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森林研究所たより 組織培養技術を活用した無花粉スギの開発について(林業にいがた2021年11月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0433570 更新日:2021年11月1日更新

1 はじめに

 当所では、実生無花粉スギの開発に取り組んでいますが(林業にいがた2021年8月号参照)、普及に至るまでには長い年月を要します。そのため、新潟大学・森林総合研究所と共同で、組織培養技術を活用し、無花粉スギの開発・普及までの期間の短縮に取り組んでいます。

2 組織培養とは

 組織培養とは、多細胞生物の組織や細胞を取り出し、培養液などを用いて人工的に増殖する技術のことです。

 現在、当所で実施している組織培養は、未熟種子から培養する手法です。まず、未熟な種子から受精胚を含む雌性配偶体を取り出し、受精胚から発生する細胞を増殖します。そして、増殖細胞から不定胚と呼ばれる受精胚と同じ能力を持つものを作出し、発芽させてクローンの植物体に育てます。

 

3 無花粉スギ開発と組織培養

 通常、無花粉スギを開発するためには、優良な品種同士を掛け合わせ、作出した種子から苗を育成し、その苗が無花粉スギかどうかの確認が必要になります(図の上段)。しかし、組織培養技術を用いれば、増殖細胞を遺伝子解析することで、無花粉スギだけを選び出すことができるため、従来の方法に比べて2~3年の期間短縮が可能です(図の下段)。

また、一つの種子から作り出した細胞由来の苗は、すべて同じクローンになるため、造林用の種子を採取する採種園の種子親として用いれば、普及までの期間を5年以上も短縮することが可能になります(無花粉スギの確認も含めて合計7~8年短縮)。

  無花粉スギ開発の従来の方法と組織培養技術を使用した場合を比較している     

    図 無花粉スギ開発の概要(無花粉スギ開発の従来の方法と組織培養技術を使用した場合を比較)

 

 

4 今後の試験研究

 組織培養技術は、品種開発や採種園造成に活用できるだけでなく、大量の山行用の無花粉スギを供給することも技術的には可能です。現状では法律的に山行用苗として植栽することはできませんが、普及が可能になる未来を見据えて、組織培養由来の苗が普通の苗と同じように成長するのか、把握しておく必要があります。そのため、令和二年に組織培養由来の苗を実生苗・挿し木苗とともに植栽した試験林を造成しました。今後、その試験林で活着・成長を継続的に調査していきます。

   また、今後も無花粉スギの早期普及に向け新潟大学・森林総合研究所と協力していく予定です。

 本研究は生研支援センター・イノベーション創出強化研究推進事業(28013BC)の支援により行われました。

 

  森林・林業技術課 番塲

 

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