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森林研究所たより 菌床きのこ栽培における害菌対策について(林業にいがた2020年8月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:1952202008 更新日:2020年8月1日更新

1 はじめに

暑さ厳しい時季になりましたが、秋のきのこ最盛期に向けて、既に生産準備が進んでいる時季でもあります。今回は、本格的なシーズンの前に菌床きのこ栽培における害菌対策について紹介します。

2 きのこの害菌

きのこ栽培で主に被害をもたらす害菌は、大きく二つのグループに分けられます。一つは「細菌(バクテリア)」で、もう一つは「真菌」です。どちらも「菌」が付きますが全く別の生き物です。敵の正体を知ることで、正しく対処しましょう。

3 細菌(バクテリア)

細菌は、真菌よりも原始的な生き物です。単純な構造の単細胞生物ですが、多様な種類が存在し、我々の生活に役立ったり、害をなしたりしています。

害菌の一つBacillus(バシラス・バチルス)属には有名な納豆菌も含まれています。熱に強いため、培地の殺菌が不十分だと生き残ってしまいます。きのこの菌糸が伸びる速度より速く増殖するので、菌糸の伸長を阻害し、培地は腐敗臭がしてきます。こうなってしまっては、きのこは育つことが出来ません。殺菌時間(高圧殺菌釜の場合は給蒸時間も)の設定をきちんと確認しましょう。

ちなみに、この熱に強い性質を利用して納豆が作られます。納豆菌以外の菌を煮沸滅菌したワラで包んで、大豆を発酵させるのです。

Pseudomonas(シュードモナス)属は、あまり聞きなじみがないと思いますが、生息域は幅広く、どこにでもいる細菌です。この細菌が付着したきのこは、シミができたり、溶けるように黒く腐ったりします(写真1)。きのこ栽培では、主に水を媒介として被害が広がるため、加湿器や結露水などの水環境のケアが重要になります。

Pseudomonas属により、黒く変色したエノキタケ

 写真1 Pseudomonas属により、黒く変色したエノキタケ

4 真菌

真菌にはカビ類や酵母が含まれており、実は、きのこも真菌です。そのため、きのこの生育に適した環境=カビ類にも適した環境ということになってしまいます。

きのこと栄養を奪い合うタイプ(腐性菌)ときのこそのものに寄生するタイプ(菌寄生菌)があります。どちらも「培地への侵入を防ぐ」ことが基本です。熱に弱いため、殺菌後は、培地が熱いうちに清潔な部屋に移動させましょう。接種室や培養室は専用の服・靴を用意し、こまめに清掃して清潔な状態を維持してください。

なお、菌寄生菌の一つであるTrichoderma(トリコデルマ)属は、胞子がダニの好物です。ダニが胞子を運び、広範囲に被害が拡大してしまうことが多々あります(写真2)。一度ダニが増殖すると、その根絶は困難です。ダニ予防のためにも、部屋の整理整頓と清掃を心がけましょう。

Trichoderma属に汚染された栽培ビン(上)と運び屋のダニ(下) 

写真2 Trichoderma属に汚染された栽培ビン(上)と運び屋のダニ(下)

5 おわりに

害菌被害は、時に経営を圧迫するほどの損失をもたらします。おおまかな紹介しか出来ませんでしたが、今一度、生産環境を見直すきっかけにしてください。

きのこ・特産課 武田綾子

 

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