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【農業技術・経営情報】畜産:飼料用玄米の嗜好性と給与方法について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0353568 更新日:2021年2月1日更新

 飼料用玄米(以下「玄米」という。)の嗜好性は、一般に豚では高く、乳用牛では低いようです。そこで、新潟県農業総合研究所畜産研究センターの試験結果等を基に、豚・乳用牛の嗜好性を考慮した給与方法を紹介します。

1 玄米の加工方法

 玄米を豚や乳用牛に給与する時は、消化率を上げるために蒸気圧ぺんや破砕する等の加工が必要になります。
破砕する場合は、豚、乳用牛とも2mm以下にします。

「写真1破砕した玄米」の写真
写真1 破砕した玄米

2 給与方法

(1)豚(肥育後期)への給与

 肥育後期は、配合飼料の 30 %程度を破砕玄米に代替した給与が可能です。また、配合飼料の不断給餌(自由採食)の合間に破砕玄米を週2回4kg/日・頭、単独で給与しても破砕玄米を残さず食べ、発育・枝肉成績は、配合飼料のみを給与した豚と変わりませんでした。これは、不断給餌において、破砕玄米が配合飼料の一部を代替でき、毎日同じ養分の飼料を給与しなくても、週単位で養分が充足していれば飼育・枝肉成績には影響が少ないことを示唆しています。

 このことから、破砕玄米の給与方法としては、(1)週2回、破砕玄米を給餌カートから給与する方法、(2)飼料運搬車で配合飼料と破砕玄米30%を混ぜながら飼料をタンクへ投入する方法、(3)既存の飼料タンクに、玄米専用タンクをつなぎ、運搬量調整装置と破砕機をつけ、ライン移動中に30%程度混合する方法などがあり、実践されています。
 これらの方法は、均一に混合できないため毎日同じ養分量の給与はできませんが、週単位で同じ養分量の飼料給与は期待できます。

 豚の破砕玄米の嗜好性の高さを利用して省力的な給与方法を農場にあわせて工夫することで、 飼料用米の利用拡大を図ることができます。

(2)搾乳牛への給与 

 乳用牛にとって破砕玄米は、配合飼料に比べると嗜好性は低いようです。そのまま給与すると破砕玄米を残す牛がいるので、多く食べさせるには工夫が必要です。

ア)TMR

 草や配合飼料など全ての飼料を混ぜて、給与するTMR方式にすると、選び食いせず破砕玄米を食べます。TMR(図1)では、乾物当たり30%程度まで破砕玄米を混合することができ、現物で6~8kg程度/頭・日以内を給与できます。(体重 650kg /頭×体重当たり乾物摂取割合約3~4%×破砕玄米の給与割合30%(ほぼ等しい)6~8 kg/頭)

「図1TMR中の破砕玄米」の写真
図1 TMR中の破砕玄米

イ)玄米・配合混合破砕(分離給与)

 玄米と配合飼料(ペレットとフレーク)を同じ大きさに(2mm程度)に混ぜ、破砕玄米の割合を80%以内(配合飼料20%以上)にすればTMRでなく、分離給与でも食べることが分かりました。(図2)

「図2玄米と配合飼料の混合と嗜好性」の写真
図2 玄米と配合飼料の混合と嗜好性

 

 また、オーツヘイ10.6kg 、ヘイキューブ2.4kg、配合飼料6.3kg、玄米を67%添加した飼料6.3kg(玄米と配合飼料を2(67%):1(33%)の割合で破砕機を用いて破砕混合、玄米分として現物4.2kg・乾物重で3.5kg相当)を、体重630kg程度、乳量28kg/日程度の乳用牛で給与したところ、乳生産量に影響はありませんでした。ただし、乳中尿素窒素(MUN)濃度の低下(8.1%→6.7%)が見られました。対策として配合飼料を0.5kg減らし、代替として大豆粕0.5kgを追加し、粗蛋白質(CP)の給与量を増やすことによりMUN濃度が7.1%に上昇しました。
 これらのことから破砕玄米の分離給与の方法として、市販のマッシュ(粉粒形状)の配合飼料と破砕玄米の簡易な自家配合による給与の可能性が示唆されました。混合の均一性の程度や配合飼料の種類による差については、さらに検討が必要です。また、破砕玄米の給与量を増やす場合はCP不足を起こさないように、大豆粕等を加え、MUNを確認しながら飼料設計する必要があります。

 

<参考資料>

  • 飼料用米の生産・給与技術マニュアル2015 年版
  • 新潟県農業総合研究所平成27 年研究成果
    「肥育後期豚は飼料用米を配分飼料に混合せずに単独で給与でき、省力的に飼料費を低減できる。」
  • 新潟県農業総合研究所平成27 年研究成果
    「泌乳前期乳牛用TMR への飼料用玄米の混合可能量」
  • 新潟県農業総合研究所畜産研究センター平成 28 年度試験研究発表会資料
    「分離給与の泌乳牛への飼料用玄米の採食量増加方法の検討」

 

【経営普及課 農業革新支援担当(畜産) 坪野 樹】

 

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