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【農業技術・経営情報】畜産:酪農における飼料用米給与技術のポイントについて(その1)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0402311 更新日:2021年2月1日更新

1 はじめに

 県内では、今までの購入飼料に替えて飼料用米(破砕玄米)の給与を検討する酪農家が増えています。そこで、2年以上継続して飼料用米(破砕玄米)を給与している酪農家の混合飼料(以下TMRという)のメニューを参考にして、そのポイントを紹介します。

2 搾乳牛への飼料用米給与メニューのポイント

 TMRの混合内容は表1のとおりです。粗飼料は4種類、濃厚飼料は3種類とほかに重曹などの添加剤を混合して、水分51%にしています。また、このTMRは対象牛を表2の状態として設計され、TMRの成分は表4のとおりです。

(1) 充足率

 表3の日本飼養標準乳牛(2006年版)(以下日本飼養標準とする)の充足率はDM105%、CP105%、TDN104%、Ca137%、P112%と充足しています。

(2) 粗飼料給与比率

 全飼料中の粗飼料割合は、DMで51%(表1から11.19kg÷22.11kg×100)です。目安の40%以上を上回っています。

(3) 粗飼料乾物摂取量

 体重当たり粗飼料乾物摂取量は、1.7%(表1から11.19kg÷650kg×100)です。目安の1.5%以上をクリアーしています。

(4) 粗飼料由来NDFom割合

 全飼料のNDFom中の粗飼料由来のNDFomの割合がDMで84%(5.91kg÷7.07kg×100)になり、目安の55%以上を十分上回っています。

(5) 粗脂肪含有率

 飼料中EEは、DMで2.3%(表1から0.51kg÷22.11kg×100)となり、目安と言われている原則5%以下をクリアーしています。

(6) NFC含有率

 乾物中のNFCの目安は35~40%程度です。40%を超えたら注意する必要があります。上限はおおむね45%と言われています。このTMRは、42.8%で目安の40%を2.8ポイントオーバーしています。この農場は、新潟県畜産研究センターの研究知見と、牛の反応を見ながら、徐々に増給することで、6kgまで給与できています。図1のように、飼料用米を2kg/頭ずつ2週間単位で増給するイメージです。TMRのメニュー変更を急ぐと、食滞などの発生もあるので、実際には図1のパターンは後半にいくほど増給幅を小さくする必要があります。

「図1 破砕玄米の慣らし給与のイメージ」
図1 破砕玄米の慣らし給与のイメージ

(7) 飼料用米割合

 飼料用米(破砕玄米)は、全飼料中の割合がDMで23%(表1から5.11kg÷22.11kg×100)になり、目安の30%以下をクリアーしています。

(8) CP含有率

 CPについては、全飼料中の割合がDMで表4から14.6%となっています。この農場では、合乳の乳中尿素窒素濃度(以下MUNという)を10±2%を目安に大豆粕の給与量で調整しています。

(9) 緩衝材(バッファー類)について

 この農場では、表1から1日0.1kg/頭、DM中0.45(0.1kg÷22.1kg×100)%の給与です。緩衝材には様々な製品がありますので、製品の説明にしたがって混合しています。

(10) Ca:P比

 飼料のDM中のCa:P比は1:1から7:1の範囲が目安です。この飼料では3.9:1(0.078kg:0.02kg)で、範囲内に入っています。

(11) 水分

 TMRの水分含量が51%となっています。50%以下が目安ですが、加水等して水分調整した試験では、乾物摂取量に及ぼす影響について評価が定まっていないようです。

(12) その他

 このほかに、粗飼料価指数(以下RVIという)や有効分解性蛋白(以下ECPdという)も重要な目安です。RVIは35分程度、ECPdはDM中9~10%前後が目安です。
 また、牛群の経過を観察しながら、嗜好性、飼料の質、粒度及び切断長、飼養環境、畜舎条件、ボディーコンディションスコア、生乳検査、代謝プロファイルテストなどのデータを含めて総合的に給与メニューを検討することが望ましいと思います。ぜひ、地域の飼料用米を利用した新しい給与メニューを検討し、経営に活かしましょう。

 

<実際のTMR給与メニュー>

表1 TMRの混合量(kg/頭/日)
「表1 TMRの混合量」

表2 搾乳牛(高泌乳時)
「表2 搾乳牛(高泌乳時)」

表3 充足率
日本飼養標準乳牛(2006年版)
「表3 充足率」

表4 TMRの成分
「表4 TMRの成分」
ADFom:酸性デタージェント繊維、NDFom:中性デタージェント繊維、NFC:非繊維性炭水化物、CA:粗灰分、EE:粗脂肪

参考資料
 日本飼養標準乳牛(2006年版)
 新潟県農業総合研究所畜産研究センター平成27年度試験研究発表会資料
 平成26年度研究成果情報「もやし残さは、アルファルファ乾草の代替として乳牛に飼料使用できる」

 

【経営普及課 副参事(農業革新支援担当) 坪野 樹】

 

 

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