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【農業技術・経営情報】病害虫:農薬の安全性評価の仕組み

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0352757 更新日:2021年2月1日更新

 農薬は、その農薬を使用してもよい作物(適用作物)、対象となる病害虫、使用量又は希釈濃度、使用時期及び使用回数などの使用基準が決められていて、それらは必ず農薬の容器に記載されています。これらは、農薬の効果を発揮させるだけではなく、使用された農作物に残留する農薬の濃度が基準値以下になるように決められています。

 ここでは、農薬の安全性評価の仕組みについて、農薬の使用基準設定の流れ(図1)に沿って説明します。

図1農薬の使用基準設定の流れの図
図1 農薬の使用基準設定の流れ

1 毒性の評価

 農薬成分の毒性はラットやマウスなどの動物を用いて評価します。試験動物を、異なる量の農薬成分を与えるいくつかのグループに分け、それぞれのグループに所定の量の農薬成分を与えます。少量しか与えないグループでは全く影響が現れませんが、与える量が多くなるとどこかで悪い影響が現れてきます。このような試験から、悪い影響が現れない最大の摂取量(最大無作用量)を明らかにします。

図2最大無作用量の設定のグラフ
図2 最大無作用量の設定

 

 動物実験の結果を人間にあてはめるために、人間と動物の種の違いを考慮した安全係数を10 倍、人間の中でも性別、年齢など個人による感受性の違いを考慮した安全係数を10 倍とし、10×10=100 倍の安全係数が設けられています。動物試験で得られた最大無作用量の100分の1の量が、人間に対して安全な量として設定されます。

 この人間に対して安全な量は、毎日少量ずつ長期間にわたって摂取する場合の影響(1日摂取許容量)と一度にある程度多量に摂取した場合に短期間で現れる影響(急性参照用量)の2種類で評価されています。

2 作物別の摂取量

 塩のように調味料として使われ毒性の弱い物質でも、極めて多量に摂取すれば悪い影響が現れ、最悪の場合死んでしまいます。このように、ある科学物質を摂取した場合に悪い影響が現れるかどうかは、その科学物質が持っている毒性と、その科学物質をどれだけ摂取したかで決まります。そのため、農薬成分の毒性の他に、日本人がそれぞれの作物をどれだけ食べているかの情報が必要になります。農薬の使用基準の設定では、日本人が毎日食べる作物別の摂取量について、厚生労働省が行なっている国民栄養調査の結果を使っています。

3 作物別の残留試験

 農薬を散布した場合、いつまで、どれくらいの農薬が農作物に残留しているかは、農薬や作物の種類によって異なります。このため、散布回数や散布量・濃度などを変えて実際に作物に農薬を散布し、最終散布日から何日か毎に作物を収穫して残留している農薬の濃度を調べます。

4 使用基準の設定

 日本人が食べる作物別の摂取量から、人間に対して安全な量を超えないように、作物別に残留が許される農薬の濃度が設定されます。残留試験の結果から、この濃度を超えないように農薬の散布回数や散布量・濃度及び散布時期(収穫前日数など)などが設定されます。

5 終わりに

 このように、農薬は使用基準を守って適正に使用すれば、残留基準を超えることがないような仕組みになっています。逆に、適正に使用されないと、食品衛生法の残留基準値を超えて農薬が残留する可能性があり、残留基準値を超えた農作物は回収や廃棄の対象となります。

 残留基準値の超過事例では、勘違いなどによる農薬の誤った使い方が原因となることがあるため、農薬を使用する場合は農薬のラベルを確認してください。また、使用方法が変更になっている場合もあるので、最新の登録情報を必ず確認しましょう。

 農薬の使用記録を記帳しておくと、出荷先などの第三者が誤った農薬使用に気づき、残留基準値を超えた農産物が販売されるのを防げる場合があります。

【経営普及課 農業革新支援担当(病害虫)  石川 浩司】

 

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