ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

【農業技術・経営情報】病害虫:カメムシ類による斑点米の発生防止

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0352771 更新日:2021年9月16日更新

 平成24年度から毎年、斑点米カメムシ類の多発生に関する注意報が発表され、雑草管理と適期防除の実施を呼びかけていますが、斑点米による格落ちの被害は近年高止まりの傾向です。ここでは、カメムシ類による斑点米発生防止対策のポイントを紹介します。

1 斑点米を発生させるカメムシ類

 新潟県では、オオトゲシラホシカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメ(以降、アカヒゲ)、アカスジカスミカメ(アカスジ)が全県に分布し、佐渡や沿岸部ではホソハリカメムシの被害もみられます。(図1)

 近年の斑点米の多発生には、被害粒の加害部位やカメムシ類発生量の種類別年次推移などから、2種のカスミカメムシ類が大きく関与していると思われます。

図1「斑点米を発生させるカメムシ類」の写真
図1 斑点米を発生させるカメムシ類(新潟県病害虫防除所提供)

2 発生防止対策

(1)水田侵入前のカメムシ類の密度を抑制する

 斑点米カメムシ類は、イネの出穂前は主に農道・畦畔の雑草地に生息し、イネの出穂後に水田に侵入し、イネの穂を吸汁・加害します。出穂前の水田内にカメムシ類があまり侵入しないのは、イネの茎葉がカメムシにとって良い餌ではないからです。

 アカヒゲの幼虫に子実を与えずイネの苗だけで育てても、ほとんど成虫になれません(図2)。また、成虫の飼育をイネの苗だけで行うと、生存日数が短くなるだけでなく、1頭が1日に産む卵の数も少なくなります(図3)。玄米やコムギ種子を与えると逆の結果となり、斑点米カメムシ類にとってイネ科植物の種子が良質な餌であることがわかります。

図2「種子がアカヒゲ幼虫の発育に及ぼす影響」のグラフ
図2 種子がアカヒゲ幼虫の発育に及ぼす影響(石本、2008より作図)

 

図3「種子の有無がアカヒゲの産卵数と生存率に与える影響」のグラフ
図3 種子の有無がアカヒゲの産卵数と生存率に与える影響(石本、2008)

 雑草管理を行わない農道・畦畔では、いろんな種類のイネ科雑草が次々と出穂・結実するため、絶好の増殖の場になります。したがって、カメムシに良質な餌を与えないよう、5月下旬からイネ科雑草が結実しない間隔(およそ3週間)で、農道・畦畔等の除草を行います。地域で一斉に草刈りを行う場合は、6月中旬~下旬と7月中旬~下旬の2回行います。

(2)水田内の誘引源、増殖場所をなくす

 アカスジは、水田内でノビエやイヌホタルイなどのカヤツリグサ科雑草が出穂すると、それらに誘引されて産卵し水田内で増殖します。また、ホソハリカメムシもノビエの穂を好みます。水田内でこれらの雑草が繁茂すると斑点米が多発生しやすいため、本田の雑草対策を適切に行います。

(3)登熟期間の水田内カメムシ密度を抑制する

 出穂期7日後頃までのイネ穂への加害は、不稔や未熟粒となり、斑点米になりにくいので、薬剤散布はこれ以降のカメムシ密度の抑制を目的に行います。

 カメムシの種類や薬剤によって散布時期や回数が異なるので、問題となっているカメムシの種類に合わせた薬剤を選択し適期に散布します。アカヒゲとオオトゲシラホシカメムシなど、薬剤散布時期が違う複数種のカメムシが混発する場合、アカヒゲの防除対策に合わせて散布を行います。

 粉剤、液剤、微粒剤Fは畦畔も含めて、カメムシの生息場所によく届くよう散布を行います。水面施用粒剤は、イネに吸収された成分をカメムシが吸汁して効果を発揮します。薬剤成分がよく吸収されるよう、水深3cmの浅水条件で散布し、散布後7日間はかん水・落水を行いません。また、散布後に多量の雨が降ったり、日照が極端に少ないと防除効果が低下する場合があるので、散布後に好天が予想される日に散布します。

表 カメムシ類に対する薬剤散布の時期・回数
カメムシの種類 散布時期 回数
オオトゲシラホシカメムシ 穂ぞろい期 1回
アカヒゲホソミドリカスミカメ
アカスジカスミカメ
粉剤、液剤、微粒剤F
:出穂期3日後頃(穂ぞろい期)~出穂期7日後
粒剤:出穂期~出穂期7日後
1回
粉剤、乳剤
1回目:出穂期の7日後
2回目:1回目の7~10日後
2回
ホソハリカメムシ 1回目:穂ぞろい期
2回目:1回目の7~10日後
2回

アカヒゲ、アカスジに対しては、1回散布で対応が可能な薬剤と2回散布が必要な薬剤がある。

 

【経営普及課 農業革新支援担当(病害虫) 石川 浩司】

 

 

一覧へ戻る 

<外部リンク> 県公式SNS一覧へ