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森林研究所の試験研究課題は、森林・林業・木材産業の関係者等からの研究要望に基づき農林水産技術会議という専門組織で審査、決定されます。令和7年度の試験研究課題は14課題(そのうち新規課題が2課題)です。新規課題と主な継続課題の内容を紹介します。
スギ人工林資源の充実に伴い、主伐・再造林の推進による資源の循環利用が求められています。本研究では、既に取得されている航空レーザ計測データを活用して、それと地上からの林分調査(写真1)や出材量のデータを比較検証することにより、県全域を対象とした木材生産機能の指標である地位のマップ化に取り組みます。地位は林地の成長速度の指標とも言え、これをマップにより予め見積もることができれば、対象林地の下刈り期間の予測による保育経費軽減や、森林の現況調査の労力軽減などが期待できます。
写真1 地上からの林分調査風景
きのこ生産現場では、栽培後に排出される廃菌床の処理費用の低減が課題の1つとなっています。廃菌床を再利用し、収量性の高い培地製造ができれば、おが粉の使用量と廃棄量を低減して、生産コストを削減することができます。廃菌床のこれまでの研究では、エノキタケ、ナメコの栽培に、エノキタケ、シイタケ、ナメコの廃菌床が利用できることを確認しました。本研究では、ヒラタケ、マイタケ等その他のきのこ栽培での利用可能性の検証と、廃菌床を活用した収量性の高いきのこ培地製造技術を確立します(写真2)。
写真2 菌床栽培のナメコと廃菌床
循環型林業の確立に向けて、施業コスト低減に有効とされるコンテナ苗等を用いた主伐・再造林一貫作業システム等について作業工程やコストの分析を引き続き行ってまいります。また、雪害や獣害等の被害の発生に留意しつつ、坪刈り等による下刈り省力化の効果検証に取り組みます。
スギの大径材から生産した県産スギラミナの強度特性を調査し、集成材の日本農林規格で示される曲げ及び引張の強度性能基準を満たすことを検証しています。これにより柱・梁等の構造材と幅広板の採材による大径材のフル活用が期待できます。
付加価値の高いきのこの生産が求められていることから、比較的高価格で取引される大粒ナメコの収量安定化や、有機栽培技術の確立に向けた研究を進めています。
新潟県はJクレジットの推進を図っていますが、広葉樹の資源量(二酸化炭素吸収量)を推定する収穫予想表は樹種の区別がなく、ブナ林の炭素固定量が過小評価されています。県内のブナ二次林に対応した収穫予想表を作成するため、現地調査や過去の調査データの収集と解析を進めています。
森林・林業技術課 塚原 雅美