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【農業技術・経営情報】病害虫:カスミカメムシ類の餌となるイネ科雑草を抑える畦畔の除草方法

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0351875 更新日:2021年2月1日更新

 近年、斑点米による格落ち率が高い状況で推移しています(図1)。近年の斑点米による格落ちには、斑点米の発生部位やカメムシ類発生量の種類別年次推移などから、アカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメの2種カスミカメ(図2)が大きく関与していると考えられています。

図1畦畦畔雑草地における平均すくい取り虫数と斑点米による格落ち率の年次推移のグラフ
図1 畦畔雑草地における平均すくい取り虫数と斑点米による格落ち率の年次推移(新潟県病害虫防除所)

図2斑点米を発生させるカメムシ類の写真
図2 斑点米を発生させるカメムシ類(画像提供:新潟県病害虫防除所)

 2種カスミカメは畦畔等のイネ科雑草の種子を餌にして増殖し、出穂後のイネを加害して斑点米を発生させます。そのため、カメムシ類対策の畦畔管理はイネ科雑草を出穂させない間隔で草刈りをすることが大切です。ここでは、イネ科以外の雑草を温存して、イネ科雑草の繁茂を抑える畦畔の除草方法を紹介します。

1 畦畔イネ科雑草の状態とカスミカメムシの発生量

 イネ科雑草が出穂した畦畔では、2種カスミカメの発生量は多い状態で推移しますが、穂が無くなった7 月中下旬頃には一時的に少なくなっています。一方、イネ科雑草が出穂していない畦畔では2種カスミカメの発生量は極めて少なく維持されています(図3)。

 これは、2種カスミカメが良質な餌である出穂したイネ科雑草のある場所に移動しているためと思われます。

図3畦畔のイネ科雑草の状態と2種カスミカメすくい取り数の推移のグラフ
図3 畦畔のイネ科雑草の状態と2種カスミカメすくい取り数の推移
(新潟県農業総合研究所作物研究センター 平成25年度研究情報)

2 管理方法の違いが畦畔の植生に与える影響

 畦畔の管理方法によって、イネ科とイネ科以外の雑草の生え方は異なってきます(図4)。

図4管理方法の違いによる夏の畦畔の植生
図4 管理方法の違いによる夏の畦畔の植生
(新潟県農業総合研究所作物研究センター 平成29年度研究成果情報)

高刈り:5月からおよそ1か月間隔で地際から10cm程度離して雑草を刈った。
地際刈り:5月からおよそ1か月間隔で地際から雑草を刈った。
除草剤+地際刈り:4月下旬頃に除草剤を散布し、6月からは地際から雑草を刈った。

 4月下旬頃に雑草の根まで枯らす非選択性の茎葉処理除草剤を散布し、6月以降からは雑草を地際から刈った「除草剤+地際刈り区」は、カスミカメムシ類が好むイネ科雑草が優占する畦畔になっています。除草剤を使わず、5月からおよそ1か月間隔で草刈りを行った「高刈り区」、「地際刈り区」は、イネ科以外の雑草が多く、カスミカメムシ類の増殖にあまり適さない畦畔になっています。また、「高刈り区」は「地際刈り区」に比べイネ科雑草が少なくなっています。

 静岡県の試験事例では、高刈りを行って植生を維持するとクモなどの土着天敵が増え、地際刈りや除草剤で畦畔を管理した場合よりカメムシ類の個体数が減ると報告されています。

 図5地際刈りと高刈りの図
図5 地際刈りと高刈り

3 注意点

 高刈りは、イネ科以外の雑草を温存し、イネ科雑草が少なくなることで、斑点米カメムシ類が増殖しにくくなる効果が期待できます。

 しかし、非選択性の茎葉処理除草剤を使用するなどして、すでにイネ科雑草が優占してしまった畦畔は、高刈りを行ってからイネ科以外の雑草が優占するまで2年程度必要な事例もあります。また、一度出穂するまでに生育したイネ科雑草は、高刈りしても早い時期に再び出穂してしまうため、こまめな草刈りが必要です。

 

【経営普及課 農業革新支援担当(病害虫) 石川 浩司】

 

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