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【農業技術・経営情報】畜産:飼料用米給与実証の事例について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0352051 更新日:2021年2月1日更新

 初めて飼料用米の給与に取り組んだ酪農家12戸の給与実証結果について紹介します(表)。

1 農場及び実証概要

  • 12農場の規模は、経産牛頭数が平均で26.6頭、最小12頭、最大44頭で、合計頭数320頭で、給与方式は分離給与方式が8農場、TMR方式が4農場です。
  • 経産牛1頭当たり乳量は、平均で 8,518kg/頭、最小 6,000kg/頭、最大 9,500kg/頭でした。
  • 飼料用米の給与量は、1日1頭当たりが、平均で2.3kg/頭・日、最小1kg/頭・日、最大6kg/頭・日でした。

2 実証結果と考察

(1)嗜好性について

 全ての実証農家が良いと回答しています。これは、実証する前に飼料用米を好まない乳牛がいること を事前に説明し、2kg/日程度の少量給与の実施や、TMRにより 選好性を改善 したためだと思われます。少しずつ慣らし給与を続けていくことやTMR給与にすることで嗜好性は改善できる可能性があることが示唆されました。

 しかし、分離給与による実証農家のアンケート結果の中に、「2割程度の牛の食い込みが悪かった」「一部の牛に飼料用米の残飼が見られた」との回答がありました。嗜好性については、一部の分離給与の農家において課題が残る結果となりました。

 一方、「育成牛にも給与したが嗜好性に問題は無かった」との回答もあり、「育成牛から飼料用米を給与する」との慣らし給与を提案する回答もありました。いずれにせよ分離給与では、増給や飼料設計どおりに給与するには、慣らし給与や飼料用米の嗜好性の改善が必要と思われます。

(2)牛の状態及びMUN等への影響について

 牛の乳量や状態の大きな変化は観察されなかったものの、MUNの低下が観察された農場が67%(12戸中8戸ありました。飼料用米の1日当たり給与量が最も少ない1kg/日・頭の給与を実施した農家でも低下が観察されました。飼料給与設計を見直し、対策として大豆粕等(粗蛋白質の含有量が多い飼料)を給与することで、いずれも改善しています。飼料用米の増量過程で乳量の減少が観察された農場がありましたが、飼料給与設計を見直しTDNやCPの充足率を満たすことで改善できることが実証されました。

 これらのことから、乳牛への飼料用米の給与においては、飼料給与設計を行い、牛の状態やMUNを観察することで、多くの酪農家でも導入可能な給与技術であると考えられ ます 。

(3)飼料費の低減について

 飼料費低減額の試算結果では、1年1頭当たりで平均30,500円、最小14,000円、最大76,000円であり、通年で利用可能な量が確保できれば、大豆粕等の増加分を入れても飼料費の低減により、経営全体のコストダウンが期待できると考えられます。

(4)実証農家の評価について

 飼料用米給与意欲のある農家での実証だったので、総じて 「飼料費低減に向け増給したい。」との意向がありました。一方で、(1)メリットを出すには飼料用米の価格低減や、給与量の増加技術、エコフィードなど安価な蛋白質飼料の確保が必要が必要、(2)飼料用米給与による作業の増加が課題、(3)通年給与には、飼料用米の確保や保管場所の確保等の流通体制の整備が必要との意見がありました。
 地域や農場の課題を踏まえ、さらにメリットのある飼料用米の活用を目指しましょう。

 

表 実証結果 (給与期間:3か月程度)

「表実証結果 」の画像

*1) MUNとは、乳中尿素体窒素(以下MUNという)。

*2) TMRとは、混合飼料給与のことで、粗飼料 牧草、ワラなどと濃厚飼料(配合飼料、トウモロコシ、大豆粕)混合して、与える給与方法。

*3) 分離とは、分離給与のことで、牧草や、配合飼料を混合せずに、単独でそれぞれを与える給与方法。

 参考資料:「平成27年度飼料用米給与実証調査結果」新潟県酪農クラスター協議会(平成28年3月)

 

【経営普及課 農業革新支援担当 坪野 樹 】

 

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