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森林研究所たより ブナ母樹林の豊凶及び種子生産量調査について(林業にいがた2024年2月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0634046 更新日:2024年2月1日更新

1 はじめに

新潟県は、ブナ苗育成のための母樹林を県内各地に指定し、豊凶状況と生産種子の質の把握、県内産優良種苗の計画的供給等を目的として、種子生産量調査を実施しています(本誌平成28年9月・767号参照)。調査は、全国的に大豊作となった平成17年と、その後、平成21年から毎年実施しており、令和4年は調査開始から5回目の豊作となりました。今回は、これまでの豊凶状況と、種子生産量の予測について紹介します。

2 豊凶状況

母樹林(8林分)の総落下種子数の年変動を図に示しました。県内では、平成17年以降、23、27、30、令和4年に豊作となっています。豊作年の間で種子生産量を比較すると、母樹林によって比率は異なりますが、平成17年以外の豊作年の生産量は、17年の6~7割程度となりました。

ブナ母樹林ごとの総落下種子数の年変動

図 ブナ母樹林ごとの総落下種子数の年変動

  • シードトラップ法による調査
  • 凡例の番号は母樹林指定番号
  • 「×」は欠測、村上市早稲田は2005、2011年のみ調査実施
  • 既往文献等から、総落下種子数が 200個/平方メートル以上を豊作とした

結実(豊作)の周期は、7~10年と長期の母樹林が一部みられましたが、大半は3~4年でした。近年報告されている豊凶現象の変化、例えば豊凶周期の同調性の低下は本県でもみられ、平成25年や令和3年は、母樹林間で同調性が低い傾向となりました。さらに、令和3~4年と2年連続で豊作になる母樹林も確認されました。

種子生産量の予測

平成17年に、種子生産量と林分の特徴との関係を調査したところ、樹冠の総体積が大きい林分ほど総落下種子数が多くなり、樹冠総体積から種子生産量が予測できる可能性が示されました。しかし、その後の豊作年では、その関係は明瞭ではありませんでした。平成17年以外の豊作年の種子生産量が17年より少なかったことなどから、種子生産の特徴は、豊作の規模によって異なると考えられました。

4 おわりに

これまでの調査から、結実周期のおおまかな傾向が分かってきました。しかし、豊凶現象の変化のメカニズムや、生産種子の質や量の予測についての知見は十分に得られていません。それらを解明することは、県内産優良種苗の計画的供給を可能にするだけではなく、ブナ種子を主要なエサとするツキノワグマ等野生動物の保護・管理のためにも重要です。

今後も調査を継続し、これまで調査してきた林分の特徴以外の、例えば気象などの環境要因と種子生産の関係についても検討することで、豊凶現象や種子生産についての知見が得られればと考えておりますので、引き続き関係機関の皆様のご協力をよろしくお願いします。

森林・林業技術課 伊藤 幸介

※ 本調査結果は、「ブナ母樹林種子生産量調査」ページで公開しています。

 

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