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【農業技術・経営情報】病害虫:着色米の対策について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0397905 更新日:2021年2月1日更新

 米の農産物検査においては、粒面の全部または一部が着色し、搗精しても着色が除けないものは「着色粒」に区分され格下げの要因となってしまいます。平成24年は着色粒の発生が多く、問題となりました。
 玄米が着色する原因は様々あり、農産物検査ではカメムシ類による「斑点米」も着色粒に含まれますが、本稿では「斑点米」以外の着色粒について紹介します(「斑点米」と区別するために“着色米”と表現します)。
 新潟県における着色米の多くは病害(病名は「褐色米」や「腹黒米」と呼ばれます)であることが確認されています。県内では「褐色米」の発生が大部分を占めますので、「2 発生原因」以降については「褐色米」を中心に紹介します。

1 平成24年に確認された着色米について

 (1)病名「褐色米」、「腹黒米」

 「褐色米」は玄米全体が淡褐色~暗褐色になる病害です。表面に黒褐色小斑点を伴うこともあります。病原菌には「カーブラリア菌」、「アルタナリア菌」と呼ばれる種類のものがあります。
 「腹黒米」も「褐色米」の病原菌とは別の「アルタナリア菌」が原因となり着色する病気で、玄米の腹部分が褐色になり、ここを中心に褐変が広がります。

「図1褐色米(左2粒:褐色米、右2粒:健全米)」
図1 褐色米(左2粒:褐色米、右2粒:健全米)

「図2腹黒米」
図2 腹黒米

(2)原因不明の症状

 「こしいぶき」で発生が多く見られました。玄米の側面に淡褐色の斑紋があり、一見するとカメムシ類による「斑点米」に似ています。しかし、吸汁痕がない点や発生位置が異なる点、玄米内部の変質が見られない点で「斑点米」とは異なります。病害による症状ではないことが確認されていますが、発生原因は今のところわかっていません。

「図3原因不明の症状」
図3 原因不明の症状

2 発生原因

 平成24年に発生した着色米からは、「褐色米」の原因菌であるカーブラリア属菌やアルタナリア属菌が多く分離されており、「褐色米」が主な原因と考えられます。これらの菌は一般に病原性は弱く、イネや畦畔雑草の枯葉などの上で腐生生活を営み、枯れ込みが進むほど多量の胞子を形成します。形成された胞子が飛散して出穂後、特に開花中の頴内に落下して感染します。侵入した病原菌は登熟中期頃になって玄米を侵し始め、感染の約30日後頃から症状が認められるようになります。

3 「褐色米」の多発要因

 「褐色米」は夏季に高温・乾燥条件となったりフェーン現象に遭うと発生しやすくなります。このような条件では、イネの老化が進み抵抗力が低下したり、イネの下葉の枯れ上がりが増加します。雑草やイネの枯死葉には多量の胞子が形成されるため、出穂期頃に雑草の枯死葉が多く残る条件でも褐色米が多発します。また、出穂後の早期落水も多発生につながります。さらに、倒伏や刈り遅れは発生を助長し、収穫後は籾水分が高い状態に置くと症状が進みます。

「図4褐色米の多発要因(想定模式図、竹谷ら1981)」
図4 褐色米の多発要因(想定模式図、竹谷ら1981)

4 「褐色米」の発生防止対策

 「褐色米」の発生を抑制するには、伝染源量の抑制やイネの体質健全化などの耕種的防除を基本とし、多発生した地域では薬剤防除を組み合わせる必要があります。
 地力維持や適切な施肥・中干し等の基本的な栽培管理を徹底することで、イネの体質を健全に維持し、下葉の枯れ上がりを防止します。また、出穂後の早期落水を避け、イネの活力維持を図り、フェーン現象が予測される場合には湛水等の適切な水管理を行います。
 畦畔等の枯死雑草も伝染源になりますので、出穂期頃に畦畔の枯死雑草が少なくなるように除草管理をします。除草剤による畦畔除草を行う場合は、出穂期の1か月前までに行います。草刈り機で除草する場合も、出穂直前には草刈りをしないようにし、また、刈った草は持ち出すなどして処分します。通常、斑点米カメムシ類対策として行われている地域一斉の草刈りを徹底することが、褐色米の発生防止にも有効です。
 また、適期収穫に努め、籾水分が高い条件での刈り取りを避けましょう。収穫後は籾の乾燥を徹底しましょう。
 毎年被害が発生する地域や、前年度に被害の多かった地域では、「変色米(カーブラリア菌)」※ や「変色米(アルタナリア菌)」※ に登録のある殺菌剤による防除を考慮してください。
(※:農薬の適用病害名が「変色米(○○菌)」という登録となっています。)

 

【経営普及課農業革新支援担当 堀 武志】

 

 

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