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森林研究所たより 海岸砂丘地に植栽された広葉樹の生存と成長に有効な客土方法(林業にいがた2025年03月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0728225 更新日:2025年3月3日更新

1 はじめに 

県内の海岸クロマツ林は、人家や農地に近接した林帯で松くい虫被害を予防する薬剤散布が困難なため被害にあうリスクがあります。このことから、広葉樹を活用した病虫害に強い海岸林の造成が望まれています。

しかし、本県の海岸林の多くは海岸砂丘地に造成されており、広葉樹の活着・成長が難しいとされています。広葉樹の植栽にあたっては、保水性・保肥性のある客土を導入することが有効と考えられます。

そこで、広葉樹の育成に適した客土方法を開発するため、3パターンの方法で客土を施工し広葉樹を植栽した試験区を設定して、その生育経過を調査することとしました。

2 調査方法

クロマツ林造成地の後背地(海岸から200m程度)に、高さ1.1 mの防風垣に囲われた20×20mの試験区を6区画設置(写真)し、試験区内に3パターンの方法で客土を施工しました。施工パターンは、深さ28cm、直径37cmの植穴のみに100%客土を投入した区(1.植穴客土区)と、客土を体積比25%、または50%の客土を投入し、30cmの深さまで攪拌した区(2.全面客土25%区、3.全面客土50%区)としました(図1)。

そして、それぞれに本県の海岸に自生する広葉樹四種(落葉樹:アベマキとエノキ、常緑樹:シロダモとタブノキ)を植栽し、生育状況を10年間調査しました。

試験区の全景(植栽翌年撮影)

   写真 試験区の全景(2014年撮影)

 

客土方法のイメージ図

   図1 客土方法の概要

3 調査結果と考察

10年後の生存率は、アベマキおよびエノキで客土方法にかかわらず90%以上であり(図2)、いずれの試験区においてもアベマキおよびエノキは十分生育可能であると考えられました。一方で、シロダモおよびタブノキの10年後の生存率は10~40%程度と、いずれの試験区においても50%を下回りました(図2)。

図2 樹種・客土方法別の生存率

図2 樹種・客土方法別の生存率

 

10年後の平均樹高は、アベマキおよびエノキにおいて、全面客土50%区で10成長期後の平均樹高が最も高いという結果が得られました(図3)。一方で、シロダモおよびタブノキでは、いずれの試験区においてもほとんど樹高成長がみられませんでした(図3)。

図3 樹種・客土方法別の平均樹高

図3 樹種・客土方法別の平均樹高

 

以上より、アベマキおよびエノキを海岸砂丘地に植栽する場合、いずれの客土方法においても十分活着し、また、樹高成長には混合率50%の全面客土が有効であると考えられました。一方で、シロダモおよびタブノキは、今回の方法では十分な活着・成長が見込めないと考えられました。当該調査地では、今後も大きな枯損等がないか経過観察を実施する予定です。

 

森林・林業技術課 田中 樹己

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