に対して職務命令を発して陳情者の職務を制約することができたとしても、陳情者には学問の自由の保障が最大限に保障されるのであるから、その制限は必要最小限度の制約でなければならない(日本国憲法第13条)。
 上記ABC助手3名の訴えの内容は、大要次のとおりであった。(1)助手は教授である陳情者の許可がない限り研究費の使用を認められない(2)助手の論文は陳情者が確認しない限り外部への提出を認められない(3)陳情者の研究費の使い方がおかしい(4)陳情者が助手に対して「助手は教授を敬い従え」などと口うるさいことを言っていた。
 しかし、(1)(2)については一般に大学教授の慣例としてなされていることであり、陳情者のみがしていることでは全くない。(3)についてもそもそもそのような違法と指摘される事実はない(違法でないことは大学の事務当局も認めていた)。(4)に関しては、陳情者が上記ABCの助手3名にそのような事実を述べたこと自体ない。
 以上からして、上記ABC助手3名の訴えの内容は、そもそも前記要綱第2条の(1)交通事故等刑法上の事案(2)不適正な教育・研究活動(3)教員に関するハラスメント(4)その他教員に関する不祥事、いずれにも該当しないものである。したがって、職務命令をすること自体の必要性を認められない。
 なお、仮に陳情者がABCの助手3名に対する対応に何らかの問題点があったとして、上記ABCの助手3名と陳情者とに注意を促して人的な関係を改善すれば足りるのであって、本職務命令のように上記ABCの助手3名との接触を禁ずることは相当性に欠けている。まして、上記本件と全く関係のない学生に対する講義を全面的に禁止することは処分の相当性に欠けると言わざるを得ない。
 以上のことから、本職務命令の必要性・相当性は全く認められず、本職務命令は違法である。
 陳情者は、平成14年4月以降大学の教授として母性看護学領域の教育活動及び研究活動に従事してきた。陳情者は、母性看護学の教育・研究に情熱を傾けてきた。この陳情者の学問、教育活動、研究活動は日本国憲法第22条第1項及び第23条によって最大限に保障されなければならないはずである。
 ところが、上記教育活動・研究活動は、本職務命令によって全く不可能になってしまっている。例えば、(1)陳情者の現在行っている学長特別研究費に基づく研究は当大学学生の協力が不可欠であるが、学長の本職務命令に伴って学生との接触が事実上禁止されてしまったためにデータ収集が不可能になってしまった(2)また、学生に対する一切の講義ができなくなってしまったために、陳情者自身の生きがいとも言える学生に対する教育活動ができなくなり、陳情者のプライドもずたずたに傷つけられてしまった。しかも、陳情者が授業をしなくなったために、学生に対する授業は助手や非常勤講師が担当しているが、学生との契約に違反しており、その場しのぎの授業になっていることは明白である。また、講義のレポート課題の採点も講義をしないK学生部長が課題の要点も分からないで採点し、科目の評価を出していたことから、学生は多大な損害を被っていることは明白である(3)さらに、本職務命令の影響で陳情者は、Y教授から学長特別研究の共同研究をすることを断わられた。また、既に決定していた新潟県看護職員臨地実習指導者養成講習会(厚生労働省から各県に委託されている事業)の講師も何の理由もなく外されてしまった。また、陳情者が顧問をしていた学生の自主サークルもK学生部長より強制解散に追い込まれた。このように、本職務命令は、本来制限することのできない陳情者の活動に事実上の制約を与えてきている。
 以上、陳情者は、憲法に認められた教育活動、研究活動の機会を事実上奪われている。これが重大な損害であることは明白である。
 なお、本職務命令は、上記ABC助手と陳情者との人間関係をめぐるトラブルがきっかけとなって発令されたものである。この背景には、平成17年1月にA助手の採用面接で学長より陳情者はA助手の面接に来なくてもよいと言われたという事実がある。通常、教授のかかわる領域の助手を採用する際には教授が面接に加わるのが通例である。さらに、平成14年1月より陳情者は、学長のパワー・ハラスメントをずっと受け続けている。
 既に平成17年度9月より平成18年度の教育活動の準備(授業準備、実習要綱の検討・印刷、シラバス作成、ゲストスピーカー計画等)が必要であるが、職務命令発令後から学長とK学生部長から陳情者が提出する計画にストップがかかっている。職務命令が平成18年3月31日までとなっているが、平成18年4月以降の教育活動の準備が実質できない状況である。
 これは、学長の職務命令と言いながら実質上の懲戒解雇と同等であり、陳情者の退職を強要しているとしか考えられない。
 ついては、貴議会において、次の事項について配慮されたい。

  1. 職務命令の権限が逸脱しているので、職務命令書の執行を停止すること。
  2. 担当科目の講義を外部の非常勤講師が行っており、平成17年度予算で計上されていなかった非常勤講師料金の支払をしている。担当科目から外されなければ外部講師が講義をすることもなく、非常勤講師料金を支払う必要もなかった。学長の自費での支払いをすること。
  3. 平成14年4月から県立看護大学が開講し、平成18年3月までは文部科学省への申請どおりに(大学設立準備室の段階)実施しなければならない(大学完成年度まで、開学から4年間は文部科学省の縛りがある)。陳情者が担当科目から外されることによって、完成年度が4年間で終了しなくなることを避けること。
  4. 文部科学省に申請された陳情者の担当するすべての授業科目から外され、学生への信用も失墜したのでその信用を回復すること。
  5. 厚生労働省から各県に委託されている看護職員臨地実習指導者養成講習会で、陳情者が講師になっていたが職務命令によってその講義・実習指導を剥奪され、新潟県内の看護職員臨地実習指導者要請講習会へ職員を派遣した病院への信用を失墜させられたのでその信用を回復すること。

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