イセエビ(十脚目イセエビ科)

イセエビ(背面)
水産海洋研究所撮影
頭胸甲長(正中線上)74.0mm 頭胸甲幅(最大幅)55.3mm
体長(頭胸甲前端~尾節後端)22.0cm 体重327.4g オス
特徴
学名:Panulirus japonicus
- 頭胸甲は円筒形に近く、背面には大小の棘があり、後半部の棘は小さい。前額板には前縁近くに1対の大棘がある。
- 腹部各節に短毛が密生する横溝が甲背から甲側面にのびる。第2~4節の横溝は甲側面では前方に向く。
- 腹部に白色の点は散在しない。第1触角の鞭状部は褐色で、白色横帯は無い。
採捕の状況
- 日時:令和元(2019)年9月2日
- 場所:佐渡市相川大間地先 水深12~13 m
- 漁法:刺網
分布など
太平洋,インド洋などに広く分布し,特に日本沿岸に多いとされる。日本では主に千葉県以西の瀬戸内海の一部を除く本州・四国及び九州全域から沖縄に至る外洋の影響を直接受ける岩礁地帯に生息し,日本海では山陰地方西部で時おり獲れるものの,それ以北での採捕はごく稀。(池田ほか 2025)
その他
- 本標本は、頭胸甲が円筒形で側縁が張り出さない、腹部各節に1本の横溝がある等の特徴から、イセエビ科イセエビ属Panulirusに属します。さらに、本標本は、(1)触角板の前縁に1対の大棘がある、(2)腹部各節に横溝があり、第2~4節の横溝は側面では前方に向く、(3)腹部に白色の点は散在せず、第1触角の鞭状部は褐色で、白色横帯は無いなどの特徴を持ち、イセエビの特徴と一致します(林 1995, 三宅 1982)。したがって、イセエビPanulirus japonicusと同定しました。
- 本標本は、第5歩脚の先端部の形状や、第5歩脚基部に生殖口があることなどから、オスと判断されました。
- 日本海産のエビ類各種の記録を包括的に報告した本尾(2008)によれば、これまで島根県以東(北)の日本海でイセエビが採捕された記録があるのは、京都府、石川県、新潟県、秋田県の4県のみです。ただし、秋田県では1979年12月27日に男鹿市で生け捕られたとされているものの、写真や記載は無く、サイズなども不明で(竹内 1987)、採捕記録としては情報不足です。一方、新潟県では、2003年7月3日に出雲崎町尼瀬沖150mの水深5~6mに設置されたサザエ用刺網でイセエビ1尾(体長20.5cm、体重305 g)が採捕された記録がありました(本間・青柳 2004)。佐渡相川地先で採捕された本標本は、新潟県における2番目の記録であるとともに、証拠に基づく日本海における分布上の北限記録として重要な意味を持つと考えられます。
- なお、2019年には7月5日に、石川県輪島市沖約1kmの岩場に設置したサザエ網に体長37cm(体重2kg)と25cm(800g)の2尾が採捕されたことが報道されています。
- 本標本は、当所佐渡水産技術センターを通して、9月3日に新潟市の本所に活エビとして持ち込まれました。その後、本所の水槽内で飼育を続けていましたが、4回の脱皮を経て2024年2月に死亡しました。
- 本標本については、2020年6月6日に佐渡市戸地地先で採捕されたイセエビとともに、新潟県水産海洋研究所研究報告第10号(池田ほか 2025「佐渡島で採捕されたイセエビの記録とかけ流し海水による飼育結果」)にて詳細に報告しました。その後県内では、2024年11月に上越市柿崎地区で約500グラムのイセエビが採捕されたこと(上越タイムス 2024年11月13日)、2025年2月に佐渡市小木琴浦の海岸でイセエビ3尾が打ち上げられていたこと(新潟日報 2025年2月2日)が報道されています。
(池田 怜)
「持ち込まれた魚(3)」(平成27年3月以降)へ
「持ち込まれた魚の一覧」へ戻る