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森林研究所たより きのこの交配の話(林業にいがた2019年08月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0139098 更新日:2019年8月1日更新

平成30年6月号のこのコーナーで、野生のナメコを使って品種改良をする話をしました。野生ナメコの中から優れた特性を持つものを選んでかけ合わせなどする、と説明しました。さて、「きのこのかけ合わせ」(つまり交配)とはどのようにするのでしょうか。植物ならめしべに花粉を付けたりしますが、ではきのこは? このことを説明するためには、まずきのこの正体を知る必要があります。

きのこの正体は「菌糸」

「きのこ」と呼ばれている生物の正体は、実は「菌糸」(きんし)という、太さ1,000分の2~10mmの細長い細胞が連なったものです(写真)。自然界なら朽ちた木の中などでこの菌糸が周りから栄養を取って伸びているのです。この状態が普通の状態といえます。そして奇妙なことに、この細胞の中には核がふたつ入っています。これを「二核菌糸」と言います。動植物はひとつの細胞に核はひとつなのに、面白いですね。でも実は「一核菌糸」もあります。それはまた後で。

菌糸の顕微鏡写真
写真 菌糸(ナメコ)

きのこの交配

さて、ここに温度などの条件がそろうと、菌糸は束になって突き出してきます。これが、私たちの食する部分で、「子実体」(しじつたい)と言います。
子実体は胞子を作るために現れる器官です。その傘の裏でふたつの核は初めて融合し、そしてまたふたつに分かれます。この時、遺伝情報の組合せが変わります。そしてそれぞれの核はひとつの胞子に入って放たれます。
胞子は、栄養や温度などの条件がそろった場所に落ちれば、発芽して菌糸を伸ばします。胞子は核がひとつだけなので、この菌糸はひとつの細胞にひとつの核を持つ一核菌糸です。この後、他の胞子から伸びてきた一核菌糸に出会うと、片方の核がもう片方の細胞に入り、二核菌糸となります。これがきのこの交配です(図)。きのこの品種改良はこの現象を人工的に行うのです。

ふたつのきのこからの胞子からそれぞれ一核菌糸が伸びて融合したのち核が移動して二核菌糸となりきのこになる図
図 きのこの交配

きのこにも相性がある?

ただし、出会ったら全て交配するとは限りません。いわば相性のようなものがあって、これが合わないと交配が成立しないのです。この場合、二核菌糸にはならないので基本的にきのこを作りません。これでは困るため、ちゃんと交配が成立したか確かめる方法があるのですが、紙面の都合で省略します。

 

このあと、得られた菌糸をきのこに育てて性質を確認し、目的に合った、優れた品種を選んでいくのです。

きのこ・特産課 皆川勝之

 

 

 

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