本文
第23回障害者芸術文化祭(文芸部門)の作品
文芸作品は、短歌20作品、俳句31作品、川柳30作品、自由詩30作品もの応募がありました。
いずれも、作者の皆さんの思いが込められた素晴らしい作品ばかりです。
入賞作品は下記をご覧下さい。
短歌部門
県知事賞
- 作者 かじさ
- 作品 白バラの 花びら揺らす 夏風よ 香りを我に 届け過ぎ去る
- 審査員コメント
上句は薔薇に焦点を当て、しかも第三句を「夏風よ」で切っています。下句は香りと、香りを運ぶ風に焦点が移動し、きれいに一首をまとめています。見て、香りを感じている「我」が、さりげなく出てくるところも巧みです。
審査員特別賞
- 作者 佐藤 寧治
- 作品 杖ついて 表に出れば 風の道 山へと伸びる 風になりたし
- 審査員コメント
風はどこにでも吹くけれど、「風の道 山へと伸びる」は地形を風の吹き方で把握していて、良い表現です。おそらく長く住んでいるから可能な表現なのだと思います。結句の「風になりたし」もすばらしい表現で、説得力があります。
俳句部門
県知事賞
- 作者 三浦 和子
- 作品 恙なく 百寿も過ぎし 夕端居
- 審査員コメント
百寿、百歳を過ぎた作者の端居。越し方を思えばいろいろなことがあったことでしょう。少し涼しくなった夕方の縁側に座ってそんなことを思っている、作者のしみじみとした風情が見えてきます。百年の人生を「恙なく」と言い切ったところに、作者の自らの人生への思いが力強く現れていて胸を打つ一句です。
審査員特別賞
- 作者 論
- 作品 にょきぽんと 蕗顔を出す 土手の道
- 審査員コメント
春の爽やかな風の中、土手を歩いていてフキノトウを見つけたのですね。土手に「にょきぽん」と音を立てて顔を出したと感じた、感性は素晴らしいものがあります。確かにフキノトウが生えるときはそんな感じがあります。来春にはぜひそんなフキノトウを確かめてみたいと思います。
川柳部門
県知事賞
- 作者 中村(明人)
- 作品 満月に 月のうさぎが もちつきだ
- 審査員コメント
「満月に 月のうさぎが もちつきだ」今年はこの川柳作品を県知事賞、最優秀作品に選びました。「月のうさぎ」地球から見えるうさぎの部分は月の海に当たるそうです。その月の海のうさぎが、おもちつきをする、近年の米不足の問題から、ようやく新米が出廻る季節になりました。この新米で月の海のうさぎさん達が、楽しそうにおもちつきをしている様子が良く見えました。おめでとうございます。
審査員特別賞
- 作者 渡辺 幸榮
- 作品 さわやかな 波紋を作る 良い噂
- 審査員コメント
「さわやかな 波紋を作る 良い噂」優秀作品には此の作品を選びました。「さわやかな波紋」の表現が静かなさざなみの様に感じられています。良い噂、反語は勿論悪い噂ですが、人は皆、悪い噂は聞きたくありません。速やかにシャットアウトしたいものです。ミントの香りの様な良い作品になりました
自由詩
県知事賞
- 作者 桐坂 波音
- 題名 Synonyms(シノニムス)
- 作品
生きることとは到底 解答など出る筈もなきこと分かりながら
夕暮れの線路沿い人並みをぼんやり 眺め考えていた
とりとめもなく 過ぎゆく時間忙殺の果てに 生み出せしもの
今の私には それに気付く情緒は残っていますか
風に尋ねども吹き抜けるばかり
虹に尋ねども解答は知れぬ
きっと それは私が跡求むことに 意味があるのでしょう
それは 咲き誇りし一輪の花の如く凛々しくあり
誰にも負けぬような強さがあるのでしょう
そして 雨上がりの空に似た美しさも また 感ぜられ
光だけが 作りうる色彩こそが すなわち 解答でしょう
そんな 神秘に似た何かなのでしょう - 審査員コメント
「生きることとは」というストレートな冒頭から始まり、街行く人々を眺めながら内省するつぶやきのリズムとイメージの広がりが詩的な魅力につながる作品でした。冒頭の強い問いに、しかし「解答」が既存のものとして他者から与えられるわけではなく、自身が求めるところに意味があり、光があり、「色彩」が作られるとする作者。生きることへの迷いを超えて、しっかりと信じられる何かをつかんだ肯定的な強さが光る一作でした。
審査員特別賞
- 作者 kao
- 題名 ガラスのドーム
- 作品
過去のヘドロみたいな気持ちとか夏空みたいな晴れた気持ちとか
色々に彩られた気持ちを全部ガラスのドームに入れてそれを振ってみる
全てはキラキラと光の粒子となりただ輝やいて
それを持つ手は、今を生きているわたししっかりとそれを握りしめ
煌々と光る太陽に向けて、透かして見るドームの光の向こうにはわたしの未来が見え
ただの希望がキラキラ揺れていた - 審査員コメント
生きていくことは様々な「気持ち」に翻弄されることでもありますが、kaoさんはネガティブなものもポジティブなものも「全部ガラスのドームに入れ」「振ってみる」ことで魔法のようにそれを生の輝きに転換してしまいます。過去を受け入れ、思い出を美しく意味付けするだけに終わらず、「それを持つ手は、今を生きているわたし」と希望をもって未来へ歩もうとする言葉たちがまぶしく映りました。





