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【農業技術・経営情報】大豆・麦・そば:大豆ほ場の酸性土の矯正について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0396804 更新日:2021年2月1日更新

1 大豆ほ場での土壌pH低下

 作物の生育は、土壌の酸性の強さ(pHで表す)に左右されるため、土壌pHを適正に保つことは栽培管理の基本です。大豆の場合、生育に適した土壌pHは6.0~6.5ですが、近年、全国的に大豆の平均単収が低迷している一因として、大豆ほ場での土壌pHの低下が指摘されています。新潟県内でも各地の転換畑大豆ほ場で土壌pHを調査すると、土壌pHが5.5~5.0と低い酸性土のほ場が多く、一部で5.0を下回るほ場も確認されています。

2 土壌pHの低下(酸性化)要因

 転換畑大豆ほ場で土壌pHが低下する要因として、 (1)微酸性である雨水による塩基類(カリウム、カルシウム、マグネシウム)の溶脱(近年の酸性程度が強い酸性雨や酸性雪は、土壌の酸性化を助長する恐れがある。)(2)硫安、塩安、塩化カリなど土壌を酸性化する肥料の多投、(3)pHの変化を抑える効果のある有機物の田畑輪換に伴う減耗、(4)肥料高騰に伴う土づくり肥料施用量の減少などがあげられます。

3 大豆生産に及ぼす土壌pH低下の影響

 土壌pHが低下すると土壌中の塩基類が下層に溶脱し、リン酸はアルミニウムと結合して溶けにくくなるため、大豆への吸収が抑制されます。また、根粒菌の活性に関係する微量要素のモリブデンは、酸性になるほど吸収が抑制されるため、根粒菌から供給される窒素量が低下します。このように、土壌pHの低下に伴い大豆は栄養分の吸収が抑制されるため、生育が阻害され収量は低下します(表1)。また、生育初期に見られる大豆茎疫病は、過湿土壌やpH5.2前後の酸性土壌において発病が助長されます。

表1 土壌の酸性化によって予想されるダイズの減収程度
土壌のpH 好適pHと比べて想定される減収程度 (注 1)
畑土壌
(%) 
河川流域の沖積土壌
(%)
4.6 ~ 5.0 30 ~ 50 15 ~ 20
5.1 ~ 5.4 20 ~ 30 10 ~ 15
5.5 ~ 5.7 10 ~ 20 5 ~ 10
5.8 ~ 6.0 0 0

注 1)pH6~6.5 程度の好適下でのダイズ収量に対する減収程度を示す。
  2)Arkansas soybean handbook(2006)による
  3)島田信二:水田土壌の酸性化(低pH化)とダイズの生産性 農業技術体系作物編6

4 pH矯正の方法

 耕起前に土壌pHを測定し、適正範囲のpH6.0~6.5 を下回る場合は、石灰質肥料を施用してpH矯正を行います。適正範囲に矯正するために必要な石灰質肥料の量は、中和石灰量を測定して求めますが、めやすは土壌タイプ別に表2を参考にして下さい。また、石灰質肥料の種類によって、pH矯正の効果が異なりますので表3を参考にしてください。なお、土壌pHが極端に低く、pH矯正に多量の石灰質肥料が必要な場合は、数年に分けて施用してください。

表2 土壌タイプ別、pHを1.0上げるために必要な炭酸石灰(炭カル)施用量
土壌タイプ 炭酸石灰施用量(kg/10a) 同左平均(kg/10a)
沖積砂質土壌 60~100 80
三紀粘質土壌 110~145 130
沖積壌土・埴土 125~155 140
黒ボク土 230~265 250

注) 転作作物栽培指針 平成10年3月 新潟県農林水産部より

 

表3 石灰質肥料の種類と効果(石灰資材の選択方法)
肥料名 アルカリ分保証値(保証・下限) 炭酸石灰の施用量を1とした場合の必要資材量比 効果の
遅延
土づくり上の留意点
生石灰 80 0.66 速効性
  • 効き目が早く、高pH まで改良可能
  • 施用後、施肥、植え付けまで7~10日必要
  • 微量要素欠乏発生に注意
消石灰 60 0.88
炭酸石灰
(炭カル)
53 1 やや
遅効性
  • 三要素と同時施用
  • 施用後、直ちに作付けできる
  • 苦土石灰は苦土を同時施用できる
苦土石灰
(苦土炭カル)
55 0.96

注) 新潟県における土づくりのすすめ方 平成17年2月 新潟県農林水産部より一部改変

 

※参考文献
・島田信二:水田土壌の酸性化(低pH化)とダイズの生産性 農業技術体系作物編6(農文協)
・安田典夫:土壌pH農業技術体系土壌施肥編4(農文協)
・藤原俊六郎:新版図解土壌の基礎知識(農文協)

 

【経営普及課 農業革新支援担当 岩津 雅和】

 

 

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