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【農業技術・経営情報】担い手育成:新規参入者の早期経営確立のためのポイント

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0398214 更新日:2021年2月1日更新

 近年、農業や食に関心を持つ若者が増加しており、農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)制度の後押しもあって新規参入者は増加傾向です。しかし、新規参入者の経営を見てみると、就農初年目から計画どおりの農業所得を上げているケースは多くありません。
 そこで、新規参入された方に対して就農してからできるだけ早く所得目標を達成するためのポイントを紹介しますので、参考にしてください。

1 所得目標を達成できない理由

 平成26年度に過去5年間の新規参入者を対象に行ったアンケートの中で、農業所得の目標を達成できない理由をあげてもらったものが下のグラフです。一番多い理由は「栽培技術の未熟さ」です。栽培技術の未熟さにより、目標とした収量や品質を確保できずに売上げ目標を達成できていないことが伺われます。
 次いで、「農地が集まらない」と「労働力が足りない」という理由をあげる者が多く、「販売が思うようにいかない」と「設備投資資金の不足」と続きます。

「農業所得確保のための問題点」

 

2 早く所得を確保するためのポイント

【ポイント1】 栽培技術の未熟さを補うためプロ農家の力を借りる

 農業は天候に左右され、農作物の生育の様子が違ってきます。新規参入者は、就農前の研修で栽培技術を習得したと思っていても、数年間の研修ではどんな条件でも安定して生産できる技術を身につけることは難しいのが現実です。さらに、研修したほ場と土壌条件などが違えばなおさらです。
 新規参入者は経験が浅いため、農作物を見る目が充分養われていません。栽培技術に関しては、やはりプロ農家の力を借りましょう。研修先が近くにいれば時々アドバイスをもらい、研修先が近くにいなければ近所で上手に栽培している農家を紹介してもらい、相談してください。さらに、JAや普及指導センターから専門的なアドバイスを受けることも有効です。栽培に関する相談は、日頃から早めにすることが失敗しないポイントです。

【ポイント2】 地域から信頼され条件の良い農地を確保する

 農地の貸借については、農業委員会に相談することになります。しかし、農家は農地に愛着を持っており、誰にでも貸すわけではありません。近年は、耕作放棄地が増加しているため、簡単に貸してもらえると思っている新規参入者もいます。
 しかし、ほ場条件が悪くて耕作放棄地になっているほ場もあるので、やみくもに農地を借りてしまうと後で苦労することになります。条件のよい農地を借りるためには、日頃から次のことを心掛けて、地域の農家から信頼してもらうように努めてください。

  1. 地域の農家には必ずあいさつする
  2. 地域の行事に積極的に参加する
  3. 借りたほ場をきちんと管理する(草だらけにしない)

 また、確保できそうな農地がある場合は、普及指導センターやJA等から栽培に適しているか事前にアドバイスをもらってください。

【ポイント3】 いざというときの労働力を考えておく

 就農してみて、労働力が足りないと感じる新規参入者は意外に多くいます。それは、自分の作業スピードがプロ農家と比べて遅かったり、農作業すべての段取りを一人で行わなければならないため、就農前に想定していた労働時間以上に作業時間がかかってしまうからだと思われます。
 そんなとき頼りになるのが家族や仲間です。農作業が間に合わずに生育不良にしてしまったり、病害虫の発生を招いてしまわないように、いざというときの労働力を準備しておくことは重要です。いざとなったら助けてもらうように家族の理解を得ておいたり、家族が近くにいなければ手伝ってくれる仲間を作っておきましょう。
 雇用労力で労働力不足を補おうとする人もいますが、雇用労賃を支出して収益を確保できるかをよく考える必要があります。

【ポイント4】 初期投資をできるだけ抑える

 自己資金の少ない新規参入者にとって、農業機械等を確保することは頭の痛い問題です。就農初期段階から所得を確保するためには、初期投資をできるだけ抑えることがポイントとなります。まずは地域の農家から農業機械を借りることを考えてください。上手くいけば、離農する農家等から安く譲り受けることができるかもしれません。そのためには、農地の確保と同様に地域の農家に自分を知ってもらい、信頼されることが大切となってきます。
 就農準備のための制度資金もありますが、就農間もない経営に負債としてのしかかってきます。制度資金を利用する場合は、綿密な収支計画と償還計画を立てた上で検討してください。

【ポイント5】確実で効率的な販売先を確保する

 販売方法には、大きく分けてJAへの系統出荷と直売所等での直接販売の2つの方法があります。新規参入者は、JAへの系統出荷より直売所等での直接販売を志向する人が多い傾向がありますが、就農当初は栽培管理の作業時間を確保しやすいJAへの系統出荷が有利な場合があります。どちらの方法にもメリットとデメリットがありますので、地域農業の概要や自分の就農ビジョン及び経営規模等に応じて販売先を選定する必要があります。農業所得の確保のためには、確実で効率的な販売先の確保がカギを握っています。

◇直接販売と系統出荷のメリットとデメリット
販売方法 メリット デメリット
直売所等での直接販売
(インターネット販売や個別宅配を含む)
  • 個人のこだわり栽培等による有利販売が可能
  • 価格を自分で設定できる
  • 一般的に出荷経費(出荷資材や手数料等)が少ない
  • 直売所への配送から陳列、売れ残りの回収等の手間が掛かる
  • 輸送手段の手配や費用負担がある
  • 代金回収のリスクがある
  • クレーム対応を個人で行わなければならない
JAへの系統出荷
  • 販売に係る手間が比較的少なく生産に集中できる
  • 地域のブランド力を活かして有利販売できる
  • 代金回収のリスクがない
  • 価格を自分で決められない
  • 一般的に出荷経費(出荷資材や手数料等)が多い
  • 個人のこだわり栽培等を活かせない

 

3 まとめ

 農業所得の確保とは直接つながりませんが、なんでも相談できる仲間がいるということも、新規参入者が定着していく上では重要なポイントと考えられます。県内にも新規参入者が増えてきました。各地域で新規就農者交流会を行っていますので、仲間づくりや様々な情報収集のためにも是非参加してください。
 また、農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)は就農初期段階の所得を補う制度として、新規就農者の定着に役立っています。しかし、それに甘えていては立派な農業経営者にはなれないと思います。決して簡単ではないと思いますが、一日も早く農業経営で自立することを目指し、努力しましょう。その努力が、あなたのあとに続く新規参入者の増加や、地域農業の活性化にもつながっていくものと信じています。

【参考資料】
・初年度から黒字経営の新規就農者の要因分析調査結果(全国農業会議所平成25年3月)

 

【経営普及課 農業革新支援担当 鶴巻 雅幸】

 

 

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