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【農業技術・経営情報】大豆・麦・そば:大麦生産の復活に向けて-年内(越冬前)の栽培管理のポイント-

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0395958 更新日:2021年2月1日更新

1 新潟県における大麦生産の現状

 六条大麦(以降「大麦」という。)は、小麦と比べて成熟が早く、本格的な梅雨に入る前に収穫できることから、県内では冬作用の水田転換作物として広く栽培されてきました。しかし、作付面積は平成元年の4,650haをピークに減少が続き、平成24年には223haまで減少しています。平成23年に県内大麦生産者を対象に行った“大麦生産振興に資するアンケート調査”によると、大麦作の作付が減少している要因は、品質が上がらず収量の年次間の差が大きいため収益性が低く不安定なことや、技術的に排水対策や適期の管理作業が十分実施できていないことなどが挙げられています。
 北陸地域は、10年程前に大麦品種の大半が「ミノリムギ」から「ファイバースノウ」に替りましたが、県内では地元実需者からの強い要望に応え、現在も全量「ミノリムギ」を生産しています。「ミノリムギ」は一次加工での歩留まりが高く、精白すると独特の乳白色を呈することが高く評価されています。しかし、作付面積の減少により生産量は減少し、平成16年産以降、集荷数量が購入希望数量を大幅に下回る状況が続いていることから、供給量の増大が求められています(図1)。

「図1新潟県産大麦の需要と供給(全農にいがた資料より作成)」
図1 新潟県産大麦の需要と供給(全農にいがた資料より作成)

2 収益構造から見ると

 大麦は米、大豆等に比べて10アール当たりの生産費は低いものの、販売単価も安いため、通常、生産物収入のみでは生産コストを下回ります。しかし、収量・品質が一定の水準(等級割合と品質評価区分により異なる)を超えてくると経営所得安定対策の交付金のうち、収量・品質に応じて支払われる助成金が増加して収支が改善します。例えば、10アール当たり収量350kg 、1等比率 50%、品質評価Bランクでは、収入(生産物販売代金と国からの助成金)から経費を引いた所得は10アール当たり49千円程度となり、市町村再生協議会からの助成金がある場合(金額は再生協議会毎に異なる)は米を上回る所得の確保が見込めます。

3 収量・品質安定のために 越冬前の適正生育量確保

 生産現場で収量、品質の良否を見比べると、適期 は種により、越冬前に適正な生育量(表1)を確保できたほ場で良い結果が得られています。収量に最も大きく寄与する収量構成要素は穂数であり、充実した穂の多くは、越冬前に得られた主茎、分げつから確保されます。は種の遅れや湿害により、越冬前に生育量が不足している場合、越冬後に発生した弱小分げつに穂がついて穂揃いが悪くなり、細麦や白未熟粒の混入等で、収量・品質が低下します。逆に、は種が早過ぎたり、多肥で越冬前の生育量が過剰になると大麦の越冬体勢が損なわれ、雪腐れ病の多発などで大きなダメージを受けてしまいます。
 また、水田転換畑では排水不良による湿害が生じやすく、本県では10月下旬以降は降雨日が多くなることから、排水対策を徹底し出芽・苗立ち、初期生育を安定化させることも重要です。

4 基本技術を実行し、安定多収の実現により、大麦を経営の柱に!

 越冬前に適正な生育量を確保するためには、ほ場条件、気象条件を考慮して、大麦がすくすく育つような栽培環境を十分整えることが重要です。
 技術対策のポイントは、(1)前作の水稲収穫後、直ちに明きょ、補助暗きょを施工してほ場の排水性を確保する、(2)酸度矯正を行い土壌pHを6.5に調整する、(3) は種作業は地域の根雪日数に応じた は種適期期間中に行う(表1、表2)、(4)丁寧な耕うんで土塊をできるだけ小さくする(2cm以下の土塊が7割以上)、(5) は種方式は生育が揃うドリル播きとし、は種後に除草剤を散布する、(6) は種1ヶ月後を目途に秋期追肥を行うことなどです。
 これらの作業を順調に行うためには、予め他作目も含めた土地利用計画、作業計画をしっかり立てることが重要です。とくに大麦のほ場は水稲早生品種跡に団地化することを土地利用計画の基本に据えて下さい。計画的な管理により基本技術を実行し高品質・安定多収を実現できれば、水稲作と作業機が共用できる大麦の利点が活かされ、農地や経営資産の有効利用並びに作業分散が図れる作目として、経営の柱の一つになります。

表1 地域別の は種適期と越冬前の生育指標
地帯 根雪日数 は種期 越冬前の生育指標
中雪地帯 90日以上 9月20日~9月30日 葉数8葉以上、乾物重70g/100株以上
中雪地帯 60~90日 9月20日~10月5日 葉数7葉以上、乾物重50g/100株以上
少雪地帯 60日未満 9月25日~10月10日 葉数5葉以上、乾物重30g/100株以上

注)越冬前葉数が10葉以上だと年内に節間伸長し雪害を被る危険が大きい。

 

表2 地域別・は種日別の越冬前葉数(日平均気温5℃以下になる日までの葉数)
地域 根雪日数 は種日
9月20日 9月25日 9月30日 10月5日 10月10日 10月15日 10月20日
村上 60日未満 9葉 8葉 7葉 6葉 5葉 4葉 4葉
中条 60日未満 10葉 9葉 8葉 7葉 6葉 5葉 4葉
長岡 60~90日 9葉 8葉 7葉 6葉 5葉 5葉 4葉

注)越冬前葉数は日平均積算気温(各地域の気象観測データ平年値(気象庁))から推定

 

【経営普及課 農業革新支援担当 岩津 雅和】

 

 

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