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【農業技術・経営情報】環境保全型農業:土づくりを積極的に進めましょう

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0367394 更新日:2021年2月1日更新

 高品質・良食味米を安定して生産するには、窒素など稲が必要とする養分や水分を必要な時期にバランスよく供給でき、なおかつ高温・干ばつや低温などの異常気象の影響を和らげる緩衝力の高い土壌が不可欠です。 特に今日のような良食味米を重視した栽培においては、登熟期の栄養不足を防止し後期栄養を確保するために、「土づくり」(主に[1]有機物の施用、[2]土づくり資材の施用、[3]深耕)は極めて重要となります。
 また一方では、農業の持つ自然循環機能を生かし、生産性向上を図りながら環境への負荷軽減に配慮した『環境保全型農業』の推進が求められており、堆肥等の有機物資源をほ場に還元する「土づくり」を積極的に進めましょう。

1 有機物の施用

 有機物の施用については、堆肥施用や稲わらやもみ殻のすき込みなどがあり、化学性、物理性、生物性をバランス良く改善する効果があります。

(1)堆肥の施用

 堆肥は、地力向上に効果がある上、作物生産の万能薬として[1]物理性の改善、[2]生物性の改善、[3]緩衝能・保肥力増大として高い効果があります。
 施用量の目安は、一般的に稲わら堆肥では1~2t/10a、牛ふん堆肥で1t/10a、オガクズ入り牛ふん堆肥で1~2t/10a、豚ぷん堆肥で0.5~1t/10aとなっていますが、排水不良田や潜在地力が高い水田では施用量を少なくする必要があります。

(2)稲わらの秋すき込み

 稲わらの秋施用は、堆肥施用と同等の「土づくり」効果が期待できます。県内の秋すき込みの実施率は、40%程度と低いため高めていく必要があります。
 稲わらを春にすき込むと、根腐れの原因となるワキ(硫化水素)や温室効果ガスであるメタンの発生量が多くなり、初期生育の不良に繋がります(図1)。また、稲わらの春すき込みは、秋すき込みに比べて穂数や収量が減少する傾向にあります(図2)。そのため、稲わらは、秋にすき込むことが重要です。

 

図1「水田からのメタン発生量に対する稲わら処理の影響(平成5年 新潟農総研)」の画像
図1 水田からのメタン発生量に対する稲わら処理の影響(平成5年 新潟農総研)

○ 稲わらの春すき込みはワキの発生量を大きく増加させる

 

図2「稲わらすき込み時期による穂数及び精玄米重(トドロキワセ)の違い(昭和52年 新潟農総研)」の画像
図2 稲わらすき込み時期による穂数及び精玄米重(トドロキワセ)の違い(昭和52年 新潟農総研)

○ 稲わらの春すき込みは、秋すき込みに比べて穂数や収量が減少する

 

 また、秋が深まり気温((ほぼ等しい)地温)が低くなると、稲わらをすき込んでも分解しなくなります。稲わらをしっかり腐熟(分解)させるためには、収穫後できるだけ早くすき込みを行い、遅くとも10月中旬までには完了する必要があります。 すき込みの作土深は、トラクターの作業能率や稲わらを分解する土壌微生物に対する酸素供給、春先の土壌の乾燥促進などを考慮し、5~10cmの浅打ちとし、稲わらと土壌を十分に混和することが大切です。

(3)ケイ酸供給としてのもみ殻の有効活用

 籾殻は、収穫後の秋に散布し、稲わらと一緒に秋すき込みを行うのが基本です。
 可給態ケイ酸は、県内のほとんどの地域で基準値(16mg/100g)未満で、近年、低下傾向にあります(図3)

図3「県内定点調査ほ場の可給態ケイ酸含量の推移」の画像
図3 県内定点調査ほ場の可給態ケイ酸含量の推移
(新潟県農業総合研究所研究報告2016を改変、
調査点数は昭和54~平成10年:504点、平成11~25年:108点。)

 

 ケイ酸は、倒伏防止やいもち病等の病害虫対策に効果があるほか、受光態勢が良くなることで光合成が活発となり、稲の活力を高め、登熟を良好にして品質を良くします。
 登熟期が高温になると、稲は体が乾燥するのを防ぐため、気孔を閉じて蒸散を抑制します。それにより、葉温が大きく上昇することで光合成能力が低下し、登熟が不十分になります。ケイ酸を含む土づくり肥料を施用することで、ケイ酸吸収が多くなり、根の水分吸収力が向上し、葉温が上昇しにくくなり登熟が向上します。

 籾殻は、ケイ酸含有量が重量で20%程度含まれる有用資源であり、収穫後籾すりによって得られるもみ殻120kg/10a程度を水田に施用することによって土壌を膨軟化する効果があります。ケイ酸質資材を施用しないと確実に不足しますので、毎年籾殻の施用を心がけてください。
 施用のめやすは、水田から得られた量であり、得られたもみ殻量以上に施用すると、窒素飢餓や土壌の強還元により水稲の初期生育が遅れ、減収する危険があるので注意が必要です。

 また、ごま葉枯病、稲こうじ病、墨黒穂病など病害が多発生したほ場のもみ殻は伝染源となる可能性があるのでほ場に施用しないでください。同様に、雑草が極端に多発生し雑草種子の混入が多く認められる籾殻も、ほ場に施用しないようにします。

2 土づくり資材の施用

(1)遊離酸化鉄

 遊離酸化鉄が不足すると硫化水素によって根腐れが起こりやすくなり、根の活力が失われて登熟期の稲体の栄養状態が悪くなり品質や収量に影響が出ます。特に砂質浅耕土壌では写真のように鉄分が作土層から下層土に流亡して遊離酸化鉄含量が非常に少なくなっています。

「矢印の部分が作土層から流亡し下層にたまって赤く酸化した鉄の層」の写真
写真 矢印の部分が作土層から流亡し下層にたまって赤く酸化した鉄の層

 特に砂質浅耕土壌で極端に遊離酸化鉄が不足しているほ場は、堆肥と土づくり資材を併用し、年数をかけて徐々に改善していきましょう。
 新潟県農業総合研究所で開発された銀めっき板を使うと、硫化水素の発生状況を簡易に確認することができます(下写真)。穂が出た後に、ほ場に銀めっき板を挿して、約1週間後に回収します。硫化水素の発生が多いほ場は、銀めっき板が著しく変色します。遊離酸化鉄の少ないほ場では、硫化水素の発生が多くなるため、銀めっき板がひどく変色する場合(変色程度:大~甚)は、遊離酸化鉄の不足が疑われます。
 なお銀めっき板は、商品名イオウチェッカーとして販売されています。

「ほ場に銀めっき板を設置」の画像

3 深耕の実施

 深耕は主に作土層の拡大による物理的効果を狙ったものです。深耕すると水稲の根域が拡大し、土壌中の養分吸収力が増すため、生育促進の効果は比較的はっきりと現れますが、その分土壌中の養分を収奪するため、堆肥や土づくり資材の投入と併用し、地力の向上を図っていくことが大切です。

 

【経営普及課 農業革新支援担当(環境保全型農業) 仲山 和久】

 

 

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