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【農業技術・経営情報】病害虫:ばか苗病の発生防止対策

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0353250 更新日:2021年2月1日更新

 近年、ばか苗病の発生が増加傾向にあります。発病事例の種子消毒方法は「温湯消毒のみ」や「生物農薬のみ」の割合が高く、温湯消毒や生物農薬の導入面積の拡大が発生増加の1要因と考えられます。

 そこで、化学合成農薬を使用しない場合のばか苗病発生防止のポイントを紹介します。

1 温湯消毒、生物農薬の特徴

(1)温湯消毒

 温湯消毒は60℃のお湯に10~15分間種子を漬け、熱により種子に存在する病原菌を減らします。

 化学合成農薬と比較すると防除効果が劣る試験事例が多く、特に処理時間が10分より短くなると防除効果が低くなります(図1)。また、消毒効果は温湯に漬けている間のみで、処理方法が不適切で病原菌が残ってしまった場合や、消毒後に病原菌に再汚染された場合は防除効果がありません。

図1温湯消毒(60℃)の処理時間と防除効果のグラフ
図1 温湯消毒(60℃)の処理時間と防除効果(作物研究センター)
(箱は第1四分位点及び第3四分位点、ひげは最小値と最大値を表示。nは試験回数。)

(2)生物農薬

 生物農薬は拮抗微生物が種子上で増殖・優占することで病原菌の増殖を抑え発病を抑制します。化学合成農薬に比べ防除効果はやや劣ります。種子の保菌程度が高い場合や、処理から育苗初期までが低温になるなど拮抗微生物の増殖が不十分な条件では防除効果が低下します。

2 ばか苗病菌の増殖・感染

 ばか苗病はカビの一種であるばか苗病菌の感染により起こります。浸種・催芽水の中にばか苗病菌が存在すると、浸種、催芽中に菌が増殖し健全な籾に感染します。また、感染は出芽中までで、出芽後に発病した苗から周囲の健全苗に感染することはありません。したがって、浸種・催芽水へのばか苗病菌の侵入(持ち込み)・増殖防止が重要になります。

3 対策

(1) 健全種子を使い、種子消毒を行います。温湯消毒では温度、時間、一度に処理する種籾の量などを、生物農薬の処理では処理 時期、濃度、薬液量、温度などを適切に管理します。

(2) 温湯消毒と生物農薬の体系処理を行うと、単独処理に比べ高い防除効果が得られます(図2)。

図2温湯消毒(60℃)にタラロマイセス・フラバス水和剤処理を組合せた防除効果のグラフ

図2 温湯消毒(60℃)にタラロマイセス・フラバス水和剤処理を組合せた防除効果(作物研究センター)

(3) 伝染源である、保菌種子、発病イネの残渣(稲わら、籾殻、米ぬか、乾燥調整の際に出る残渣の混じったゴミ等)と種子が接触したり、浸種水槽に入らないよう対策を行います。

  • 消毒済みの種子は清潔なところで管理する。
  • 自家採種種子や消毒が十分でない種子を購入種子と一緒に浸種しない。
  • ばか苗病に罹り病した籾殻(くん炭も含む)・米ぬか等を育苗資材として利用しない。
  • 作業場の籾殻・米ぬかを早めに処分し、育苗環境からの汚染源の除去に努める。また、浸種をそれらと離れた場所で行う。

(4) ばか苗病菌の生育に最適な温度は26℃前後で、適温から離れるほど生育しにくくなるので、ばか苗病が増殖しにくい温度管理をします。浸種の温度は、出芽率や生物農薬の効果が低下しない範囲でなるべく低くします。また、催芽の温度は30℃程度とし、これより低くならないようにします。

4 終わりに

 同一ロットの温湯消毒済み種子を用いても、農家単位でばか苗病の発病程度が大きく異ななったり、種子更新を行い種子消毒しているのに毎年ばか苗病が発生してしまう事例があります。これらの原因として、今回紹介したような「消毒後の病原菌による再汚染」や「浸種・催芽・出芽時の温度条件」が影響した可能性が考えられます。もう一度、自分の育苗環境をチェックし問題点を改善して、ばか苗病の発生を防ぎましょう。

【経営普及課 農業革新支援担当  石川 浩司】

 

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