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森林研究所たより 海岸砂丘地における広葉樹林造成技術の確立に向けて(林業にいがた2020年11月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:1952202011 更新日:2020年11月1日更新

1 はじめに
 海岸線の長い本県において、冬季の季節風から人々の暮らしを守る海岸林は大切な存在です。森林研究所では、松くい虫被害に強い林帯造成に資する技術の確立のため、治山工事で海岸砂丘地に植栽された広葉樹の生育状況を調査しています。本格的な冬の訪れの前に、その途中経過について紹介します。

2 調査地と方法
 調査地は新潟県胎内市中村浜において、汀線からの距離が約200mの旧クロマツ海岸林です。2008年から2011年の間に航空防除が中止されたところ、幼齢・高齢にかかわらず海岸最前線までクロマツがほぼ全滅しました。その後、新潟地域振興局発注の治山工事で2012年に枯損木が除去され、翌年に海側においてクロマツが、陸側において広葉樹が植栽されました(図)。異なる方法・割合で客土が行われたことから、本所ではそれらが広葉樹の生存及び成長に及ぼす影響を植栽当初から調査しています。

植栽配置、客土方法及び割合区分

図 植栽配置、客土方法及び割合区分

3 調査結果
 植栽後6年間の生存率は、落葉広葉樹(エノキ、アベマキ)では96%以上の高率で横ばい傾向を示しました。一方、常緑広葉樹(タブノキ、シロダモ)ではなだらかな減少傾向を示した後、2017年秋季以降大きく減少しました。各樹種において客土方法と割合でこれらの結果が変わらないことから、客土はその方法と割合によらず落葉広葉樹の活着に有効と考えられます。
 一方、樹高においては、冬の季節風による枯れ下がり※で上下しつつも落葉広葉樹(エノキ、アベマキ)では成長がみられたのに対し、常緑広葉樹(タブノキ、シロダモ)では横ばいのまま成長がみられませんでした。エノキとタブノキでは、樹高成長に効果的な客土方法と割合の組み合わせが示唆されましたが、はっきりとした傾向が得られないことから、それらは種特性によるものと考えられます。
 さらに植栽列に目を向けると、防風垣のある海側から離れるほど落葉広葉樹の樹高が低いことから、さらなる樹高成長にはより効果の高い防風対策が必要と考えられます。それには、前線のマツ安定林の樹高成長が寄与するものと期待しています。

※環境ストレスによって主幹の先端が枯損すること

 

4 おわりに
 上層木がなく、前線マツ林も成長途上の海岸林は、直射日光と潮風を一身に受ける過酷な環境であると調査を通じて実感します。様々な環境ストレスにさらされながらも成長した落葉広葉樹に続き、常緑広葉樹が成長するための要因を明らかにすべく、今後も調査を続ける予定です。

6成長期後の林内の様子

落葉広葉樹が繁茂する植栽6年後の林内

 

森林・林業技術課 佐藤 渉

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