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森林研究所たより 木材検知ソフト活用に当たっての留意点(林業にいがた2020年9月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:1952202009 更新日:2020年9月1日更新

1 はじめに
  林業の生産現場の改革としてスマート林業が新潟県内でも推進され、ICT(情報通信技術)を活用した技術が導入されようとしています。素材生産に取組んで行く中で木材の検知作業が欠かせませんが、現在、タブレット端末やスマートフォンを活用した市販の検知ソフトが複数社から販売されています。そこで、実際の検知作業への現場適応性や精度について検証し、生産現場での利用の可能性について調査したので報告します。

2 調査方法
(1)使用したソフト
    使用したのは二種類で、A社製は専用のタブレット端末に格納されたもの、B社製はスマートフォンに個別に導入し使用しました。
(2)実施場所
  中越、下越地域の、五事業体から協力いただき、素材生産現場の山土場、及び中間土場において検知作業を行いました。
(3)調査方法
  山土場、中間土場に椪積された素材を、a.A社、B社ソフトにより、椪積単位で木口面が画面に収まるようにそれぞれカメラ撮影しました。また、b.A社ソフトに用意されている、径級を一本ごとに画面にタッチして入力するタップ版を使用し、一人で検尺しタップするワンマン方式と検尺を別の人間が行うツーマン方式により検知作業を実施しました。

3 調査結果
(1)aカメラ撮影による検知
  椪積の大きさや木口の状況、光線や積雪の有無、つなぎ写真のように合成して認識可能か等、カメラ機能に差がありました。画像認識技術は発展途上の技術と思われ、◎逆光に弱い、◎椪積の木口面に凹凸が多いと認識しづらい、◎椪積同士が隣接していると誤認識しやすいため、撮影後の補正入力に多く時間が必要でした。
 木材検知ソフトで撮影
  
(2)bタップ版による検知
  野帳への記入をタップ入力に置き換える作業イメージで、ツーマン方式のほうが短い時間で検知できました。
  

表1 調査方法bの結果
メーカー 利点 ワンマン
作業
ツーマン
作業
写真撮影 集計結果
A社 ・専用タブレット端末で径級欄をタッチすることで径級ごとの本数・材積を集計 4分32秒 2分54秒 9分00秒
(補正入力を含む)
18本
8.90
立方メートル

4 活用に向けて
  調査によって確認できた使用ソフトの利点と、利用に当たっての注意点は表2のとおりです。
  

表2 調査方法aによる検知ソフト使用上の利点・注意点
メーカー 利点 注意点 集計結果
A社 (1)専用タブレット端末(スマートフォンでも)利用可能
(2)カメラ撮影により径級ごとの本数・材積を集計、結果の出荷伝票形式への出力
(3)電子メールで送信
(1)ソフトが認識しにくい椪積の形状に注意
(木口面の凹凸、椪積同士の近接等)
(2)撮影時の光線の具合に注意
(逆光、雪面の乱反射等)
(3)撮影後に大幅補正が必要な場合も発生
(4)写真合成不可のため椪積規模は限定的
56本
10.70
立方メートル
B社 (1)手持ちのスマートフォンで利用可能
(2)A社に同じ
(3)A社に同じ
(4)写真合成が可能
(1)A社に同じ
(2)A社に同じ
(3)A社に同じ
(4)合成可能だが不的確な合成写真も発生
56本
11.54
立方メートル
従来方法   56本
11.03
立方メートル

  林業の生産現場の様々で複雑な条件に完璧に応えるものは木材検知ソフトに限らず、現時点では開発途上にあると思われます。いずれのソフトも椪積を正確に認識できるよう現場で対応を工夫することで、集計結果は、検知野帳や納品伝票に変換して出力可能となります。また、電子メール送信や記録媒体を使えば現場データが事務所と共有できます。ソフト利用の注意点を踏まえ、ソフトの試用を考えてみてはいかがでしょうか。

                                                             きのこ・特産課 倉島 郁

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