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森林研究所たより ブナ苗の特徴と成長管理(林業にいがた2021年03月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0202103 更新日:2021年3月2日更新

1  はじめに

ブナの種子の特徴について本誌平成30年9号にまとめました。今回は苗の特徴についてお知らせします。

2 遺伝的地域性

日本のブナは、日本海側と太平洋側とで、遺伝的に大きく異なることが知られ、この間での移動は特に避けるべきとされています(※1)。もし移動させると、成長や次世代へ遺伝的に影響を及ぼし、保全上の問題となるからです。
そこで国や県では母樹林を指定するなどで対応しています。新潟県では、9ヵ所にブナの母樹林を指定し、その遺伝的組成も明らかにしてあります。そして、県山林種苗協会の活動によって、県内の遺伝的背景に適した苗の生産体制が整えられています。

3  苗の特徴と植林の時期

県内産ブナの苗は現在裸苗が主流です。種子の豊作は数年に一度、しかもその寿命は半年と短いため、種まきできるのは数年に一度です。規格は苗長30cm上、50cm上の二つで、数年間かけてその規格に達したものから出荷されて行きます。したがって苗齢は年によって異なりますし、まとまった数が揃いにくい年もあります。
ブナの裸苗を安全に定植できるのは葉が落ちた休眠期です。ブナは開葉が早く、雪解けが遅い場所では開葉前に植えることができないので、10月から11月の間に植栽することがほとんどです。

4  コンテナ苗と育苗環境による成長調節

そこで定植可能期間が長いコンテナ苗の育苗を試みるとともに、温室・遮光率・元肥の有無などの条件を変えて二年間育苗し、効果的に成長を調節する方法を検討しました(写真)。その結果、コンテナ苗は苗畑の裸苗より苗長・地際直径ともに小さく、元肥のない培地で小さく育てることが出来ました。そして、苗の成長を調整するためによく用いられる遮光の効果は培地の効果ほど顕著でありませんでした。また、コンテナ苗の得苗率はいずれの試験区でも80%以上で、裸苗の得苗率とほぼ同等でした。上記の結果から、ブナはコンテナ育苗でき、成長管理には被陰より培地の効果が大きいことが明らかになりました(※2)。

5 おわりに

現在、施肥量による成長調節を県山林種苗協会田沢支部の苗畑で検証中です。ブナコンテナ苗は植樹活動などにも適すると考えますので、普及を期待しています。
なお、母樹林調査や育苗試験に多くのみなさまにご協力いただいております。この場を借りてお礼申し上げます。

※1 津村義彦・陶山佳久編 (2015)地図でわかる樹木の種苗移動ガイドライン 文一総合出版

遮光率を変えた栽培環境(右)とブナのコンテナ苗(左)         

  写真 遮光率を変えた栽培環境(右)とブナのコンテナ苗(左)

 

 

森林・林業技術課 塚原雅美

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