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【農業技術・経営情報】麦:小麦「ゆきちから」の安定栽培法

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0345379 更新日:2023年6月28日更新

 新潟県における小麦栽培は、昭和初期には3,000ha以上の作付けがありましたが、収穫が梅雨と重なり作柄や品質が安定しないこと、田植えの早期化に伴い、冬作物の作付けが減少したことなど、その時々の農業情勢に伴って、平成9年には本県小麦作付面積は0となりました。その後もしばらく小麦の作付けは見られない状況が続きました。

 近年、消費者の国産志向や県内実需者による地元産小麦を使ったパンや醤油作りの取組みなどから、新潟県産小麦の生産要望が高まってきました。平成24年産から生産量は徐々に増え始め、平成29年産では60ha、145tの生産量まで拡大しました(写真)。

新潟県内で増え始めた小麦生産の写真
写真 新潟県内で増え始めた小麦生産

 現在県内で作付されている小麦品種は、主に「ゆきちから」です。耐寒雪性、耐倒伏性に優れ、製パン適性に優れた品種です。「ゆきちから」の高品質安定栽培のポイントを以下に記載します。

1 水稲の落水後は暗きょ栓を開放する

 麦の播種精度や出芽は、ほ場の乾きが悪いと大きく低下します。作付ほ場の前作が水稲の場合、稲刈り後の水田は、地表が稲わらで覆われ、ほ場の乾きが悪くなります。秋は降雨日が多く、晴天が続くとは限りません。水稲の落水後は早めに暗きょ栓を開放して、ほ場を乾かし、稲刈り後はできるだけ早く、周囲明きょ・弾丸暗きょなどの排水対策を実施し、地表に雨水が滞水しないよう管理します。

2 積雪地帯別の播種適期を厳守!

 播種が遅れると越冬前の生育量が不足して雪害が大きくなります。また、初期に発生する分げつは結実の良い大きな穂になりますが、越冬前後に発生した分げつは弱小穂や遅れ穂となり、未熟粒の発生が多くなります。表1に示す積雪地帯別の播種適期を厳守し、早期に強健な良質茎を確保しましょう。

表1 地域別の播種適期と越冬前の生育指標 (小麦)
地帯 根雪日数 播種期 越冬前の生育指標
中雪地帯
少雪地帯
少雪地帯 (佐渡)
60~90日
30~60日
30日未満
9月25日~10月5日
9月25日~10月15日
9月25日~10月20日
葉数6葉以上、乾物重35g/100株以上
葉数5葉以上、乾物重15g/100株以上
葉数4葉以上、乾物重10g/100株以上

3 秋季追肥の積極的施用

 秋期追肥は、苗立ち不良や黄化対策として有効です。播種後の目標苗立数は平方メートルあたり約200本です。150本を下回るような場合や播種が適期よりも遅れた場合は秋期追肥を積極的に施用しましょう。良質茎の早期確保を図るため、施用は苗立数が確定する播種後2週間をめやすに行います。また、葉の黄化は窒素不足や湿害が原因で発生します。黄化症状が見られたら、排水を改善した後、遅くとも11月中旬までに秋期追肥を施用します。秋季追肥の施用量が多すぎると耐雪性が低下するので、窒素成分で10aあたり2kg程度とします。

4 越冬後追肥による収量・品質の確保

 越冬後の追肥は、1回目は消雪直後、2回目は茎立期、3回目は止葉抽出期、4回目は穂揃期に施用します。施用量のめやすを表2に示します。「ゆきちから」はパン用小麦として加工利用されるため、穂揃期の追肥によって、タンパク質含有率を11.5~14.0%を目標に高める必要があります。

表2 越冬後追肥のめやす
追肥時期 10a
追肥成分量
備考
消雪直後 窒素3kg
加里2~3kg
生育過剰な場合、消雪直後と茎立期の追肥を合わせ、
3~5kgの範囲で調節する。
越冬後茎数が700~1000本の場合は幼穂形成期(幼穂1mm~)、
越冬後茎数が1000本以上の場合は茎立期に追肥する。
茎立期 窒素1~2kg
止葉抽出期 窒素2~3kg以下 茎数が多い場合は減肥する。
穂揃期 窒素4~6kg タンパク含有率が高まり、製パン適性が向上する。

5 雑草管理と赤かび病防除

 麦ほ場に発生する雑草は、秋から発生して越冬後には生育が旺盛となり、麦と養分競合して減収を招きます。そのため、越冬前からの雑草防除が特に大切です。播種後は土壌処理除草剤を処理して、雑草の発生を抑えます。越冬後も雑草が多く残る場合は、草種に応じた生育期処理除草剤を処理し、麦と雑草の競合を回避します。

 赤かび病は小麦が出穂した後、開花期から乳熟期に穂に感染して減収と品質低下を引き起こします。出穂から乳熟期に雨が多く、気温が高い年に発生が多くなります。「ゆきちから」は赤かび病に弱い品種なので3回防除を行います。1回目は開花期(出穂期の7~10日後頃)、2回目は1回目の7~10日後、3回目は2回目の7~10日後に行います。農産物検査では赤かび粒の混入限度は0.0%であり、これを越えると規格外になるので必ず薬剤防除を行って下さい。

【経営普及課 農業革新支援担当 服部 誠】

 

 

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