ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

【農業技術・経営情報】大豆・麦・そば:大豆ほ場での地力窒素供給力の低下と対応策について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0396605 更新日:2021年2月1日更新

1 大豆作での収量低下

 水田転換畑での大豆栽培では、連作を続けたり、作付け回数が増えると作付け当初に比べて小粒化したり、収量が低下したりする傾向が見られます。本県における昭和60年から平成24年までの28年間の大豆作について、10アール当たり県平均収量と大豆ほ場の連作割合の関係を見ると、連作を4年以上続けたほ場の作付け比率が高くなると収量が低く、逆の場合は収量が高い傾向が見られます(図1)。こうした要因として、大豆連作に伴う病害虫や雑草の多発生の他、土壌有機物の消耗による土壌の化学性(地力窒素供給力の低下など)、物理性(保水性、通気性の低下など)の変化が指摘されています。

「図1新潟県大豆作における連作4年以上作付け比率と10a当たり県平均収量の関係(昭和60年から平成24年の28年間)」
図1 新潟県大豆作における連作4年以上作付け比率と10a当たり県平均収量の関係
(昭和60年から平成24年の28年間)

2 大豆は地力消耗型の作物

 大豆は子実生産のため大量の窒素(子実100kg当たり8kg程度を必要とします。大豆が吸収する窒素の6割から8割は、根に共生している根粒菌から供給されるものの、残りは地力窒素 (注1) に依存しています。一方、吸収した窒素の大半はタンパク質として子実に蓄積し、収穫によりほ場外へ持ち出されることから、土壌中の窒素は減ることになります。平成20年に秋田県立大学が行った試験事例では、堆肥や化成肥料を施用していない灰色低地土の試験ほ場では、大豆収穫後の土壌中の窒素は10アール当たり9.4kgも減少していました(大豆収量10アール当たり345kg)。また、水田転換畑では水田に比べ土壌有機物の分解が促進されることから、大豆の作付け回数の増加にともなって土壌有機物が減少し、ほ場の地力窒素の供給力は低下していきます。
 新潟県農業総合研究所作物研究センターでは、センター内の水稲連作ほ場と水稲と大豆を25~26年間交互に作付けした田畑輪換ほ場の地力窒素量を調査しました。すると、田畑輪換ほ場では、水稲連作ほ場に比べて地力窒素量が大きく減少し、とくに生育後半(開花期から子実肥大盛期)の減少割合が大きい傾向を確認しました(図2)。
 生育後半の地力窒素量の少ないほ場では、莢数の減少や子実肥大の抑制による小粒化とともに、ちりめんしわ粒の発生による品質低下が懸念されます。なお、地力窒素低下の影響は土壌タイプで異なり、砂質で地力の低いほ場では早く顕在化してきます。

「図2大豆の作付け履歴と時期別地力窒素量」
図2 大豆の作付け履歴と時期別地力窒素量(平成24 服部ら)
注)作土0~15cm、下層15~25cm

3 土壌有機物の補給による地力窒素供給力の改善

 作物の肥培管理は、土壌分析により土壌の栄養状態を把握し、不足する栄養素を補給することが基本です。大豆の窒素栄養に関しては、根粒が大豆に窒素を供給している時期に化成肥料で窒素を施用すると根粒の活性を抑制してしまいます。地力窒素供給力が低下したほ場では土づくり効果の高い完熟した牛糞堆肥などの有機物を施用し、地力窒素供給力の回復を図ります。なお、堆肥の入手が困難な地域では、応急対応策としてシグモイド型被覆尿素肥料(注2)を利用すると根粒の着生や活性を阻害せず、子実肥大期の窒素供給を促進させる効果が期待できます。ただし、シグモイド型被覆尿素肥料は有機物のような総合的な土壌改善効果は期待できません。
 また、有機物の補給方法として緑肥の鋤込みも有効です。現在、新潟県では大豆作における緑肥(ヘアリーベッチ)の効果的な利用方法について研究に取り組んでいます。

4 肥培管理上の留意点

 水田を長年畑状態にしていると塩類が溶脱して、土壌の酸性化が進み、各種栄養素の吸収バランスが崩れるとともに、根粒の活性も低下します。このため、大豆作付け前には石灰質資材により、確実に土壌pHを6.0~6.5にして下さい。なお、大豆は3要素に加えてカルシウムを多く吸収しますが、近年、水稲作ではケイカルなど土づくり肥料の利用が大幅に減少していることから、石灰質資材は カルシウム補給にもなります。

注1 土壌有機物が分解し、作物が利用できるようになった無機態窒素のこと

注2 肥効調節型肥料のうち、施肥後の一定期間の窒素の肥効を抑制して後半の肥効を高めた肥料のこと(窒素の肥効曲線がS字形を示す肥料)

 

 

【経営普及課 農業革新支援担当 岩津 雅和】

 

 

一覧へ戻る

<外部リンク> 県公式SNS一覧へ