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【農業技術・経営情報】病害虫:大豆害虫マメシンクイガの生態と防除

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0352207 更新日:2021年2月1日更新

 マメシンクイガは幼虫が大豆の子実を加害する大豆の最重要害虫です(図1)。被害粒の割合が2%を超えると農産物検査で3等となるなど、大豆の収量と品質に影響します。

図1マメシンクイガによる子実被害の写真
図1マメシンクイガによる子実被害

 近年では平成24年度の発生が多く、著しい被害のほ場も見られました。その後、全体的な発生は多くありませんが、連作ほ場などを中心に大きな被害を受けたほ場も確認されています(図2)。

図2マメシンクイガ被害粒率の年次推移のグラフ
図2マメシンクイガ被害粒率の年次推移(病害虫防除所調査)

1 生態

 マメシンクイガは土中で前年の秋に作った土繭(図4)の中で幼虫として越冬し、ほ場に大豆が作付けされても幼虫のままで過ごします。幼虫は土中で日長の変化を感じ、短日条件になる7月~8月頃に土繭の中で蛹になります。マメシンクイガはこの仕組みによって幼虫の餌となる大豆の結実に成虫の発生時期を合わせていると考えられています。多くの虫では温度の高低によって生育が早くなったり遅くなったりするため気温の年次変動によって発生時期も変動しますが、マメシンクガは日長によって羽化時期が決定されるため気温の影響が少なく、成虫の発生時期の年次変動が小さいことが知られています。

図3マメシンクイガの発生消長(模式図)の画像
図3マメシンクイガの発生消長(模式図)

図4マメシンクイガの土繭(長径7mm程度)の写真
図4土繭(長径7mm程度)

 8月下旬頃から成虫が羽化(図5)し、大豆の茎、葉柄および莢に卵を産みつけます。卵からふ化した幼虫は莢に食入し、主に子実の合わせ目に沿って溝状に食害します(図1、6)。幼虫の成長には子実1粒あれば十分なため、通常は1頭の幼虫が1つの莢の子実のみを食害し他の莢に移動することはありません。ふ化してから約1か月で幼虫は老熟して体の色が鮮紅色になり(図7)、莢に穴をあけ外に出て土の中に入ります。地表から0~3cmくらいの深さの土中に、長さ7mm程度のだ円形の土繭を作り、老熟幼虫のまま越冬します。

図5マメシンクイガの成虫(体長6mm程度)の写真
図5成虫(体長6mm程度)

図6莢内の幼虫と子実の食害の写真
図6莢内の幼虫と子実の食害

図7老熟幼虫の写真
図7老熟幼虫

 このように、地上にいるのは8月の後半から9月末くらいまでで、1年のほとんどを土中で過ごしています。また、成虫の移動距離は短いため、発生ほ場への定着性の高い害虫と考えられます。このため、連作すると年々虫の発生量が増え、被害が増加します。

 逆に、初作ほ場では発生が少なく多発生することはありません。ただし、連作ほ場に隣接していると成虫が移動してきて、初作ほ場でも多発生する危険性があります。

2 防除対策

(1)水稲との輪作

 水稲作は極めて有効な耕種的防除法です。幼虫は土壌中に存在するため、水稲を作付すると長期間の湛水により幼虫の密度は著しく低下します。

 連作を続けて被害粒率で数十%を超えるような著しい多被害を受けたほ場では、翌年も多被害を受ける可能性が高く、薬剤防除を行っても十分な防除効果が得られない可能性が高いので水稲を作付け、密度抑制を図りましょう。その際、ブロックローテーションを行い、団地全体で水稲と輪作するとより効果が高まります。

(2)薬剤防除

 薬剤防除は、主にふ化した幼虫が莢に食入するのを防ぐために行います。このため、防除時期は産卵最盛期頃になります。前述のように成虫の発生時期の年次変動が少ないので防除時期の変動も少なく、防除は暦日を基準に設定して問題ありません。ただし、薬剤の種類によって、散布する時期が異なるので注意が必要です(表)。また、多発生時でも1回散布で対応が可能な薬剤と2回散布が必要になる薬剤があります。連作年数が長くなったり前年の被害の発生が多かったほ場や団地は、多発生になる可能性が高いので多発生にも対応できる防除対応を選択して下さい。

 マメシンクイガの対策には適期の薬剤散布が必要です。現地の防除履歴では、8月中旬に紫斑病の防除と同時に殺虫剤を散布している事例が多くみられます。マメシンクイガはまだ土の中にいて薬剤の残効期間も長くないので、この時期の殺虫剤散布はマメシンクイガの対策としては効果がありません。別途、マメシンクイガを対象とした防除を実施しましょう。

表 マメシンクイガの防除薬剤と散布時期(平成30年度新潟県農作物病害虫雑草防除指針による)
薬剤名 発生状況 8月 9月
第5半旬 第6半旬 第1半旬 第2半旬
エルサン乳剤
スミチオン乳剤
トレボン乳剤
トレボン粉剤DL
ダイアジノン粒剤5
ダイアジノン粒剤10
通常発生    
スミチオン乳剤は
第1半旬後半から
多発生    
アディオン乳剤
プレバソンフロアブル5
パーマチオン水和剤
通常発生  
アディオン乳剤
プレバソンフロアブル5
多発生      
パーマチオン水和剤    

多発生は被害粒率が10%を超える発生。

※この資料は、平成30年4月1日現在の農薬登録情報を基に作成しています。農薬の使用に際しては、必ず最新の登録内容を確認して使用してください。

【経営普及課 農業革新支援担当(病害虫) 石川 浩司】

 

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