ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

【農業技術・経営情報】病害虫:水稲の薬剤耐性菌発生防止の考え方

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0353299 更新日:2021年2月1日更新

 薬剤が効かなくなる薬剤耐性菌が発生・蔓延すると、防除効果が低下して被害が発生し、防除体系の再構築が必要となるなど大きな問題となります。これまでは、新たな薬剤の開発により問題が解決してきました。しかし、近年は農薬の登録規制強化などにより新しい薬剤の開発に時間がかかるため、新剤の開発による耐性菌問題の解決が難しくなってきています。したがって、既存の薬剤に対する耐性菌が発生しないよう対策を講じながら使うことがこれまで以上に求められています。

1 QoI(キューオーアイ)耐性菌の発生

 水稲の殺菌剤として使われているアミスター、嵐、イモチエース、オリブライト、イモチミンなどはQoI剤と呼ばれています。これらの薬剤は、一成分でいもち病や紋枯病など複数の病害に効果があるため、特別栽培米などで多く使用されています。2012年に福岡、大分県のQoI剤使用ほ場でいもち病の発生があり、菌を分離して検定した結果、QoI剤耐性菌であることが確認されました。その後、多くの府県で耐性菌の発生が確認されています(図1)。

図1QoI剤耐性いもち病菌の確認状況の図
図1QoI剤耐性いもち病菌の確認状況

 新潟県では、2015年に耐性菌が確認され、いもち病の防除薬剤としてQoI剤を使用しないようにお願いしています。

 QoI剤耐性菌は、QoI剤を使用した場合の防除効果は低いものの、ビーム水和剤、カスミン液剤など作用機構(※)の異なる薬剤では今までどおりの効果が確認されています。

2 耐性菌が発生・増加する仕組み

 薬剤耐性菌は突然変異などで発生し、菌の集団の中にごく僅かに存在していると考えられています。薬剤が使用されると、その薬剤に耐性を持たない菌(感受性菌)は薬剤の効果により数が減りますが、耐性菌には薬剤が効かないため菌の数は減りません。その結果、薬剤の使用前に比べて耐性菌の割合が高くなります。薬剤を繰り返し使うと、耐性菌の割合が年々高まります(図2)。

図2薬剤による耐性菌選択の模式図
図2 薬剤による耐性菌選択の模式図

3 耐性菌の発生防止対策

(1)耐性菌を持ち込まない

 いもち病は種子伝染するため、耐性菌が発生している県で生産された種子には耐性菌が潜んでいる可能性があります。種子は耐性菌の発生していない県のものを使用しましょう。特に、県外で生産された種子を入手する場合は注意が必要です。

(2)耐性菌を発生させない

 耐性菌は突然変異でごく低頻度ながら発生するので、病原菌の量が高い場合と少ない場合を比べると、病原菌の量が多い方がより多くの耐性菌が出現することになります。したがって、病害を多発生させないことが耐性菌の発生防止につながります。また、すでに耐性菌が発生している場合でも、多発生してからの防除では逆に耐性菌が残ってしまう可能性があります。

 多発生を防ぐには基本技術の徹底が重要です。いもち病の場合、(1)健全種子を使用し、適切な種子消毒を行う、(2)伝染源となる籾殻、稲わらを育苗ハウスに持ち込まない、(3)補植用苗の早期処分、(4)品種やほ場に応じた適期の薬剤防除などを行います。

(3)耐性菌を増やさない

 耐性菌は、耐性を持つ薬剤の使用により逆に増加してしまいます。このため、耐性菌が発生するリスクが高い薬剤をなるべく使用しないことが最も効果的な対策です。

ア 耐性菌リスクの低い他の薬剤に変更が可能な場合は他の薬剤を使用します。

イ 同じ作用機構の薬剤の連用を避け、作用機構の異なる薬剤とのローテーション使用をします。抵抗性を持つ病原菌は、類似の作用機構を持つ他の薬剤に対しても抵抗性を示す場合がほとんどです。同じ作用機構の薬剤を使用すると同じ薬剤を繰り返し使ったのと同様に、耐性菌が増えてしまいます。そのため、防除の計画をたてる際には、同じ作用機構の薬剤を使わないように注意します。

 県で作成している農作物病害虫雑草防除指針には、薬剤の作用機構を分類して表示してあるので参考にしてください。

 

(※)
作用機構とは、農薬がその効果を発揮するための特異的な作用をいう。

 

注)この資料は、平成30年4月1日現在の農薬登録情報を基に作成しています。農薬の使用に際しては、必ず最新の登録内容を確認して使用してください。

 

【経営普及課 農業革新支援担当(病害虫)  石川 浩司】

 

 

一覧へ戻る 

 

<外部リンク> 県公式SNS一覧へ