ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

【農業技術・経営情報】畜産:牛群検定を活用しましょう〜繁殖管理に検定成績の利用〜

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0401976 更新日:2021年2月1日更新

1 新潟県の牛群検定の利用状況

 牛群検定は、乳量、乳成分の他、繁殖、飼料といった飼養管理情報を得て、経営改善に役立てるためのものですが、新潟県の普及率は低く、平成25年1月の検定農家率22.5%(全国平均47.5%)、検定牛率21.2%(全国平均58.8%)となっています。
 牛群検定を実施している農家と実施していない農家の経産牛1頭あたりの乳量の差は年間2,000kgと言われており、今後経営の強化を図るために、牛群検定の新たな機能を含め再認識いただき、是非、御活用いただきたいと思います。

2 繁殖管理のためのJMR

 牛群検定で得られる情報量は膨大なものであるため、今回は、繁殖管理のために設けられているチェック項目の一部について紹介したいと思います。
 繁殖管理をする場合に、従来から使われてきた一般的な指標として、分娩間隔、初回授精日数、受胎に要した授精回数、空胎日数などがあり、牛群検定でも表示されます。これらの利用には一長一短が有り、算出方法の理解が必要です。分娩間隔や空胎日数は、すでに受胎してまった牛の成績であり現状を示していませんし、長期未受胎の牛の成績が含まれていないなどの課題があります。
 それに対して、繁殖成績をこれから改善していくために使われる管理指標としてJMRがあります。未受胎の経産牛をいかに早く受胎させるかを管理している指標だからです。
 牛群検定でもJMRが利用されています。JMRの計算は分娩後日数からVWPとよばれる授精を行わない期間(牛群検定では初産 80日、 2 産以上 60日)を引いたもので、妊娠するまで数字は増加し(JMRペナルティー)、妊娠するとゼロになります(図1)。したがってJMRが小さい牛群ほど繁殖成績が優れていることになります。

・経産牛JMR=経産牛個々のJMRペナルティーの和 ÷ 経産牛頭数
・経産牛JMRの目標値は10~20 日です。

 JMRペナルティーは経済損失という意味も持っており、農家の飼養管理や地域性などで異なりますが、1日遅れることで経産牛1頭あたり1,200円~1,500円の損失といわれています。例として、50頭の経産牛でJMRが目標値の20日、1日1,200円とすると、目標値であっても年間120万円もの経済損失をしていることになります。
(JMR20 日× 1,200 円× 50 頭= 120 万円)

図1 検定成績表の見方
「図1検定成績表の見方」

 

3 発情発見のために

 JMRの数値に問題がある場合、その原因としてチェックしなければならないのは、(1)分娩後初回授精の遅れ、(2)発情発見の不徹底、(3)受胎率の悪化です。この3項目は繁殖成績を検討するときに必ずセットで考えなければならないものです。
 牛群検定の検定成績表は、検定牛を分娩後日数順に並べているので、どの牛の受胎が遅れているのか、一目でわかるようになっています。また、図2のように検定成績表には搾乳日数45日に太い実線が引かれているので、発情に注意する牛を把握できるようなっています。

 図2 検定成績表(搾乳日数)
「図2検定成績表(搾乳日数)」

 関連する項目として、上記のVWP(自発的授精待機期間)は、本来は自由に設定するもので、一般には経産牛VWPを50~60日に設定することが多いようです。黒崎尚敏氏は著書でVWPの持つ意味を、単にそこから授精を開始するという意味だけ でなく、「その後最初の発情周期である24~25日以内に必ず授精をする、この期 間に1回目の授精が100%の牛に行われることが必要」と述べています。つまりVWPを 50日とすると分娩後 74~75日以内に1回目の授精をするということです。(牛群検定では初産80日、2産以上60日と設定されていますが、下記の繁殖台帳Webシステム内では、設定変更が可能です。)
 また、繁殖成績の結果を決定づける重要な要因は発情発見率であるとも言っています。
 牛群検定では残念ながら発情発見率は検定成績表に表示されていないため、別途、農場の発情発見率を計算することが必要となります。その際は普及指導センター等関係機関に御相談ください。

4 繁殖台帳Webシステム

 「繁殖台帳Webシステム」は牛群検定に加入している農家であれば、誰でも利用できるインターネット上でのシステムで、パソコンはもちろん、携帯電話やスマートフォンでも牛群検定による検定情報を利用することができます。
 さらには地域の合意が得られれば、獣医師、授精師、普及センター、家畜保健衛生所等といった関係者も同様に利用することができ、また、獣医師が疾病や治療歴の入力や、授精師が授精記録をパソコンや携帯電話等から本システムで入力すれば、その情報は農家や支援する協力者間で共有化することもできます。

図3 繁殖台帳Webシステム「実空胎日数グラフ」

「図3繁殖台帳Webシステム「実空胎日数グラフ」」

(1) 初回授精
棒グラフの下部が空くことで、初回授精の遅れを視覚的に捉えることができます。

(2) 発情発見
授精点がまばらに空いている時は、発情の見逃し等です。

(3) 受胎率
何度も授精点がつき授精を繰り返すのは、受胎率に問題があります。

 図3は、繁殖台帳Webシステムでの「実空胎日数グラフ」です。妊娠牛、未妊鑑牛、未授精牛とグラフは3つに分かれており、グラフの下線が分娩日を意味し空胎日数0日です。また、棒グラフの中にある黒い点は授精した日を示しています。この図は牛群及び牛個体の繁殖状況を視覚的に表したものです。(棒グラフをクリックすると個体番号が表示されます)
 農家全体の繁殖状況を視覚的に捉えることができるため、問題点の洗いだしが検定成績表に比べ比較的簡単にできると思います。
 繁殖台帳Webシステムのデモ版は家畜改良事業団のホームページから見ることが可能です。使用方法が不明の場合は普及指導センター等関係機関にお問い合わせください。

 

【経営普及課 革新支援担当 大矢 俊行】

 

一覧へ戻る

 

<外部リンク> 県公式SNS一覧へ