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森林研究所では、きのこ生産に関連する研究のほか、きのこ生産者からの栽培技術指導等の要望への対応も行っています。生産者等で組織されているきのこ協議会や生産者の方から、きのこ栽培における害菌、害虫に関する知識習得をしたいといった相談があります。今回は、きのこ栽培における害虫に関する情報を紹介します。
・原木栽培の場合
屋外での栽培であることから害虫は多く、原木シイタケでは、シイタケオオヒロズコガ類(蛾)やキノコバエ類(ハエ)、ヤマトケヅメカ(蚊)、トビムシ、ナメクジ等による食害が問題となっています(写真1)。
写真1 食害痕のある原木シイタケ
・菌床栽培の場合
原木栽培と比較すると、空調を用いた密閉した施設での栽培が多いため、害虫被害は少ないですが、シイタケ、ヒラタケ等ハウス栽培が行われている品目では、キノコバエ類による食害がみられます。
原木・菌床栽培ともに、きのこの可食部分への食害による生産品のロス、きのこ傘裏のひだや軸への昆虫類の侵入や付着に対応するため、包装・出荷時に確認の手間が必要になります。
・原木栽培の場合
ホダ場の草刈り、落葉や廃ホダの除去、防虫ネットの設置等害虫の発生侵入防止対策や、ホダ木を浸水処理して洗い流す害虫の駆除対策、きのこの早期の収穫による食害予防があります。
・菌床栽培の場合
栽培施設の換気口や排水口での防虫ネットによる侵入防止対策、粘着テープ(写真2)や光捕虫器による直接除去があります。また、廃菌床や使用後の菌床ビンを放置しない等、施設内や周辺部を清潔に保つ予防対策も重要です。
写真2 害虫被害防止のための粘着テープ(キノコバエ付着)
害虫の侵入対策や直接捕獲による除去のほか、菌床栽培棚に振動を与えてきのこ害虫の発生を抑制する技術の開発が行われております(引用1)。
また、きのこを食害する昆虫が、きのこに共通する香り成分に誘引されてきのこを感知していることが示唆されており、きのこの香り成分をおとりにしたトラップの開発が行われております(引用2)。
栽培きのこは、化学農薬を用いない安心・安全な食品として消費者に認識されています。こういった新しい技術は、殺虫剤等に頼らない害虫防除対策につながるものと期待されます。
※引用1 高梨ら(2023)きのこに振動を与えて害虫の発生を抑制する
※引用2 島津ら(2025)山形県庄内地域における原木栽培シイタケホダ場の子実体発生期の昆虫相と子実体揮発成分の生物活性
きのこ・特産課 島津 桃子