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当所では、きのこの廃菌床の利用可能性について研究しています。
廃菌床は、おが粉等に栄養を添加し、ビンや袋に詰めて栽培する菌床きのこの収穫後に排出される菌床(培地)のことを指します。廃菌床の一部は、畑の土壌改良材や家畜の敷料等に再利用されていますが、その多くがお金をかけて、廃棄物として処分されています。
廃菌床にはおが粉や栄養材として添加されたふすま(小麦ぬか)、米ぬかなどの栄養分が残っているほか、資材高騰の影響もあり生産コスト低減を図るためにも、廃菌床の有効利用方法が求められています。
本稿では、県内で生産量の多いエノキタケの廃菌床を利用したエノキタケとナメコ菌床栽培の結果を紹介します。
エノキタケ栽培では、スギおが粉をエノキタケ廃菌床で置き換えて試験を行いました。また、ナメコ栽培では、コナラおが粉をエノキタケ廃菌床で置き換えて栽培試験を行いました。
なお、置き換えに使用したエノキタケ廃菌床は県内生産施設で排出されたコーンコブミール(トウモロコシの穂芯を粉砕したもの)を材料としたものです。
まず、エノキタケは、スギおが粉の10から50%を廃菌床で置き換えても、減収せず、わずかに増収もしくは廃菌床を入れない通常の培地と収量がほぼ変わりませんでしたが、70、80%を置き換えると減収しました(表)。エノキタケにとってスギおが粉はほぼ栄養源としてではなく、水分を蓄える構造として使われます。このため、スギおが粉を分解が進んだ廃菌床で置き換えることで廃菌床からの栄養供給により増収すると予想していましたが、増収効果はありませんでした。
次にナメコは、コナラおが粉の10、20%を廃菌床で置き換えると増収しましたが、30%以上で置き換えると減収しました(表、写真)。
エノキタケ廃菌床はエノキタケ、ナメコ栽培ともに少ない量であれば有用な資材になることがわかりました。
表 廃菌床置き換え率と収量の結果
写真 置き換え率によって収量が大きく異なるナメコ
試験研究へ廃菌床を提供いただいた、きのこ生産者の皆様にはこの場を借りて感謝申し上げます。
本試験結果が生産現場でのコスト低減の一助となればと考えています。
きのこ・特産課 清水 達哉