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森林研究所たより 積雪地におけるスギコンテナ苗の初期成長について(林業にいがた2022年6月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:1952202206 更新日:2022年6月10日更新

はじめに

近年、低コスト再造林の推進のため、植栽適期が長く植栽効率に優れたコンテナ苗が期待されています。しかし、本県のような積雪地における春植えの事例は少なく、植栽適期の評価が困難でした。森林研究所では2017年から積雪地におけるコンテナ苗の植栽試験を行い、初期成長について調査をしましたので、その結果を紹介します。

 

調査方法

三条市大字曲谷において、植栽時期及び苗の種類ごとに四パターンの調査区(表)を設置し、2017年秋から2021年秋まで成長調査を行いました。

 

表 植栽した苗の概要

調査区 苗の種類 植栽本数 植栽日 備考
秋植え区 コンテナ苗 90 2017年11月 パターン1 (秋植えコンテナ苗)
裸   苗 90 2017年11月 パターン2 (秋植え裸苗)
春植え区 コンテナ苗 80 2018年6月 パターン3 (春植えコンテナ苗)
裸   苗 80 2018年6月 パターン4 (春植え裸苗)

 

調査結果

2021年秋の生残率は、パターン1から4まで、それぞれ79%、90%、89%、83%となり、パターンにおける生残率に大きな違いは見られませんでした。このため、積雪地においてコンテナ苗の春植えは可能と考えられます。しかし、秋植えコンテナ苗であるパターン1の2割に根抜けが発生し、その枯死率は約3割に達しました。このため、コンテナ苗の秋植え時には、根踏み等の工夫が必要と考えられました。

初期成長については、植栽4年後のコンテナ苗は植栽時期に関わらず、裸苗と比べて地際径及び樹高が小さい結果が得られました(図1)。またコンテナ苗は植栽時の形状比(注1)が高い個体ほど、樹高成長より地際径の成長を優先させる傾向があり、植栽時の形状比がその後の初期成長に影響していることもわかりました(図2)。

植栽してから4年後の樹高について示している図。

図1 植栽4年後の樹高

中央の太線は中央値、ひし形は平均値を示す。

 

植栽時の形状比と4年間の相対成長率の関係について示している図。

図2 植栽時の形状比と4年間の相対成長率※1

※1:植栽時の大きさが異なる苗木の成長速度を比較するもの。

おわりに

先行研究では、コンテナ苗は裸苗に比べて形状比が高くなることがわかっており、形状比が低下した後に樹高成長が優先されると考えられています。今回の調査結果でも先行研究と同様の結果が得られていることから、今後本調査地においてもコンテナ苗の形状比が低下すれば、さらなる樹高成長が期待されます。そのため、今後も継続調査を行い、積雪地におけるスギコンテナ苗植栽の知見を集積し、コンテナ苗植栽の普及促進に努めたいと思います。

 

本調査は、林業成長産業化事業中越地区の一環として、長岡地域振興局との協力で行いました。

注1:苗木の形状を示すもの。この値が大きいほど細く長い幹となる。

 

 

きのこ・特産課 松澤可奈子

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