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【農業技術・経営情報】野菜:ねぎ砂丘畑の耕盤破砕による排水性の改善

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0404604 更新日:2021年2月1日更新

 一般に砂丘地は排水性が良いとされますが、一部の砂丘ねぎ産地では、近年、耕盤層形成による排水性の低下に起因すると考えられる生育不良及び病害発生による単収の低下が著しくなっています。
 ここでは、平成26年に新発田農業普及指導センターが砂丘地のねぎほ場で実施した耕盤破砕による排水性改善実証について紹介します。

1 実施ほ場の耕種概要

 品種は夏扇4号を用いて4月26日にチェーンポットLP303-10に4~5粒/穴は種しました。栽植密度は45本/m(45,000 本/10a)で5月31日に簡易定植機(ひっぱりくん)で定植しました。収穫調査は12月13日に行いました。

2 耕盤破砕作業(区の設定)

 耕耘前の4月22日にパラソイラーEPS400(ナイフ連数4)(写真1)とプラソイラーMPS3(ナイフ連数3)(写真2)の2種類の作業機を用いて耕盤破砕作業を実施しました。作業時の耕深はいずれも50cm程度でした。

パラソイラーの写真
(写真1)パラソイラー

プラソイラーの写真
(写真2)プラソイラー

3 排水性改善効果

( 1 )土壌硬度の状況について

 慣行区(耕盤破砕なし)は、硬い耕盤が深さ30~50cmにかけて認められました(図1)。パラソイラー区の深さ30~50cmの土壌硬度は、爪直下の位置では0.3~0.5MPa、爪間の位置では0.2~0.7MPaに低減し、破砕効果が認められました(図1)。爪が配置されていない作業機中央直下においても0.6~1.5MPaに低減し、破砕効果が認められました(データー略)。
 一方、プラソイラー区の深さ30~50cmの土壌硬度は、爪直下の位置では0MPaに、爪間の位置では0.6~1.8MPaに低減しました(図1)。

「図1土壌硬度測定結果(縦軸深さcm、横軸硬度MPa)」の画像
図1 土壌硬度測定結果(縦軸深さcm、横軸硬度MPa)

( 2 )ほ場透水性について

 インテクレート調査による積算浸入量は、耕盤破砕実施区が慣行区に比べ明らかに多くなり、ほ場透水性が改善されました。また、パラソイラー区がプラソイラー区に比べ、積算浸入量が多い傾向が認められました(図2)。

「図2実証区と慣行区の積算浸入量の比較」のグラフ
図2 実証区と慣行区の積算浸入量の比較

 

 以上のことから、耕盤破砕により土壌硬度の低下及びほ場透水性の向上が確認されました。また、パラソイラー区がプラソイラー区に比べ積算浸入量が多い傾向が認められたことから、砂丘畑ではパラソイラーの方が施工効果が高いと思われます。その要因として配置される爪数が多く、くの字状の爪形状により広範囲に耕盤が破砕されたものと思われます。

4 ねぎの生育及び収量性

( 1 ) 1m当たり生存本数

 8月4日までは差は認められませんでしたが、慣行区は7月に入り個体間のバラツキが目立ちはじめるようになりました。9月9日以降は、慣行区は耕盤破砕実施区に比べ生存本数が少ない傾向が認められました。減数要因は、弱小株の消失によるものがほとんどで、夏の気温が低く軟腐病の発生による減数は見られませんでした(表1)。

(表1) 1m当たりの生存本数の推移
「1m当たりの生存本数の推移」の表1

( 2 )収量及び品質

 耕盤破砕実施区が慣行区に比べ、分岐長・葉鞘径が大きく、さらに揃いが良くなり商品本数および商品重量が多くなりました。また、パラソイラー区がプラソイラー区に比べ、商品本数、商品収量がやや多い傾向が見られました(表2)。
 規格別本数割合は、耕盤破砕実施区は慣行区に比べL以上が多く外品が少ない傾向となりました。また、パラソイラー区がプラソイラー区に比べ、L以上割合が多い傾向が認められました(データー略)。

(表2) 収穫時の生育、1m当たりの収量
「表2収穫時の生育、1m当たりの収量」

 

 以上のことから、耕盤破砕によりねぎの生育、収量・品質の向上が確認されました。また、パラソイラー区がプラソイラー区より商品本数、商品重量が多く、L以上の割合が大きい傾向が認められたことから、パラソイラーの方が生育、収量・品質の向上効果が高いと思われます。

5 作業性

 施工速度は0.3m/秒で10a当たりに換算すると1時間以内であるため、作業効率は良好です。担当農家の意見でも負担は感じないとのことでした。

6 普及性

 今回の実証で排水不良に対する耕盤破砕の有効性を確認できました。作業も短時間で終了することから、産地でパラソイラー等を共同利用して 排水性改善に努めていただければと思います。

 残された課題としては、排水性改善効果の経年的な持続性、水田等の粘質土壌での実証等が考えられます。

 

【経営普及課 農業革新支援担当 増田 浩吉】

 

 

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