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森林研究所では、林業用種苗のアカマツ(にいがた千年松)とクロマツの種子生産を行っています。秋に採取した球果から種を取り出し、風選という方法で、胚乳が入っていない軽い種子(シイナ)を取り除き、充実した種子だけを選別しています。
近年、その選別作業において、シイナの量が非常に多くなっていたため、各年の一球果当たり種子粒数を換算してみたところ、平成28年頃から減少していることがわかりました(図1)。
しかし、原因まではわからず、他県研究所などにも相談しつつ育種担当の研究員で模索していたところ、マツヘリカメムシが一つの原因でないかと思われました。
図1 アカマツの種子生産推移
外来のカメムシで、多くのマツ科植物を寄主とし、種子や新芽を吸汁加害します(※参考2)。新潟県では平成26年が初確認とされています(※参考2)。写真1のように、羽に独特な模様、腹部にも特徴的な縞模様があり、脛節が非常に太いので見分けは簡単です。また、写真2のように未熟球果に群がり、針のような口器を出し、鱗片の隙間に刺して吸汁する様子が確認できます。
令和6年7月頃、研究員二名で所内のマツ林の未熟球果を目印に当害虫を捜索したところおよそ30分ほどで幼齢虫から成虫まで約20匹以上発見されました。また、越冬する個体を建物内で見つけられることもありました。
写真1(左)_マツヘリカメムシ(成虫)
写真2(右)_マツヘリカメムシ(成虫)が球果に群がり吸汁する様子
マツヘリカメムシは、マツの樹体を加害するわけではないので、この虫による山林や海岸林枯死の被害はないと思われますが、種苗生産についてはより一層の被害が懸念されます。
現在、殺虫剤散布の防除を行ってはいますが、マツヘリカメムシに対する有効な防除方法が普及していないため、回数や濃度を増やす、薬剤の種類を変更するなどの工夫が必要と思われます。今後も情報収集に努めて種子量の増加対策を行っていきたいと思います。
※参考1:石川ら(2009)北米産ヘリカメムシLeptoglossus occidentailis Heidemannの日本からの初記録
※参考2:鶴ら(2020)外来種マツヘリカメムシ(Leptoglossus occidentailis)の鳥取県からの初記録と分布拡大状況に関する考察
森林・林業技術課 伊藤 由紀子