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【農業技術・経営情報】病害虫:イチジク株枯病の発生生態と防除対策

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0396862 更新日:2021年2月1日更新

1. 病原菌

 Ceratocystis ficicola

2. 発生経過

 平成18年9月、新発田市および聖籠町で栽培されているいちじく「品種:桝井ドーフィン」の成木が落葉し、立枯症状を呈しているのが発見されました。
 新潟県農業総合研究所園芸研究センター環境科にて診断したところ、本県では未発生のイチジク株枯病(以下:株枯病)と確認されました。また、普及指導センター等からの聞き取り調査では、本県においては同一の症状が平成15年頃から確認され始めています。
 なお、本病は昭和56年に我が国では愛知県で初めて発見され、現在では全国のいちじく産地で発見されています。近年では平成23年に宮城県、平成27年に秋田県において、発生の報告があります。

3. 本病の特徴

(1)病徴

 地際部が侵されるため、幼木では、最初、新梢先端の葉が日中萎凋します(図1)。
 萎凋と回復を繰り返して、下葉から順次黄化落葉します。成木では、地際部に不規則な大型円形病斑を生じ、内部が茶褐色~黒褐色に腐敗します。病斑を生じた側の枝が日中萎凋し、病斑が周囲を取り巻くと全体が萎凋枯死します。病斑部には高湿度条件下で黒色毛髪状の突出した頚部を有する子のう殻が多数生じます(図2)。

図1「株枯病による萎凋症状」
図1:株枯病による萎凋症状
 

図2「根部上の子のう殻と分生子塊」
図2:根部上の子のう殻と分生子塊

 

(2)伝染方法

 土壌伝染、苗木伝染します。病斑上に形成された胞子が風雨などによって飛散します。またアイノキクイムシが本病原菌を保菌し媒介します。

(3)品種間差異

 本病の発生は、県内の主要品種「桝井ドーフィン」および「蓬莱柿」ともに見られますが、病気の進展は「桝井ドーフィン」のほうが早いです。また、本病原菌はイチジクのほかにクワ、シラカシ、クロマツ、カラマツを侵します。

(4)他病害との相違点

 葉の黄化萎凋は他の病害でも見られますが、疫病は主幹に病斑を生じ病斑部が軟化腐敗すること、また、白紋羽病は地下部の幹や根の表面に白色根状菌糸束がまん延することから本病と区別できます。

4. 発生実態

 本県におけるイチジクの株枯症状は、平成15年頃から上越市で確認されています。平成18年度に実施した普及センターの調査によると、イチジクの栽培面積の約11%(255a)で株枯症状(株枯病を含む)の発生が確認されています(データ略)。
 イチジク株枯症状の発生ほ場から土壌を採取して、株枯病菌の検出を試みました。その結果、調査した11地点15か所の土壌のうち、7地点10か所から株枯病菌が検出されました。このことから、イチジクの株枯症状の主な原因は株枯病によると考えられ、株枯病は県内各地に広く分布すると推定されました(表)。

表 検定土壌の来歴とイチジク株枯病菌検出結果(平成18年度病害虫防除所調査)
「検定土壌の来歴とイチジク株枯病菌検出結果(平成18年度病害虫防除所調査)」の表

 

5. 防除対策

  1. 必ず健全な苗木を植栽します。本病の発生ほ場では苗木育成しない。
  2. 発病株は直ちに根ごと抜き取りほ場外で適正に処分します。その後、定植する場合は株枯病抵抗性台木(「イスキアブラック」または「キバル」)を利用します。
  3. 発病樹の根部や表層15cmまでの土壌は病原菌に汚染されているため、汚染土壌を除去し汚染されていない土壌を客土します。
  4. 発病株の周囲にある健全株に対しては薬剤防除を行います。登録殺菌剤(令和元年6月25日現在)としてチオファネートメチル水和剤、トリフルミゾール水和剤、チオファネートメチル・トリフルミゾール水和剤、無機銅水和剤、ベノミル水和剤およびテブコナゾール水和剤があります。これらの殺菌剤を感染時期である5~10月に株元灌注します。但し収穫前日数と散布回数に注意します。
  5. 病原菌を媒介するキクイムシ類が寄生しないように樹勢の維持に努めます。殺虫剤であるMEP乳剤を主幹部に塗布します。
  6. なお農薬の使用にあたっては、最新の農薬の登録状況を必ず確認してください。

 

【経営普及課 農業革新担当(病害虫) 棚橋 恵】

 

 

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