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森林研究所たより マツノマダラカミキリ初発日の有効積算温量の予測(林業にいがた2020年6月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:1952202006 更新日:2020年6月1日更新

1 はじめに

例年5月下旬から6月上旬にかけて県内の主要なマツ林において松くい防除のための薬剤散布が行われています。散布は、マツノマダラカミキリ(以下カミキリ)が脱出する前に行う必要があり、適切な脱出日の推定のための調査が行われてきました。林業にいがた平成26年5月号第739号で、その「発生予察」調査を紹介しています。発生予察調査は、カミキリに産卵されたマツ材を研究所内の網室に入れ、脱出した日や頭数等を数年にわたり調べるものです。
その結果、カミキリ全体の1%にあたる個体の脱出に必要な有効積算温量(以下、温量)を10年間平均し、335日度(にちど:日平均気温が11度を超えた温度を3月1日【注1】から積算した単位)を得ました。

2 現象のモデル化

さて、このような時間経過と「あり・なし」が関係するものはロジスティックモデルで説明できることが知られています。ロジスティックモデルは種子の発芽、カエルの孵化などの生物現象以外でも、カラーテレビ普及率のような社会現象にも応用されており、Sを横に引き伸ばしたような曲線になります。であれば、カミキリ脱出の状況もモデル化できるはずです。統計ソフトを用いて直近6年分の脱出率と温量データからモデル化を試みました。カミキリ脱出率を縦軸、温量を横軸とし、ロジスティック曲線式を求めることができ、数値計算が可能になりました(図1)。

 

図1 求められたロジスティック曲線図1 求められたロジスティック曲線

3 いろんな値が計算可能に

本県ではカミキリ初発日として従来から1%脱出日を用いています。仮に200頭が脱出した場合には2頭目がちょうど1%になりますが、実際のデータはそうキリ良くはなりません。しかし、曲線式が求められたことから式に1%を代入すればちょうど1%の温量を計算で求められ、それは284.5日度となりました。335日度よりずいぶん低くなっていますが、実際のカミキリ初発日の温量から脱出割合を算出すると、1.2~3.7%で、平均は約2%でした。つまり、計算式での1%脱出温量を初発日温量と考えることは概ね妥当な値であると確認できました。
但しカミキリの脱出は、年によってばらつきがあります。そのばらつきを考慮し、初発日温量を推定したところ、262.0~381.4日度の間に収まることがわかりました。(注2)

4 おわりに

カミキリの脱出時期には地球温暖化の影響も無関係ではなく、今後より早まっていくものと考えられます。引き続き調査を進め、モデルの精度を高めていく予定です。
注1  以前は4月1日からとしていた。
注2  6年分のデータで推定したランダム効果の95%信頼区間を求め、2%脱出率にあたる有効積算温量に換算した。

森林・林業技術課 岩井淳治

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