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【農業技術・経営情報】野菜:たまねぎセル育苗時の葉切りの影響と処理方法

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0404904 更新日:2021年2月1日更新

はじめに

 新潟県のたまねぎ栽培では、面積の拡大を目指して機械化一貫体系を推進しています。セルトレイ育苗は機械定植に対応した育苗技術として県内各地で平成25年頃から導入されていますが、慣れない育苗方法のため失敗も多く、特に葉切り(剪葉)にかかわるトラブルが目立つように思われます。ここではセルトレイ育苗の葉切りが苗質に及ぼす影響と適切な処理方法について述べます。

セルトレイ育苗と葉切り

 セルトレイ育苗は、288 穴や448 穴など小さいポットにコーティングした種子を1 粒まきをします。

 セルトレイの設置方法としては、(1)セルトレイを直置きしセルの下から根を地面に張らせ苗を大きくする方法、(2)セルトレイを架台に上げて(上床)、根を出させず細い苗で早く根鉢を形成させる方法があります。直置き方法では、葉鞘径が太く地上部重も重くなりますが、根を切るため根重が少なくなります。一方、上床方法では葉鞘径が細く苗が小さいですが根重は多くなります。

 セルトレイは一般に雨よけハウス内で育苗され、培地量が少なく乾きやすいためかん水回数が多くなる傾向にあります。そのため、苗が徒長しかん水の水圧で容易に倒伏し、通風が不良になったり病害が発生したりします。これらを回避するためには育苗期間中に何度か葉を切り戻すこと(「葉切り」)が必要となります。地床育苗には無いセルトレイ育苗特有な作業といえます。

葉切りの影響

 葉切り作業は、光合成を行う葉身部を切り取ることから苗へのショックが大きく、根の生長に悪影響を及ぼします。その程度は葉切りの強度(草丈)によって異なり、草丈が短いほど根の生長は緩慢となり、草丈が長い場合との差は長期間に渡って続きます。

「図1剪葉直後の草丈がその後の根重増加に及ぼす影響(平成23年 園芸研究センター)」の画像
図1 剪葉直後の草丈がその後の根重増加に及ぼす影響(平成23年 園芸研究センター)

 現地での育苗でも1回目の葉切りが遅れて全倒伏状態となり、葉切りを行うにも1株ずつ持ち上げて行うことは作業上困難なため、仕方なく草丈5cm程度にする強い葉切りを実施した事例がありました。その結果、苗に与えたショックは大きく生育が回復するまで期間がかかり、そのため定植が11月中旬まで遅れる事態となりました。結果的に越冬前までに生育量を確保することができずに越冬率が極端に低下し栽培を断念しました。

「激しい倒伏状態で適正な歯切り処理困難」の写真
激しい倒伏状態で適正な歯切り処理困難

「強い葉切りで、その後の生育は著しく停滞」の写真
強い葉切りで、その後の生育は著しく停滞

適切な葉切り方法

 葉切りは、生育にマイナスの作用を及ぼすためその影響を最小限にとどめて行うことが重要です。
 葉切り機が導入されている場合は、作業に時間がかからないため影響の少ない草丈20cm程度の軽い葉切りをこまめに実施してください。葉切り回数は多くなりますが、生育停滞がなく良苗に仕上がります。

「たまねぎ剪葉機」の写真
たまねぎ剪葉機

 人力で葉切り作業を実施する場合は、労力的に回数が限られますから葉切りの時期と程度に注意する必要があります。以下に作業上のポイントを記述します。

  1. 強い葉切りは根の伸長をストップさせます。特に、育苗前半、定植直前の強い葉切りは影響が甚大です。
  2. 第1回目の葉切りは、倒伏直前までできるだけ我慢し発根を促します。第3回目の葉切りは機械定植可能なら行わないようにします。
  3. 乾燥防止のハウス寒冷紗等の遮光は、苗が徒長し到伏を助長させるので発芽揃い後は除覆してください。
  4. 葉切り直後は葉の切り口を早く乾燥させて病気の発生を防ぐためかん水を控えます。また、葉切りのショックをやわらげるため液肥(200~300倍、400~500ml /トレイ)を施用します。

 

228穴セル育苗 8月21日は種-10月15日定植の実施例
「図2葉切りの時期と草丈の目安」の画像
図2 葉切りの時期と草丈の目安

 

【経営普及課 副参事(農業革新支援担当) 増田 浩吉】

 

 

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